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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第二幕
182/697

大きなデメリットを打ち消すような

世の中ではどうしても、


『妻が夫の親の介護をする』


という形が多かったので女性目線の話になりがちだろうけれど、中には、


『夫が妻の親の介護をした』


事例もあるだろう。なので、別に(あきら)悠里(ユーリ)秋生(あきお)も無関係とは限らない。


なにしろ、(あきら)自身、


『アオの介護ならしてもいい』


という意味のことを言っているのだから。


悠里も秋生もそれは分かっている。分かっているから、恵莉花(えりか)安和(アンナ)椿(つばき)の態度には苦笑いを浮かべるだけで済んでいる。


その上で、秋生が、


「そう考えると、やっぱり結婚にはデメリットが多いなっていう印象にはなるね」


と、正直な意見を述べる。悠里も、


「確かに。<結婚>と<結婚相手の親の介護>がセットになってると考えると、夢も希望もないよ」


さらに苦笑いを浮かべた。


これには、ミハエルも含めたその場にいた全員が、


「うんうん…」


と頷いてしまった。


ミハエルとしては、アオの両親の介護をするとなったとしても、たとえそれが十年、二十年、三十年という長期に亘ったとしても、長命な吸血鬼にとっては人間ほどのそれじゃないし、何より身体的な面では介助の類も苦にはならない。


とは言え、喜んでやりたいことかと言われれば、愛するアオを苦しめた人間達ということで思うところはないわけじゃない。


そう考えると、子供達の言いたいことも理解できてしまう。


加えて、人間と吸血鬼とでは、前提がまるで違ってしまうのは紛れもない事実だし。


だからミハエルも、


『結婚するべきだ』


とは言えないし言わない。


でも同時に、


「その人をこの世に送り出してくれたことを、その人の両輪にも感謝できるような相手に巡り会えれば、それも大きなデメリットじゃなくなるよね」


とも述べる。


ミハエルのこの言葉についても、


「ま~、出逢えれば、だけどね~……」


とは言いつつも、恵莉花も強く反発はしなかった。


さりとて、そんな相手に巡り会えるかと言われれば、大きな疑問符しか残らない。


たとえば、<冠井迅(かむらいじん)>のような男子も、<山下羽楼(やましたはろう)>や<藤木一紅(ふじきぴんく)>のような女子も、まったく珍しくもないありふれた存在だろう。彼ら彼女らのような子供がそのまま大人になったとして、


<大きなデメリットを打ち消すような魅力的な結婚相手>


になれるだろうか?


『女は男に従ってればいいんだ』


とか、


『自分の推しこそが絶対正義。それ以外はゴミ』


とか考えているようなのを、結婚相手として選びたいだろうか?


恵莉花や安和が想定しているのは、そういうことだった。


とは言え、悠里や秋生は、確かに人間性そのものは申し分ない。思いやりにも溢れ、知性も高く、大きな器を持ってるのは疑う余地もない。


『でも、好きになれるかどうかって話だと、それはまた別なんだよな~!』


というのが正直なところだった。


たとえばこれが昔のように、


『親同士で勝手に結婚相手を決めてしまう』


場合だと、まあ、


『良い相手に恵まれた』


で済んでしまう話かもしれないけれど。



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