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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第一幕
145/697

自分が嫌ってるタイプを

アオは続ける。


「世の中で他人に自分の考えとか価値観をやたら押し付けてくる人っているじゃん? あれも結局、その人の親が子供に対してそういうことをしてたからその真似をしてるだけだと思うんだよ。


で、自分の考えや好みや価値観を押し付けてくる人がいると、『ムカつく!』とか言う人がいる。


けどさ、そうやって考えや好みや価値観を押し付けてくる人のことを『ムカつく!』とか言ってる人がさ、自分の子供に考えや好みや価値観を押し付けてさ、それで子供が他人にそういうのを押し付けるタイプの人間になっちゃったら、自分がムカつくタイプの人間を自分で育てちゃってるってことになるよね?


自分が嫌ってるタイプを自分で作っちゃうんだよ? おかしくない? 自分の子供をそういうタイプに育てておいて同じような人のことを『ムカつく!』なんてわけ分かんないでしょ。


他人の嫌なところは気にするのに、自分が同じことしてても気付かないってのも人間の特徴だよね。


で、人間は寿命が短いから自分のそういう部分に気付けないうちに死んじゃったりするけど、吸血鬼は時間がたっぷりあるから、そういう部分に目を向ける余裕もあるんだと思う。


でも、できれば人間も自分の嫌な部分と向き合う勇気を持ちたいよ。


私はダメな人間だけど、だからこそ他人のダメな部分についてとやかく言わないことを心掛けてるんだよ。とやかく言いたい時には敢えて本人に言わずに、ほんの身内の中だけで吐き出して昇華するようにしてる。


加えて、


『自分はそうならないように気を付けなくちゃ』


って自分に言い聞かせるんだ。ほら、


『他人のふり見て我がふり直せ』


って言うじゃん? つまりそういうことだよ。


私は、自分の考えや好みや価値観を押し付けてくる人間は好きじゃない。だったら自分はそういう人間にならないように気を付けなくちゃ。


自分がそういうことしてるのに他人にはするな、なんて、身勝手の極みだよ。


だから私は、自分の考えや好みや価値観を安和(アンナ)悠里(ユーリ)には押し付けたくない。こんな風に話してるのも、あくまで、


『こんな風にしてたらこんなことになるよ。じゃあ、安和や悠里はどうする?』


って言いたいだけなんだ。


そうなりたくないのなら、ならないようにするにはどうしたらいいのかってことを自分で考えてほしいだけなんだ。そのための情報を提示してるだけ。


その上で、安和や悠里がどんな人に育つかは、私に全責任がある。


だって、安和や悠里をこの世に送り出したのは、他の誰でもない私。私が送り出してなきゃその結果も生まれないんだからさ。


私は、その事実から目を背けるような大人ではいたくない」



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