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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第一幕
131/697

ゲリラ

『セルゲイが好きでいてくれる人間を好きでいようと思ったんだ』


ボリスはそう言ってくれるのに、どうして他人を傷付けずにいられない人間がいるのだろうか。


「くそっ! またゲリラの連中か……!」


ヘリによるギアナ高地の観光を終えて宿舎に戻ったミハエルとセルゲイが、


「強い敵意と害意を感じる…」


と口にした。瞬間、ボリスが状況を察する。


ミハエルとセルゲイが指差した方向を見ると、土煙が上がっているのが分かった。何台もの自動車が荒地を走ってくることで生じているものだった。


政府とも関わりの深いボリスの会社が管理する石油採掘施設は、石油産業を衰退させることで政府の力を奪うのを目的に攻撃を仕掛ける対象となる。


しかも、反米的な立場の政権が実権を握るとそれに反対するゲリラが、親米的な立場の政権が実権を握るとやはりそれに反対するゲリラが攻撃してくるという有様だ。


さらにはそこに、物質文明そのものに反対する者達も協力してくることで非常に複雑な利害関係が生じていて、解決の糸口すらまったく掴めない状態だった。話し合いをしようにも交渉の席にすら着こうとしない。


彼らの思う<話し合い>とは、相手が一方的に自分達の言い分を聞き入れることであり、それ以外は話し合いとは言わないと考えている。そんなムシのいい話なんて、この世には存在しないというのに。


そして実際にゲリラとして戦闘に参加している者の多くは、戦闘の恐怖を紛らわすことを目的に始めた薬物がやめられなくなってしまった常習者でもあり、やはり手段そのものが目的に摩り替わってしまった、そもそも話し合いの前にとにかく痛めつけてから自分達の有利にことを進めようという発想しか持っていない者達でもあった。


こうなればもう、


<身を守ること=戦うこと>


であるため、ボリスもしっかりとそれに備えている。こういう部分でも<元軍人>という経験は活かされていた。


悠里(ユーリ)安和(アンナ)も、自分の命を守ることだけ考えていたらいい。相手はこちらを殺そうとすることにためらいを持ってない。そんな相手と戦う必要はない。とにかくここに隠れてて」


ミハエルとセルゲイがものの数十秒で掘った<塹壕>に二人を下ろし、そう言った。


「父さん……」


不安そうに自分を見る悠里に、ミハエルは、


「これも経験の一つだけど、今は二人の力までは借りなくても対処できる。いずれ二人も戦わないといけない時はくるかも知れないけど、少なくともそれは今じゃない。


僕達はボリスを守るために戦うだけだ。それを見届けて欲しい。二人が見てると思えば僕達は冷静でいられるから」


そう言って二人の頭を撫でたのだった。



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