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鋼明かりのセレナーデ  作者: 上昇気流
第1章 月明かりへと飛び立つ
6/8

雨の下で紡ぐ

今回は結構会心の出来かも?(期待はせずにどうぞ)

ーーーパラパラパラ

雨が降り始める。


ミコトは今初めて直面していた、人の【死】に。ミコトが資料を読みあさって手に入れた知識のうちに、このようなものがあった。

 


『現し身を持った人間は、他の者の現し身を手にかけると、能力が全般的に向上する。理由は不明であるが、壊す現し身、自分の現し身にもよるが、例えば1文字格上相手の場合、おそらく全能力が1.5倍程度に跳ね上がる。現し身を刈り続けることで字数が増えることも考えたが、それを実証するには至らなかった。何故ならば、現し身を刈られた者は精神的な崩壊を告げる。現し身は精神と直結していると考えられているため、おそらく現し身が破壊に至った場合精神も後を続くのであろう。』


 それ以上の言及はその資料ではなかった。外傷に対する感情はともかく、家庭でのトラウマから少し不安を抱いていた。しかし、いずれ自分も強者のステージに立つために必要なことだろうと覚悟はしていた。

だが、その考えもぬるかった。片眼鏡(モノクル)を壊した瞬間、うずくまっていただけのサオトメが糸の切れたマリオネットのように不自然な動きで倒れた。


「ぅうぅうう、ぉ坊っうぅちうう」


虚ろな目で低いうめき声をあげながらうわ言を繰り返す。その姿があまりにもおぞましく恐ろしかった。そして、その姿はいつか来る自分の最後にも見えた。あまりのショックに抑え切れなかった吐き気が溢れる。


「お゛ぅあ゛ううぅええ゛」


そして、ついにうわ言を繰り返していたサオトメが事切れる。と同時についさっきまで感じていた嘔吐感は嘘みたいに消え、代わりに形容しがたい全能感がミコトを包み込んだ。


ーーなんだ、簡単。

 こんなことならば最初からそうすればよかった。何故ならば私は強い。自分もこうなる?馬鹿馬鹿しい。何故他人に負ける、弱いからだ。ならば負けることはないだろう。

自己肯定感はどんどん強くなっていく。そして、思いつく。ここは軍の基地、ならば兵士が在中しているはずだ。それを全部喰らい尽くせば...




  サーーー

雨は振り続ける。




黒髪さんが立っていたビルに侵入する。正面玄関の窓ガラスを殴りかかってぶち壊す。警備システムの警報が鳴り響く。警備担当なんだろうか、軍服を着て大剣を持った男が15人ほど出て、ミコトを取り囲もうとするが、


ーーーダンダンダンダンッ


歯切れの良い音を鳴らしながら銃を放ち、男を4人始末する。


一、二、三 ... 十四 今殺った分も合わせて14、残り10人


初手から相手に優位を取られ相手も怯んでいるが、それを見逃すほど戦いの素人ではない。

だが、

ーーカチッ


残弾不足、マガジンを変えなければいけない。ミコトは舌打ちし、接近戦に持ち込む。本来ならばミコトはそんな判断はしないであろうが、それほどに彼女は好戦的になっていた。【飛翔】を使って、固まっている男達に肉薄する。取り直して怠慢な動きで大剣を振るって来た一人の顎を蹴り上げる。地に足がつく前に飛んで、天井を蹴り、反動で横から斬りかかろうとしていた二人を踏み抜き、そのまま真ん前に突っ立ていた男の鳩尾を殴る。惰性で地を滑り、距離をとっていた一人に足払いをかけ、立ち上がり殴り飛ばす。


そこで一旦戦線が硬直する。 残り5人

サオトメを【殺】したことで、本能をさらけ出したミコトは歴戦の戦士の様な戦闘センスで戦っていた。相手も軍の基地の警備を任されている様な実力者。それらを前に圧倒しているミコトは訓練を受けていないなど嘘にしか思えなかった。


そこで、今まで動いていなかったリーダーらしき者が動き出す。と、思った瞬間にミコトの前に現れる。


「シィッ!」


 ミコトは間一髪で避け、回し蹴りでダウンさせにかかるが、今までの男たちと違い歯を食いしばり反撃して来る。

ミコトは推測する。おそらく能力は【縮地法】系列のものであろう。ありふれているが、硬直があるはあるものの間合いを一瞬で詰められることで、とてもポピュラーで当たりの能力である。

ならば、と取り回しの悪い大剣のリーチの内側に入る様に接近する。そこからはミコトの独断場...ではなかった。残る4人が指をくわえて見ているわけもなく、タイミングを合わせて切りかかって来る。体勢を低くすることでそれらをいなし、そのまま床につき踏み切って跳躍し、包囲を脱する。ガラスに足をつき、ガラスを蹴り推進力を得て再び警備兵達に殴りかかり、一人を吹き飛ばし、もう一人を卒倒させる。


男達の的外れな剣さばきですでに、ロビーのあちこちが破損している。ただ、飛ぶことのできるミコトからすれば関係ないが。  残り3人


リーダーが再び不自然な動きを見せる。硬直時間が長いとタネが割れた今、使わないほうが良かったかもしれないが。

 ミコトの蹴りが硬直しているリーダーの胴体を捉える。そのまま吹き飛ぶ。 残り二人


「ひぃっ」

「ひぎゃっ」


男達は恐れをなしたのか背中を見せて逃げ出す。が、今のミコトはそれを許さなかった。ひどく落ち着いた手つきで、残弾がなくなって放り出した拳銃を取り上げマガジンを取り替え、それぞれの肩を狙い撃つものの、戦闘センスが芽生えたとは言え、銃の腕前は上がっていなかったので、1発は背中、もう1発は外れてしまったので、もう1発ずつ放ち、今度はそれぞれの背中に当たる。  殲滅完了


激しい運動の後の貴族の子供のように、ストレッチを行い現し身を破壊するために動き出す。14人中4人はすでに息を引き取っており、無駄に終わったが、他10人の現し身をゆっくりと破壊していく。


 と、そこまでしたところで、はっと気づく。野性に完全に飲まれていたことに。自覚してからは早かった。自分を包み込んでいた全能感は身体に馴染むかのように消え、自身の能力を把握する。格上を喰らい、本来なら同格程度の相手を10人も喰らったことで、自身の能力は2倍ほどに跳ね上がっていた。一刻ほど前までは叶わなかったサオトメに善戦できるほど力が増したことを自覚し、驚く。

 恐ろしくはなかった。むしろ自分の望む道が見え始めたように目の前が開けた感覚がする。


 ザーーー

雨は強くなっていく。

Tips:

現し身の力が強いと出現する特殊能力は全員が持っているわけではなく、3人に1人ほどの割合である。その中でも強力な能力であり、それを強みとしている人のことを超能力者と呼ぶ。

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