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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第一幕
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日常の風景

ところで、ボリスが運転する<四代目ダッジ・ダートの2ドアクーペ>についてだが、日本人の感覚するといかにもな<デカいアメ車>なものの、実は作られていた当時はこれでも<コンパクトカー>というカテゴリだったそうだ。


とは言え、長身痩躯なセルゲイどころか筋骨隆々とした大柄なボリスでさえ余裕を感じさせる車内空間は確保されている。


加えて、日本で<2ドアクーペ>と言うと、後席はそれこそ幼児が座るのがやっとの、大人を座らせれば苦情必至の、精々<かばん置場>程度のものが想像されるかもしれないが、こちらもさすがのアメリカンサイズ。日本車の4ドアセダンの後席よりも余裕がありそうな広さだった。だからミハエルと悠里(ユーリ)安和(アンナ)の三人が乗っている程度では、まったく窮屈そうに見えない。


なお、<チャイルドシート>などという気の利いた物は用意されていない上にシートベルトすらそもそもなかったりするので、


「なんか不安だな」


「ホントにね」


と、悠里と安和がこぼしたりもしていた。それぞれの地域の法令に合わせてシートベルトをしたりチャイルドシートを使ったりが当たり前だったため、それがないと心許ないからだ。


さりとて、ダンピールは自動車事故くらいではよほど油断していない限りはまず怪我をすることさえ滅多にないけれど。


それでも、二時間もそうしていると慣れてはくる。しかもここまでにも二回、休憩しているから、気分的にも余裕はある。


けれど、三回目の休憩のために立ち寄ったレストランでそれは起こった。


レストランの駐車場に入ろうとした時、男が二人、大声を上げながら駆け寄ってきたのだ。


その手には、拳銃が握られている。強盗だ。


「車を降りろ!」


もはやどこの言語のものなのかも定かではないイントネーションの、訛りの酷いスペイン語でどうやらそう言っているらしいのがようやく聞き取れた。


「チッ…!」


ボリスが舌打ちする。緊張はしているものの、それほど怯えてはいなかった。と言うのも、ここでは割と<日常の光景>だったからだ。これまでにも四度、こうして自動車を奪われてきている。


それこそ熊とでも素手で戦えそうな体躯をしているボリスではあるものの、あくまで彼は人間。銃が相手では勝ち目はない。だからこういう時は無理に逆らわないようにしていた。金も物もいくらでも後でまた手に入れられるが、命はそうじゃないということを彼は心得ていたのである。


しかし、今回は事情が違った。


気配に気付いて目を覚ましたセルゲイがいる助手席に近付いてきた男の拳銃にすっとセルゲイが手を伸ばし、一瞬で奪い取り、運転席側に近付いてきたもう一人の男に銃を向けて、


「動くな!!」


と命じる。


「!?」


すると銃を向けられた男が怯んだのを見たボリスがやはり手を伸ばして男の拳銃を掴み、それごと力一杯地面に向けて捻ったのだった。



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