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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第二幕
237/697

ミハエルの日常 その8

ミハエルとアオにさえ、気持ちがすれ違うことはあった。


アオが妊娠中、精神的に不安定になり、ついミハエルに当ってしまったこともある。


逆にミハエルが、常に自分の方が上位の存在であり、アオを一方的に、


『守ってあげている』


的な態度が見え隠れしてアオを落ち込ませてしまったりしたこともあった。


この二人も、そういうことを乗り越えて、今がある。


決して、何一つ苦労することなく順風満帆でここまできたわけじゃない。


ただ、問題が生じた時にはお互いに誠実に対処することを心掛け、それが大きく拗れることがないようにしてきただけである。


元より、ミハエルとアオの場合は、


<種族の壁>


という途轍もなく高く大きい問題が二人の間に常に横たわっている。


すでに三桁に届こうかという実年齢ではあっても外見上は小学校高学年くらいにしか見えないミハエルを<夫>であると公言はできないこともあり、アオは法律上は、


<未婚の母>


である。


それがゆえに心無い言葉を投げかけられてきたりもした。


けれどそんなことはミハエルと一緒になると決めた時点で分かり切っていたことなので、それを悔やんだことはない。


ただし、だからと言ってそんな風に心無い言葉を掛けることが正当化されるとも思っていないので、自分の子供達には、他人の選択に難癖を付けるような真似はさせないけれど。


また、悠里(ユーリ)安和(アンナ)についても、ダンピールであるがゆえに吸血鬼と同じく成長が非常にゆっくりで、まったく成長しないようにも見える子供がいて、だから学校にも通わせられないことから、一年の半分はミハエルと共に海外を渡り歩き、教育も、ミハエルやセルゲイが子供達に施す形になっている。


ちなみに、出産については、セルゲイとミハエルが対処した。特にセルゲイは、日本では有効なものではないものの医師免許も持っていて、医師として出産を扱ったことも一度や二度ではなかった。


実は、吸血鬼には医師の経験を持つ者も多い。基本的には人間の医療を必要としない吸血鬼ではあるが、


『人間という生物をより深く理解するため』


という、単純に学術的な興味から医学を学ぶ者も少なくないのだ。


これも、長命であり有り余る時間を持つ吸血鬼ならではというものかもしれない。


かように、吸血鬼と人間がパートナーとして暮らすというのは、決して、<普通>ではいられないということである。


その『普通じゃない』ことを共に乗り越えるのは、並の覚悟と努力じゃ足りないだろう。


幸せは、誰かが一方的に与えてくれるものじゃない。外的要因だけで幸せになれるかどうかが決まるなら、誰一人幸せにはなれない。


何一つ不都合なことが存在しない世界など、どこにもないから。



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