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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第一幕
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誕生

こうして、アオとミハエルの第一子<悠里(ユーリ)>は誕生した。


できた子がダンピールであった場合は自宅で出産することになるのは分かっていたから、元々、多少叫んでも近所に響かないように、と言うか、きっと子供が生まれればすごく騒がしくなるであろうことも見越して、リフォームの際に防音性能も高めてもらっていた。だから近所には気付かれずに出産ができた。


腹が大きくなってきた頃にはもう、さくら以外の人間とは顔を合せないようにしていたし。


それもあって、一部には<死亡説>まで流れたとも言う。


妊娠中に書いた作品があまりにもそれまでと違い過ぎていて、


『ゴーストライターが書いた!?』


的な噂まで立ったことがさらに後押ししたようだ。


が、アオはあくまでニッチな層に受け入れられているだけの作家。ゴーストライターを立ててまでネームバリューに拘る意味がないので、最終的には、


『鬱病などを患って普通の状態じゃなかった』


という形で落ち着いたようだ。


アオ自身が、


『しばらく体調を崩してました。でも今は大丈夫です』


悠里が一歳になる頃にコメントを出したことで、


『病気だったのか』


と認識されたし。


ただ、その<病気>というのが、<鬱病などの精神的なそれ>だと思われただけで。


「まったく、ホントに好き勝手言ってくれるなあ……」


事実を明らかにできないから仕方ないとはいえ、苦笑いしか出てこない。




なお、出産したからと言って楽になるわけじゃない。むしろ、それからが本番である。


人間よりは生物として頑健だからその点では心配も少なかったものの、最初のうちはそれこそ一時間ごとに<おっぱい>をあげてる状態で、出産のダメージとも併せて本当に精神を病むかと思った。


育児書に書かれているようなことは本当に参考程度にしかならず、実際に自分の目の前で起こっていることをきちんと把握して随時適切な対応を考えるしかなかった。


ましてや我が子は<ダンピール>。そういう部分でも人間の常識は通じない。


生まれて一週間で寝返りを打ち、二週間でズリ這いを始めて部屋中を猛然と行き交い、三週間でプラスティックの哺乳瓶を握り潰し、一ヶ月で立ち上がってみせた。


なのに、授乳のタイミングは同じ月齢の人間の赤ん坊と大差なく、泣き出すと力の加減ができなくなってアオが怪我する可能性があったので、常時ミハエルがつきっきりだった。


また、アオには出産のダメージから極力早く回復してもらうためにおっぱいだけを任せ、それ以外は、おむつ替えもミルクやりも入浴もすべてミハエルが行う。


「ごめんね~……」


彼に頼り切りなことでアオがそう謝ると、


「二人の子供なんだから二人で育てるのが当たり前だよ」


ミハエルは笑顔でただそう言うのだった。



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