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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第一幕
134/697

役割分担

こうしてゲリラ達は、戦闘開始から僅か数分で制圧された。と言っても、あくまで殺さないように手加減した上で確実に拘束する手間を掛けたことで時間が掛かってしまっただけに過ぎず、一切の手加減なく<殲滅>するだけなら実は数秒で済むことだった。


けれど、セルゲイもミハエルもそんなことは望んでない。


その一方で、ゲリラ達のしようとしていたことはしようとしていたことで裁かれなければならない。それによりもし死刑判決などが出たとしてもそれはあくまで人間同士の問題なので、セルゲイもミハエルも口出しするつもりはなかった。


『どうせ死刑になる奴を助ける必要なんてなかっただろ!?』


という意見もあるかもしれないが、死刑になるかどうかの判断はセルゲイやミハエルがすることじゃない。今回の行動も、あくまで、


『ボリスらに対する急迫不正の侵害行為に対する正当防衛』


として行ったものであり、ほんの数秒で殲滅できるほどの力の差がありながら殺したのではそれはただの<虐殺>になってしまう。


ただしこれは、セルゲイとミハエルが<吸血鬼>であり人間とは次元の違う戦闘力を持つからの話であって、ミハエルがやったように丁寧に拘束し継戦能力を確実に奪い危険を排除するということが人間ではおよそ不可能である以上、ボリス達があくまで戦闘の中でゲリラを殺害したとしても、セルゲイもミハエルもそれを責めるつもりも毛頭なかった。


そこを混同してはいけないことを、二人はちゃんとわきまえている。


そしてボリスも。


「てめえ! 殺してやる!!」


ゲリラ達が全員拘束されたことで戦闘が終わり、まったく身動きが取れなくなっているゲリラに向かって部下が銃を向けると、ボリスは、


「やめろ! こいつらはもう抵抗できない! 抵抗できない相手を一方的に殺すような卑怯者は俺の会社には要らん! 殺人で警察に突き出してやる!」


と一喝した。


「でも、社長! こいつら生かしといたらまた来ますよ!」


不満げにそう言う部下に、


「こいつらを殺しても別の奴が来るだけだ。意味ねえよ。


それにこいつらは、たぶん、生きて刑務所を出ることはできねえ。そしてそれは俺達の仕事じゃねえ。


俺達の仕事は石油を掘ることだ。それを忘れんな!」


とも。さらにその上で、


「こいつらを裁く仕事の奴らは、正直、『現場で殺しといてくれりゃ俺達も楽できんのによ』とか思ってるかもしれねえが、本業は砂まみれ油まみれになって石油掘ることが仕事の俺達が、クーラーの効いた部屋でデスクワークしてるだけのそいつらを楽させるために殺しまでする義理はねえよ」


とも告げた。


すると部下も、拍子抜けした表情になり、言う。


「違いねえ。あいつら、自分じゃ手も汚さないクセに偉そうだもんな。せめて仕事くらいはきっちりしてもらわねえと」


その部下はどうやら具体的に検事なり裁判官なりの顔が頭をよぎったらしく、納得して銃を下げてくれたのだった。



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