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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第二幕
261/697

エンディミオンの日常 その4

『父親が兵隊として戦場に行ってたみたいなものだと思えば』


恵莉花(えりか)のその解釈は、


<言いえて妙>


というものだったかもしれない。


なにしろ、ダンピールであるエンディミオンにしてみれば、吸血鬼だけでなく人間も<敵>なのだ。エンディミオンにとっては、自身の身を守り憎い敵を打ち滅ぼすための<戦争>だったと言ってもいいだろう。


そして今、戦争を終えた帰還兵が、何とか平和な世界と折り合いをつけて生きようとしてる感じと言えるかもしれない。


だから、妻であるさくらも、子供達も、ズタズタに傷付いた心を持った彼を、彼が犯した<罪>は罪として理解しつつ、それは決して許すことはせず、その上で、


「もう戦わなくていいんだよ…」


と言いたかったのだ。


もっとも、下手にそれを口に出すと逆に意固地になる性分なのは分かっているので、言わないようにしている。


世の中には、


『命を奪った者は命でもって購うべきだ』


と言う者は多いが、しかしそれを言うなら、戦場で敵兵を殺した者は、全員、死ななければならないはずだ。


『命令されたから仕方ない』


と言うなら、命令によって仕方なく殺人を犯した者は許されないとおかしくないか?


『敵を殺さなければ自分が殺されていたから仕方ない』


と言うなら、『命の危険を感じたから殺した』という事例は許されないとおかしくないか?


『戦争なのだから罪は問われない』


というのは、所詮、<詭弁>の類でしかないはず。その詭弁が通るのなら、他の詭弁も通らないとおかしい。


エンディミオンが今の生活を送れているのも、所詮は詭弁によって成立した危ういものでしかないのも事実。


吸血鬼らが結成した<組織>は、あくまで<互助組織>のようなものであって、治安や司法という面の機能は基本的に持たない。ダンピールの襲撃から身を守るのは、原則、個々の吸血鬼らの<自己責任>とされている。


ただし、ダンピールに関する情報などについては問い合わせれば提供してもらえるし、助力を望めば力になってくれる者を紹介もしてもらえる。あくまで組織立って防衛行動などは取らないというだけで。


これは、それだけ吸血鬼という存在がそもそも強力であるから成立する形だった。


あと、吸血鬼はあまり多数で群れることは好まないというのもある。


多数の<眷属>を従えることはかつてあったものの、それも結局は<奴隷>や<道具>として使役しているだけで、決して<家族>や<仲間>ではなかった。


なので、


<復讐のための行動をとらないダンピール>


は、監視はされるものの表立って対処もされない。


ちなみに<エンディミオンの監視役>は、ミハエルである。


そのバックアップとしてセルゲイもいる。


こんな頼りになる監視役もなかなかいないのだった。



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