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開拓惑星の孤独  作者: 舞夢宜人
第1章 入植

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12/41

第12話 開拓惑星の冬

 西の山脈や北の山に雪が目立つようになると、寒さが本格化してくる。季節はすっかり冬である。

 川の上流で、川の流れを変えて川下から順にやってきた治水工事がだいぶ上流のほうまで進んでいる。堤防の構造は、資材の問題でコンクリートの類が自由には使えないため、樹脂ネットで玉石と土を固めたブロックをベースに川からの浚渫土で覆っている。堤防の高さは30mほどで、頂上から川側が70mの緩やかな斜面になっており、内側には最大30mの斜面で全幅100mの巨大なものだ。今年の計画変更で、堤防は南北8km東西6kmの四角な領域を囲むように変更された。四角な領域は約2km四方の農地で12に区切られており、南西にあるのが開拓地No.49-88-0001だ。真ん中の4つがNo.49-88-0002~5で、東の4つがNo.49-88-0006~9になる。No.49-88-0001の北側の3つ分は建材用に植林されており、北側には全体の貯水池があり、そこから各開拓地の貯水池に分配されている。排水は各開拓地の排水用の貯水池から排水路を介して川に排水されている。これだけ強化しても、堤防が削られてしまえば、名古屋さんがいたところの二の舞になる。川と直接接しない面の堤防についてはもう少し時間がかかりそうだ。


 治水工事の音を遠く聞きながら、一花さんと麦を踏む。ロボットは汎用のものはすべて治水工事に投入しているので、優先順位が低い作業は人手でやるしかない。

 特に大きなイベントがあるわけではないので、話題は食べ物関係か、今後の農作業の話になる。

「ねえ、料理に使える強いアルコールってあるの? 燃料用や消毒用じゃなくて、お酒の方ね。」

「米から作った日本酒もどきを蒸留したのと、蕎麦焼酎もどきがあったはず。基本、保存食の保存液として使うものなので味は期待しない方がいい。」

「ケーキのレシピを見つけたの。ドライフルーツはあるから、ラム酒の代わりに使えるものがないかと思ってね。」

「蕎麦焼酎もどきの方がアルコール度数が45度ぐらいだったはず。」

「長期保存できるようだから、一つ作って成功したら、大量に作っておこうよ。」

「レシピだけは資料があるけれど、素材がないものが多いからなあ。琉球一美さんのところなら、ラム酒もどきも、チョコレートもあるんだろうけれど、ないものはしょうがない。せめて、てんさい糖狙いでテンサイの作付けを増やすかい? 仕事が増えるのと、畑の場所が遠くてよければ何とかなるかも。」

「後で検討しましょう。つまむものなら、緑茶に煎餅に蜜柑があれば十分よ。」

翌日、成功したケーキに一花が喜んで、アルコールのにおいで判断力が鈍ったせいもあって、まとめて100ホールほど作って冷蔵保存して冬の間食べつなぐことになった。


 翌月になると、白菜などの冬野菜の収穫が始まる。もっとも半分以上は今後のために生産量を増やすために栽培している。食べる量より、種取り用や、肥料にしてしまう方が多いのだ。いくつか条件を変えて栽培しているので、レポートにまとめるのも忙しい。


 さらに1ヵ月すると、果樹区画の梅が咲き始めた。春の訪れが近い。これから5月までは仕事のラッシュが続く。収穫するものがあれば、加工するものもあり、苗を準備しだすものもある。


 仕事に追われていたら、レンゲソウやアブラナが咲きだして、すっかり春になっていた。水田はレンゲソウで白やピンクの絨毯で覆われ、アブラナは黄色い絨毯となり、麦類が緑の絨毯を織りなす。

 気晴らしに、弁当を作って、一花を花見に誘う。

「きれいに咲いたもんだねえ。」

「後で写真撮って。睦月や他のみんなに送りましょう。」

「たまには、畑を見ながらお弁当を食べるのもいいねえ。」

「今だけは仕事を忘れよう。」

「そうそう、これ全部、明日からの仕事の山だからね。」

「レンゲソウは鋤き込んで肥料にして、一部は種を取るんだったね。」

「アブラナは種を取って油絞り」

「麦はこれからが大事な時期で、その後、収穫と加工かあ。」

「収穫後、整地した後に植える苗も作り始めたしね。」

「……ふぅ」

「使える場所が増えたので、綿とかテンサイとか作付けを大幅に増やすものもある。」


 もうすぐ、地上に降下して1年になる。幸運にも大きなトラブルは起きていない。一花さんが来てからは、あっという間の日々だった。


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