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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第一幕
128/697

怪物らしい怪物

『私は、自分が撃たれる覚悟を持っている』


セルゲイはそう言ったものの、実はそれはある種の<ハッタリ>である。


何しろ彼は吸血鬼。拳銃で撃たれたくらいでは死ぬことはない。痛みも制御できる。となれば、人間が銃で撃たれるのとはまるで意味が違うからだ。


だから、基本的にこれは、この強盗に対して、自身の考えを改めさせるきっかけになればという意図もある。


おそらく無駄になる可能性の方がはるかに高いことも分かってはいるけれど。


そうこうしている間に、どこかのんびりとした雰囲気も放ちながら駆けつけた警察に強盗犯を引き渡す。この際、ボリスが警官達と顔見知りだったことで、すぐに話がつき、さほど煩わされることなく開放された。


なお、銃で自分の肩を撃ったセルゲイについては、それを申告はしなかった。どうせ吸血鬼だから平気だし、騒ぎになったことで落ち着いて食事もできそうにないことから別のレストランに移動して食事にしようということになり改めて自動車に乗り込んだ時に、


「まったく無茶しやがる。まあどうせお前のことなんだから大丈夫なんだろうけどな」


とボリスも呆れたように言う。


それに対してセルゲイも、


「まあね」


と、撃った方の肩をぐいぐいと回しながら応えた。シャツは破れて血は付いているものの、量は少ないしすでに乾いている。


そんな二人を、悠里(ユーリ)安和(アンナ)は呆気に取られたように見ていた。


特にセルゲイについては、これまで見たことのない冷酷な表情を見ることになったからというのもあるだろう。


吸血鬼としての彼の一面を垣間見る思いだった。


「ごめん。怖かったね」


そんな二人の気配を察してか、セルゲイが後ろを振り向いて、いつもの穏やかな笑顔を向ける。


「あ…うん、大丈夫」


安和はそう応えたものの、それが強がりを含んだものであることは誰の目にも明らかだった。


けれど、これもまた、現実。そういうものも受け止められるようになっていかないと、この先、こういうことは何度もある。


だからミハエルも、


「不安だったら無理せずにそれを打ち明けてくれたらいいよ。そういうのは押し殺すんじゃなく、認めた上でどうやったら受け止められるようになるのかを考えるんだ。そのための助言は僕達もする。それは人生の先輩としての役目だ」


と、悠里と安和に告げた。


そんな様子に、ボリスは、


「まったく。いいお父さんじゃねえか。その辺の人間なんかよりよっぽど人間らしい。俺の父親なんざ飲んだくれては女房子供を殴る蹴るだったからな。


子供の俺から見たら吸血鬼よりも怪物らしい怪物だったぜ」


およそ今の姿からは想像もつかないような話をし、次のレストランに向けて車を走らせたのだった。



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