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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第二幕
218/697

洸の日常 その2

と、いささか過熱気味だった(あきら)の人気だったものの、当の洸自身はそれをあまり実感していないらしく、


『そういうもの』


として受け流していたようだった。


学力は、正直<進学校>とは言い難い高校のそれとは言え編入試験に一発合格。


『底辺高なら小学生レベルの学力でも入れるだろ』


などと言うかもしれないが、実際にはそれまで小学校にさえ通っていなかった彼にそれだけの学力があれば十分だろう。


それでいて実年齢も小学生相当。さらには精神年齢に至ってはほぼ幼児並みでは、さすがに自分にとってどうでもいい細かいところまでは気にしなくて当然かもしれない。


しかも、『精神年齢は幼児並み』でありながら、別に我儘放題というわけでもない。むしろ並の高校生よりもずっと聞きわけがよくて優しい子だった。


標準状態で他人を気遣う器を持っている。


それは結局、さくらとアオとミハエルを見倣ったからだろう。自分がしてもらっていることを真似しているだけに過ぎない。


なにしろ彼は本来、ウェアウルフ。ウェアウルフの中では生来おとなしい部類に入るのだとしても、あくまで、


『一般的なウェアウルフに比べては』


という話でしかない。<狼の気性>と<人間の知性>が融合しているだけなので、実は高い攻撃性も秘めているはずだった。


とは言え、<攻撃性>というものも、普通はその必要がなければ発揮はされない。動物園で猛獣がのんびりしてたりするのもつまりはこれ。


『攻撃性を発揮する必要がない』


から。


しかし逆を言うとそれは、


『必要があれば攻撃性が発揮されてしまう』


ことでもある。


だから、さくらもアオもミハエルも、そして今ではエンディミオンも、それに心を砕いている。


この辺りは、エンディミオンという非常に大きな前例に対処した経験が役に立っている。さらにアオの場合、それ以前にも、両親と兄という、他人に対して非常に攻撃的な気性を持つ厄介な存在を身近で見てきたという経験もある。


攻撃的な相手に攻撃的に接すると何が起こるのかを目の当たりにしてきたことが活かされている。


そんな者達に囲まれて育った洸は、攻撃的でいる必要がなかった。攻撃性を抑えると言うよりは、


『攻撃的である必要がない環境をさくらやアオやミハエルが作った』


と言った方が正確だと思われる。


身近な者が攻撃的なら、それから身を守るためにも攻撃的になる必要が出てきてしまう。エンディミオンの例がまさにそれ。彼は、自分に向けられる攻撃性から自らを守ろうとして攻撃性を磨くことになったのだから。



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