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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第一幕
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生物学者

セルゲイの現在の本業は、<生物学者>である。


主に昆虫を中心として生物の生態を観察し、その研究結果を発表するのだ。


その際には人間の身分(もちろん偽造)を利用するものの、悪用することはない。


わざわざそんな小手先の浅ましい真似をしなくても、吸血鬼は人間より遥かに強く、また長寿であり肉体を若く保てる期間も長いので、知識量も並の人間では足元にも及ばない。その気になれば百科事典の内容を一言一句余すことなく暗記することさえ可能だったりもする。


だから医学の知識を習得することも造作もなく、それぞれの地域で医師免許を取る者も少なくない。


実はミハエルも、見た目の年齢が人間の成人のそれに近くなればいずれ医師免許を取ることも考えていた。さすがに今の、精々十歳から十一歳程度の子供にしか見えない姿で大学に通ったりするのは無理がある。


正直、今でも人間の妊娠出産をサポートする程度であればできなくもないし、実際に何度か立ち会ったりしたこともあるものの、それでもきちんと医師としての課程を履修し現場で経験も積んできている者の補助があればそれだけ安心だし、さすがに<出生前診断>などについてはミハエル一人ではままならないのも現実。


だからこそセルゲイに来てもらったのだ。


ちなみに生物学者と言っても、採取した昆虫などを解剖してその構造を調べるタイプの研究ではなく、あくまで自分から生息場所に赴いて生きている状態のそれを、原則、干渉することなくありのままの生態を観察するのがセルゲイのやり方だった。構造などを確認したい場合は、すでに死んでいるものを拾ってきて解剖するという形になる。


セルゲイ自身が吸血鬼であるゆえに肉体的にも強靭で、長時間の観察にも耐えられるがゆえのやり方だった。


何より、無益な殺生は好まない。


とは言え、必要とあらばたとえ人間が相手でも容赦はしないのが<吸血鬼のメンタリティ>ではある。


人間で言うところの<サイコパス気質>を生来備えているのだ。


と言うよりは、単純に自分達と人間を別種の存在だと確実に認識しているだけかもしれないが。


しかし同時に、人間との共存に合理的なメリットを見い出せれば冷淡なくらいにそれを追求することができるという面もある。


吸血鬼の全てが人間を愛しているわけでもないのに共存の方針を貫けるのは、実はそういう部分も影響しているのだろう。


ともあれ、こうして出産に向けての準備は整った。胎児がダンピールということはいろいろと普通ではない事態が生じる可能性もあるとしても、それらもすでに覚悟の上。


不安がないと言えば嘘になるが、第一子の誕生が待ち遠しいのも事実なのだった。



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