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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第一幕
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ギャランティ

「わあ、すごいすごい!」


出された料理を恐ろしい勢いで平らげていく美千穂に、ヴァレリーとアンゲリーナが歓声を上げる。あくまで<子供のフリ>ではあったけれど、無理をしなくても自然とそういう声がでた。


それほどまでに美千穂の食べっぷりはダンピールさえ驚嘆させるものだった。


もちろん、子供達だけでなく吸血鬼であるセルゲイとアントニー(ミハエル)も感心させられていた。


「テレビでは見たことあるけど、こうやって目の当たりにさせられると、さらに迫力だね」


人間なら逆に眉を顰める者も少なくないかもしれないその様子も、吸血鬼であり人間とは異なる生態を持つ二人にとってはただただ興味を引かれるだけだ。


「いや、実に興味深い。いかにしてこれだけの能力を獲得したかに強い関心を覚える」


セルゲイに至っては、<生物学者>として軽く興奮さえしていた。


とはいえ、他の客からすると唖然呆然である。


自分達の食事も忘れて美千穂に見入ってしまっている。


そんな彼女のパフォーマンスに隠れて、アントニー(ミハエル)達もしっかりと食事をとることができた。なので、最初の予定ではここからさらに他の店にも行くはずだったものが、ここでもう満足だった。


量もそうだけれど、美千穂の様子を見ているだけで満足してしまったというのもある。


「今日は素晴らしいものを見せていただきました。お礼にここの支払いは私に持たせてください」


豪快に食べ切った美千穂に、セルゲイが上機嫌でそう持ちかける。彼の素直な気持ちだった。


しかし美千穂は、


「いえ、そんな! そこまでしていただけませんよ!」


慌てて両手を振って遠慮する。なのにセルゲイはニッコニコで、


「あなたのパフォーマンスに対するギャランティだと考えてください。私にとってはそれだけの価値があったということです」


カードで支払いを済ませてしまった。その額、日本円にして約八万円。とは言え、収入については潤沢かつお金に執着のないセルゲイにとっては本当に痛くも痒くもない金額だった。


ちなみに、美千穂だけでその半分を食べている。


「すいませんすいません!」


美千穂はいかにも日本人らしく何度も何度も頭を下げて恐縮していた。


そんなこんなで信じられない光景に呆気に採られる他の客を残し店を出た美千穂に、


「ミチホが勝ったから約束のキス♡」


そう言いながらアンゲリーナ(安和(アンナ))がまず、深々と頭を下げた美千穂の右頬にキスをし、それにつられるようにヴァレリー(悠里(ユーリ))が左頬にキスをした。


「はわわわわっ!」


人形のように愛らしい二人にキスをされて、美千穂は顔を真っ赤にしていたのだった。



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