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鋼明かりのセレナーデ  作者: 上昇気流
第1章 月明かりへと飛び立つ
7/8

p.m.04:24

テストとかなんのためにあるんでしょうねぇ。

さっさと無くなって欲しい。

タイトルは特には意味ないです。

 警備隊の人たちを始末するのにだいぶ、派手に暴れてしまった。時間も時間なので、大してビルに人は残っっていないだろうが、身元がバレないに越したことはない。とりあえずリーダーらしき男の持ち物を漁る。めぼしいものといえばどこかのカードキーと

 大沈日帝国軍第7軍本部ビル所属 ミヨキ と書いてある名刺であるだろうか。やはりここが本部ビルだったようだ。こういう場合どうすれば良いかはよく分からなかったが、身元が割れてしまうことを考慮した上で熟考し、その結果第7支部ビルを殲滅することを決断した。


とりあえず1階の探索を始めた。本部ビルは入り口から左右に分かれ、それぞれ50平方メートルと100平方メートルの部屋が5部屋ずつあり、その全てがオフィスであった。本部ビル28階中20階までは全てオフィスで誰一人人は残っていなかった。だが21階からは違った。フロアの端から端をうめている射撃訓練場、特殊なフィールドを想定した森のようなフロア、完全に戦闘訓練用の階層続きである。そして最上階の28階フロア全体を覆う指令室があった。そこは当直なのだろうか、下っ端らしき兵士が5人在中していたが、特に使える能力もないのか入団したばかりのお坊ちゃんたちなのか、侵入者のミコトを見かけても慌てて銃を的外に乱射するだけで、特に障害にならなかった。全員分の現し身を壊し、呆気なく終わった掃討に拍子抜けする。しかし、そこで思い出す黒髪さんが立っていた屋上の存在に。


屋上への出口を探すがいくら探しても見つからない。別の階層にある可能性を考え、一層ずつ降りながら探し、ようやく見つける。第22層の森エリアの隅、茂みに隠されたように鉄製の扉があった。その先に屋上に続くであろう階段が隠されていた。鉄筋の階段を上がり、しばらく登ったところで屋上にたどり着く。


ーヒューーー


風が強く吹いている。アンテナや室外機などが並んでいる。金髪を大きくたなびかせ、通路沿いに進んでいく。そして、対峙する。


「初めまして。2回も助けてくれてありがとう。」


「どういたしまして。やっぱり、10年前のあの時のお嬢さんね?」

ミコトは首肯する。


「なぜ、私を助けた?」


「んん、前の時は気まぐれかな。今回は、見定めってところね。」


「見定め?」


「ふふっ。レジスタンスってね、人手不足なの。だから、入ってきてくれそうな人を探すっていう。」


「でも、私が入るとは限らない。」


「そうね。でも用は種の用意ってこと。入るかどうかはあなた次第ってね。で、私たちはあなたに目をつけたの。今帝王交代で、官邸は揺らいでる。密偵を放つのは本当に簡単だったのよ。それで、あなたの行動に気づいたってこと。」


「そう。まぁ、そのつもりだった。」


「逆に、私達をして大丈夫なの?仲間のふりして現し身を壊されるかもしれないのよ?」


「命を2回も助けられたら、信用せざるを得ない。」


「そう。ま、現し身を食らったことによる貪欲な心に打ち勝ったあなたなら脱出くらいはできるでしょ。」


「...」


「そういえば、名乗ってすらいなかったわね。私は ミカゲ ユキ。不老不死なの。」


「リュウオウ ミコト。」


「スルーは悲しいわね...ま、気にせず行きましょう。」

よく考えると、黒髪さん、改めユキは記憶の中の姿と変わらなかったが。


ミコトは引き返して階段に向かおうとしたが、

「ふっと」、という気の抜けた掛け声で、ユキは立っていた場所から飛び降りた。


下を覗き込むが、完全な無傷で立っていた。250メートル以上のビルから平気で飛び降りるユキに驚愕した。呆然と見ていたら、彼女に手を振られた。


「降りてきなよー!」


「大丈夫?」


「大丈夫だと思うよー!」


今までに体験したことのない高さに気後れしたが、それよりも好奇心が勝ち、結局飛び降りる。


ービュワーーーー


周りのビルの景色が流れていく。数秒もしたところで地につく。

対して足に負荷もかからず着地する。初めて、成長の実感が湧く。


「どう、意外と大丈夫でしょ?」


「ん。」


「さっきまでは饒舌だったのに、ほんとはあんまり喋らないのね。じゃ、今度こそいこ。」


早々に第7支部のビル群を抜け、古びた廃墟の間の裏路地を縫い進んでいく。裏路地ゆえにホームレスが大勢こちらを見つめている。ただ、ユキが睨むだけで皆目線を合わさないように逃げ隠れていく。


「ここら辺は荒れててね、治安も悪くてね。レジスタンスの子達にも近づかないように言明してるの。」


「どこに向かってる?」


「この奥、ショッピングモールがあってね、そこも私たちの拠点の一つで、うちのボスと幹部数人がいるから、ちょうどいいしね。」


「ボス...」


「ははは、大丈夫だよ。実力はすごいし、敵には容赦しないけど、すごい気さくな人だし。」


レジスタンスのボスのことを気にかけたのは、心配からではなかった。先ほどから、視線を感じていた。以前は視線など気づかなかったが、現し身を喰らったことで、本能的な第六感がましていた。おそらくこちらを見ているのは5人から7人ほど。自分を見定めているだけならばいいが、戦闘経験が浅い自分ごときがわかるものなのだろうか、と疑念を感じていた。何か自分に存在を教えることに意図があるのではないだろうか、と考え始めた。

自分に存在を知らせる意義、それはなんだろうか。存在を軽く認知させることで自分に対して暗に警戒を行なっているのだろうか。

思案している間にも道を進んでいく。そして、廃墟地帯を抜け、ある程度新しい街並みが広がる。大きな通り沿いに公園があり、面するように件のショッピングモールが立っている。

ショッピングモールの入り口まで近づき、入ろうとするが入り口が開かない。


「あー、多分今閉鎖しちゃってるんだろうね。なんかここらへんはちょくちょく閉鎖するからねぇ。ちょっと行ってくるから待ってて。」


「ん」

ユキの言葉に従い、待っているもなかなかに戻ってこない。

ふと背筋に悪寒が走る。急いで【飛翔】を使い交代する。


ーヒュッ ドゴーーンッ


何かが強烈な勢いで地面に落ちてきて、先ほどまでミコトが立っていた場所は大きく亀裂が入っていた。

落ちてきた何かが立ち上がり、宙に舞った塵をうっとおしそうに払いこちらに対峙してくる。地面に突き刺さっていた、落ちてきた本人の身長ほどある大剣を引き抜き両手で持ち直し、構える。

白髪の20前後の女性で鋭い目つきをしている。ものすごい勢いで地面に激突していたが、傷ひとつなく好戦的な表情をしている。

ミコトも忍ばせていた拳銃を取り出し、臨戦態勢をとる。


 相手が動き出す。大剣を引きずるように走り、地面と大剣の間に火花が散っている。にも関わらず、ものすごい勢いで迫ってくる。

接近される前に飛び上がり、相手の頭を踏み抜き、素早く空中で身を翻し銃を乱打するが、それを全て幅の広い大剣で受け止め弾け飛ばされる。間髪入れずに相手に肉薄し、足を払いにかかるが、俊敏な動作で躱され大剣の峰で打たれる。

ものすごい重量の衝撃が体に伝播し、弾き飛ばされ、壁に激しく打ち付けられる。

右腕が動かない。骨折したのだろうか、鈍い痛みが腕を蝕む。

女はすぐに追撃を仕掛けてくる。左腕を使い立ち上がり、態勢を立て直し、軽くいなす。

相手の左脇に回し蹴りを叩き込み態勢を崩したところを乱れ打ちしようと狙うが、大剣で防御される。

【飛翔】を使い飛び上がり、一方的に銃を打ち込むが、全て防御される。


「降りて来い、小娘!」

女がギラついた目つきで叫ぶ。


能力を停止し、急降下して足をぶつけようとしたが、逆に大剣で弾き飛ばせれそうになる。

だが、それを予測し不規則に空中で曲がり、壁を足蹴にし、反動で再び接近する。

肉体戦に持ち込むと見せかけ、再び回し蹴りを食らわすが、直後至近距離で銃を2発打ち込む。

打った2発のうち、片方は防がれ、もう片方を相手の左肩に命中する。相手が怯んだ隙に拳を打ち込み、一度離脱する。

ミコトは可能性を考え、相手を殺さないように調整していたが、限界が近かった。こちらも相手も片腕を失った状態、だが、相手の構え方からして利き腕は右なので、利き腕を失ったミコトの方が若干不利だろうか。

緊迫した空気の中、


「あれー、何やってんの?」

ユキの気の抜けた声が響く。


「あ...あちゃちゃ。運悪くアカリにエンカウントしちゃったかぁ。」


「う、運悪くってぇ。な、なんかダメだしたぁ?」一気に白髪の女はおどおどした態度と声になる。


「ダメも何も、そこのミコトちゃんはうちの新入候補だよ。せっかく怪しいスパイじゃないか監視するためにテストしようと思ったのに、勝手に戦っちゃて。」


「え、えぇ?」


「ま、いっか。」


「ごめんなさいぃ〜〜、なんでもするんで許してくださいぃ〜。」白髮の女が泣きついてくる。


「そんなに気にしてない。」

そんなことよりやはり自分が試されていたことを知り、納得する。


「ぐっさんが悪い人じゃなさそうって言ってたから、だいじょうぶっしょ。とゆうか日たりとも骨折れてるっぽいけどいいの?」


「う、言われてみれば痛いですぅ〜。」


「バカ頑丈が取り柄のアカリが骨折ねぇ。ミコトさんやるわね...」


「そんなぁ〜。」


「じゃ、今日の門番の人に話しつけて来たし入ろ。」

気づけば、ショッピングモールからだいぶ離れた場所まで乱闘は及んでいた。白髮の女ーアカリといったかーの豹変ぶりに内心驚きつつ、歩いていく。


今度は自動ドアも問題なく開き、中に入る。元々は店舗であっただろうところは、ほとんどが居住スペースになっている。通路を子供達が走り回り、それを強面の男が微笑ましい表情で見守っている。

ここの人々には活気があった。少しばかり残っている店ー皆が自由に持っていってるので倉庫とゆうべきだろうかーの商品を見るに、あまり余裕はなさそうである

だが、人と長らく接していなかったミコトからしたら非常に刺激的な光景であった。


「とりあえず、うちのボスに会いに行こっか。」


「えぇ、カミヤさんのとこですかぁ〜?わたしも行きますぅ。」


「わかった。じゃぁ、行こう。」


ショッピングモール内の停止してるエスカレーターから上がって行き、最上階の3階下4階の元は映画館であったであろう場所に入っていく。

重厚な扉の前に着く。


「緊張してる?」


「多少は。」


「まぁまぁ、そこはリラックスですよぉ。」


多少息を整えてから、扉に手を掛け、押しあける。

Tips:

生存に深く関わるため、自身の特殊能力をむやみに晒すことはない。

逆に言えば、能力を打ち明けたというのは信頼の証でもある。

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