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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第一幕
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父は語る

誘拐犯とはいえ人間を傷付けてしまった悠里(ユーリ)に対して、ミハエルは語る。


「現在の人間達は、自分達の行いについて第三者の判断を仰ぐことを旨としている。これについて、人によっては、


『意思決定に時間がかかるようになった!』


『制限ばかりで思い切った行動ができなくなった!』


と批判することもある。だけど、物事というのは一面だけで判断してはいけないんだ。


確かに果断なく苛烈な対応はしにくくなったかもしれない。けれどそれは同時に、過剰な対応を抑制する働きもあるんだ。今の人間がすぐに戦争に踏み切らない場合が多いのは、少なくとも大国同士の全面戦争に踏み切らなくなったのは、その影響もあるはずなんだよ。


どれほど正義を掲げて武力での紛争解決を唱えようとも、それに対して慎重に考える人はいる。それが抑止力になってるんだと僕は思う。


勇ましいことを口にする人はそれを疎ましく思うかもしれないけど、実際に戦争になって巻き込まれる人からすれば、戦争なんてそれこそ理不尽極まりない話だよ。避けられるのなら避けるに越したことはない。


しかもそれは、人間同士の戦争だけの話じゃない。先進国の多くは僕達吸血鬼やダンピールやウェアウルフの存在に気付いてる。でも、だからって力尽くでも僕達と対抗しようとはしない。それも結局、力で僕達を排除しようと画策する人達とは別の判断をする人達がいるからだよ。そのおかげで、人間は守られてる。


もし人間が僕達を滅ぼそうとするのなら、僕達も黙ってやられるわけにはいかなくなる。たとえ人間を滅ぼすことになってもね。


そして僕達には簡単にそれができる。制限なく眷属を増やすことで。


僕達がその気になれば一週間と掛からずに人間はこの地球上からいなくなるだろう。眷属が眷属を増やしていけばいいから。人間に体勢を立て直す暇も与えない。国家を差配する人達の周りの人達を優先的に眷属にしていけば、三日で国はその機能を失う。


勇ましいことを言って無謀な戦いを起こさないことが結果として人間を守るんだよ。


敢えて戦わないこと。それ自体が勇気だと僕は思うんだ。


まあそれと同時に、今回のように力を使わないといけない時も確かにあるけどさ」


穏やかに息子を諭す父親だったけれども、その場に立ち会った人間にしてみれば意味不明な状況だっただろう。


「え…あの……え……?」


猿ぐつわも手足の拘束も解かれて自由になった美千穂は、あまりのことに頭がついていけなかった。


まあ、頭を窓枠に押し付けられてまったく身動きが取れない男達三人と、手の骨が砕けてその激痛でうずくまる女には、日本語で話した内容などそもそもまったく理解できなかっただろうけれど。



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