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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第一幕
149/697

だからみんなで

『人を傷付けることが当たり前の環境を変えていれば、そこで育つ人達の考え方も変わっていくよ』


そうは言いつつも、それが難しいことはアオも分かっていた。簡単にできることであれば、<文明>と呼ばれるものができてからでさえ何千年も人間同士で争い続けるはずがない。


ただ、だからといって、


『人間なんて結局は争うことしかできない愚かで醜い出来損ないだ!』


などと、高いところから見下ろして分かったようなことを言うつもりもなかった。


なにしろ、現に日本は、世界的に見れば<異常>とも言われるほどの治安を実現している。


その日本でも、戦国時代を例に挙げるまでもなくかつては何かといえば戦争に明け暮れていた時期もある。


にも拘らずどうして拳銃で武装して自分の身を守らなければいけないような社会ではなくなったのか、いずれ人間自身がそれを解明して役立てていく可能性もあるとアオは思っていた。


無論それは、五年十年の間にできることじゃないだろう。百年、二百年、千年かかるかもしれない。けれど、『いつかは』とは思える。


『幸せになりたい』


という気持ちを人間が失わない限りは。


『他者も幸せでなければ、自分の幸せも壊される』


それが理解されていけばと思う。


『他者から奪わなければ自分が生き延びられない』


という環境であれば、なるほど他人の幸せなど考慮する余裕もなかったかもしれない。


エンディミオンをこの世に生み出した吸血鬼が彼に強いたような環境であれば。


けれど、その彼でさえ、日本に来てさくらに出逢って、大きく変わった。


今、自分がいるのは、他者から奪わなくても生きていける環境である。ということを、彼は知り、その上で、他者を傷付ければ自分が掴んだ幸せが壊されるということも知った。


他者を傷付けようとすることの不合理さに気付くことができた。


だから、今ではもう彼は自分から他者を傷付けようとはしない。


自分の大切なものを傷付けようとする輩に対しては牙を剥くことはあっても、危険でもない相手に些細なことで自分からは攻撃しない。


それがゆえに彼は今の幸せを掴むことができた。その実例を知っているだけに、安和(アンナ)としてもアオの言葉は説得力があった。


そして、そのエンディミオンを支えているのは、他ならぬ<人間>であるさくらと、さくらの子供達なのだ。長男の(あきら)はウェアウルフではあるものの、恵莉花(えりか)秋生(あきお)は紛れもなく人間である。


『人間だからダメ』なのではなく、『物分りの悪い人間もいる』というだけでしかない。


安和(アンナ)にもそう思える。


それでも、じれったさはある。


「人生って大変だね」


思わずそうこぼした安和に、


「大変なんだよ。だからみんなで助け合うんだよ♡」


アオは微笑(わら)ったのだった。



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