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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第一幕
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恵まれた出逢い

『私、本当はフードファイターになりたいんです』


美千穂のその言葉に、セルゲイ達は得心がいっていた。それが本心だというのは見ていれば分かる。


「そうですか。あなたの夢が叶うよう、私達も応援します」


セルゲイはふわりと微笑みながらそう言った。アントニー(ミハエル)、ヴァレリー(悠里(ユーリ))、アンゲリーナ(安和(アンナ))も揃って大きく頷いてくれる。


そんなセルゲイ達に、美千穂はまた安堵したようにポロポロと涙をこぼし始めた。


こんな自分を受け止めてくれる相手に出逢えて彼女は心底嬉しかったのだろう。


家族には恵まれなかった彼女かもしれないけれど、出逢いには恵まれた。もっとも、ここまで大きく歪むことなくこられたのも、<恵まれた出逢い>があってのことだと思われる。


テレビで、


『人と違うことができるってのはそれは立派な才能だと思う。だから私はそれを活かしてるだけ』


と語るフードファイターに出逢えたというのもその一つだろうし、友人などにも恵まれてきたのだろう。そのおかげで彼女は決定的に人間を恨まずに済んできた。


それが証拠に、


「海外への留学も、中学からの友達が勧めてくれたんです。『日本が駄目なら外国に行っちゃえばいいじゃん!』って。留学先を決める時も、情報収集とかその友達が手伝ってくれて」


とも言っていた。その<友達>が彼女の支えになっていたことが窺える。


だからセルゲイも彼女を応援したくて、


「私達はこれからまだ二週間ほどカナダに滞在する予定です。もしよろしければまた一緒に食事でもどうですか?」


と、メールアドレスの交換を持ちかけた。


ただし、


「会ったばかりの相手と本アカウントの連絡先を交換するのは危険ですし、捨てても惜しくないアカウントのメールアドレスで結構ですよ」


とも付け足した。


「は、はい、そうですね」


美千穂もさすがにその辺りは心得ていて、いわゆる<捨てアカウント>というものは用意してあった。言われるまでもなくそれ用の連絡先を交換するつもりだった。


これも実は友人のアドバイスである。彼女はどうしても自己肯定感が低く承認欲求が強い傾向にあり、他人から優しくされると警戒心が緩むクセがあった。


彼女の友人はそういう部分も見抜いていて、釘を刺しておいてくれたようだ。


そこも確認できて、セルゲイ達も安心した。


ただやっぱり危なっかしさも感じるので、余計なお世話とは思いつつも、少し様子を見させてもらおうと思ったのもある。


すべて面倒を見ることはできなくても、せっかくのこの出逢いをより意義のあるものにしたいというのもあったのだった。



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