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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第一幕
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自身の選択が招いた現実

『妊娠は病気じゃない』


そんなことを言う者がいる。


だが、そんなことを言う者自身、


『病気とまでは言えないが酷く気分が優れなく体調が悪い』


時まで、まったく普段と変わらずにいられるか?


何らかの理由で疲労困憊している時まで、完璧に普段と同じでいられるか?


それで普段と同じでいられるようなら、それは別に『体調が悪い』わけでも、『疲労困憊してる』わけでもないはずだが?


ミハエルはそれをわきまえているから、


『病気じゃないんだから甘えるな!』


とは言わない。


そもそも、


『普段の状態とは違う。という現実を受け止められない』


こと自体が、<甘え>なのだから。


その上で、自分の子を育んでくれている彼女に対して、最大限の感謝をしている。しかし同時に、


『自分はこんなに感謝してやってるんだ! すごいだろう!?』


という態度も取らない。


それは<感謝>ではなく単なる<承認欲求>でしかないから。


そうして、ただただ彼女を労わった。その<労わり>自体が彼女の癇に障ってまた八つ当たりされても。


この時のミハエルを、


<聖人>


と称するものもいるかもしれない。けれどそれは違う。彼はただ、妊娠中はそうなることがあるのを知っていて、そうなることがあるのが分かっていて、その上で敢えて自分の子を宿してもらったのだから、


<自身の選択が招いた現実>


を受け止めていただけである。


そこで言い訳を並べて、


『現実を受け止められない自分を正当化する』


のではなく。


ゆえに彼は、自分がやるべきと思ったことをやっていたに過ぎない。


妊娠中で腸の働きが低下して、それでガスが溜まってしまい、ある時、


「ぶぅおおおおおおーっ!!」


という、普段は決して出ないような大変な<おなら>をしてしまって、


「ぎゃーっっ!!」


羞恥のあまりアオが絶叫してしまっても、


「妊娠中にはたまにあることだよ。大丈夫」


とただ微笑んでいた。


アオは、


『こんなのヒドすぎる…! 女として終わってる! ミハエルに嫌われる……!』


などと思っていたが、それはむしろミハエルを侮っていたと言えるだろう。


彼はその程度のことは承知の上だったのだから。


実際に以前にも同様の事例を目撃していたし、彼自身の母親からも、


「妊娠中は本当にいろいろなことがあるものよ」


と教わってもきた。


ゆえに幻想を抱いてそのとおりじゃなかったからといって勝手に幻滅することもなかった。


二人の子供なのだから、二人で乗り越えていこうと思っていた。


どこまでも、それだけの話。



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