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例えこの剣が、憎しみに塗れていたとしても。  作者: ハル
第一章 優しい思い出
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第八話 本部会議・上


 さようなら。後はどうか、よろしくお願いします。


 発信源 中部基地  観測日 七月四日

 差出人不明 (観測・解読 晴嵐咲・加賀美玲奈)



 電車の中、茜はぼーっとしながら外の景色を眺めていた。

 戦争の激戦区から五十キロメートルにも満たない場所を走っているにも関わらず、電車は混雑していた。

 時刻が朝の九時過ぎだからか、スーツ姿の人が目立った。逆に、茜や光のように、制服姿の少年少女は見当たらなかった。


「別に、本部に行くだけななんだから、ラフな格好でもいいじゃない」


「ダメよ。本部を何だと思っているの?」


「面倒くさいなぁ」


 基地を出る前の会話が浮かぶ。光は普段着で本部に行こうとしていた。

 茜はありえないと、その時思った。本部はそんなカジュアルな場所じゃない。茜の心はそう唱えていた。


 そして、茜はもう一つ気がついたことがある。

 光は、思ったより世間離れしているのではないか、ということだ。

 正直、切符の買い方や、電車の乗り方だとかを教えるのは、考えたこともなかった。

 そんな光は、茜の目の前の席にちょこんと座っていた。


 茜は、学校のことを考える。皆時間どおりに集合しているだろうか、出席シートは誰かが書いてくれているだろうか、茜は、自分が思ったよりも、学校というモノに取り憑かれていた。

 別に学校が好きなわけじゃない。茜は心の中で呟いた。けれども、自分が居ない学校という見えない何かに、不安を抱いていた。


 大規模な駅に到着し、人が一斉に降りる。


『当駅から前より七両を切り離します。この先へお越しの方は、後ろ三両にご乗車になって、お待ち下さい』


 放送が、すっからかんの車内に響いた。

 数分待つと、再び電車は走り出す。すると、車掌が、各車両を回っていた。


「お客様、どちらまで行かれますか?」


 制服を身に纏った車掌が言う。


「終点までです」


「許可書はお持ちですか?」


 茜は、隊員証を見せる。光も、茜の行動を見て、隊員証を出した。

 茜の隊員証に比べてボロボロで、色も違うほど古いものだった。

 車掌は確認を終えると、車両後部へと歩いていった。どうやら、茜と光が最後の乗客みたいだ。



 終着駅に着き、二人は列車を降りた。ベタつくような湿気と生ぬるさが、二人を出迎えた。

 線路はまだ続いているが、これ以上先に行く列車はもう無い。それに、二人以外に降車する客は居なかった。


(帰りの電車は‥‥‥)


 茜は、時刻表掲示板に近付く、透明板のケースの中には、文字で埋め尽くされた過去の時刻表が入っていた。

 そして、一枚のコピー紙が、二枚のテープで直接透明板に張られていた。


 電車は一日五往復。次の列車は昼過ぎだそうだ。


「ここもあんま変わってないなぁ‥‥‥」


 周囲を見回して、光は呟いた。

 

「でも、もう誰も住んでいないだろうな」


 物音が一切聞こえないことから、この街に住んでいる人は居ないと推察し、光の表情は固くなる。

 茜は反対方向を見て、高架駅から、街を見下ろした。人の姿は見当たらず、アスファルトの隙間から伸びた雑草が印象に残った。


「行こ」


 茜はポツリと言って、階段の方向へ歩く。それに光が続いた。

 無人の改札口を抜け、出口を抜ける。

 駅前から見られる景色は、ヒビの入ったコンクリートや、伸びっぱなしの雑草、ツタ。黄ばんだ案内表示板。様々な人工物が、誰にも使われること無く、虚ろに立っている。


「これじゃ、お迎えもなさそうだね」


 光は、戦闘体へと換装しながら呟いた。


「状況が状況だもの。文句は言ってられないわ」


 茜も、戦闘体へ換装する。

 直後、二人は近くの建物の屋根を目掛けて跳躍する。そして、二人は屋根伝いに走り出す。

 その速度は、生身の肉体では到底考えられないものである。


『茜、何か考えていたでしょ。学校のこと? 基地のこと?』


 通信越しに、光は茜へ言う。


『別に、光が知ることじゃないわよ』


 茜は答えを濁らせた。他人にアドバイスをしてもらう事が、何となく癪だった。

 暫くの間、風を切って走るうちに、一際大きい建物が、遠くに映る。


『お、インターセプト本部だ。懐かしい』


『インターセプトって、いつの話よ。今は、RIOって呼ばれているのよ。縦文字にすれば対侵略者抵抗組織』


 改名したのは光がこの世界から消えた数カ月後。時期的に、光は知らなくて当然である。


 ある建物を境に、瓦礫の荒野が広がる。瓦礫の荒野の中心に、RIO本部は建っていた。

 近付けば近付くほどRIO本部は大きく見える。二つの正方形を底面、天井面にし、台形を四つ周囲に貼り付けたような形をしていた。

 十数階建ての高さで、高校の敷地面積数枚分は軽くある。


 二人は、本部麓の入り口に辿り着いた。

 ドア上の青いランプが点灯して、自動ドアが開き、二人は中へと入った。


 中は桜ヶ丘基地の廊下をそのまま少し広くしたような印象だった。近代的で、白い壁は光に反射している。途中、大広間に出たが、他の隊員は見当たらなかった。

 二人はエレベーターに乗って、最上階を目指す。


「珍しいなあ。誰にも出会わないなんて」


「そう?」


 茜にとっては、この状態が普通だと思っていた。

 二人で使うには少し広いエレベーターの、ドアと反対側に付いた鏡を、光は寂しそうに見つめていた。


「昔はもっとこう、賑やかで、‥‥‥茜に見せてあげたいよ」


 光が言ったと同時に、エレベーターの扉が開いた。どうやら最上階に到着したみたいだ。 

 エレベーターを出ると、瓦礫の荒野が一望できる窓が見える。人の姿は一切見当たらなかった。


 廊下を少し歩くと、唯一黒いドアが入り口の部屋がある。ここが本部会議室。二人はここに呼ばれていた。

 茜は唾をゴクリと飲み、重たい空気が滲み出るドアへ手を伸ばす。なぜか、ここの部屋だけ、手動ドアであった。

 茜は、ドアを開いた。

 部屋は薄暗く、遮光カーテンが日の光を抑えていて、少量のライトで空間を照らしていた。

 茜から正面に見える円状の少し大きなテーブルには、五人の男性が座っていて、何か話し合っているようだった。


「もう少し先の展開を考えながら戦いましょう。まずは中部基地及び北部地方の救出が優先です」


 入り口から見て左前、白い髪をした三十代半ばの男性、白井哲也(しらいてつや)が円卓に座っている男性たちに向けて、提案する。

 その左向いに座っているスキンヘッドの男性、鴨宮一輝かものみやいっきが机を両手で叩いて立ちあがる。


「何を言う! そのリソースはどこから持ってくるんだ! そんなつまらない仕事をさせるなら、一匹でも多く侵略者(インベーダー)を殺すべきであろう!」


 鴨宮は唾を撒き散らし怒鳴った。

 

「まぁまぁ鴨宮さん落ち着いて下さい。中部基地の方々に対してあまり良い印象を抱いていていないのはお分かりですが、貴重な戦力なんですよ」


 鴨宮の右隣に座っている赤髪で四十代前半の男性、工藤綜一(くどうそういち)が鴨宮の肩に手を置いて言う。

 

「黙れ! 金弄りにしか脳のないやつに言われたくはない!」


 鴨宮は顔を赤くして怒号を散らす。


「鴨宮技術長官。ここでの争いは無益です。それに‥‥‥」


 冷淡な声が、扉から見て右奥に座っている細目の男性、諏訪伊吹(すわいぶき)が忠告する。

「そのぐらい知っとるわ」と言いながら諏訪を睨みながら、鴨宮は席に着いた。


 茜から正面に座っている男性と目が合い、その男性が手を叩き、話を止めるように促した。


「君たちが、桜ヶ丘の二人か」

 扉から見て真正面に座っているガタイの良い男性、籠原英治かごはらえいじが言う。


「はい。私は螢田隊の螢田茜と申します、でこっちが」


 茜が円卓の男性陣に手のひらを見せ、指先を光の方向に揃える。


「藍原光。名前ぐらいは知ってるでしょ?」


 冷淡な口調で、光は言った。


「ちょっと、何言ってのよ光。この人は‥‥‥」


 叱咤しようとする茜の手を、光は片手で突っぱねる。


「知ってるよ。大統領でしょ? さっさと辞任したほうが良いよ。碌な事にならないから」


 鴨宮が円卓を拳で強く叩く。


「目上の人に対してどういう口の聞き方だね!?」


「言葉遣いを忘れたわけじゃないですよ。鴨宮さん。ただ、『目上の人』じゃなくて『嫌いな人』として見ているだけです」


 幾ら嫌いな人相手でも、表面上の関係というものがあるはずだ、茜は心の中で唱える。そして、茜は光の言動に冷や汗をかいた。


「ラビリンス出身の君が政治にどうこう言う筋合いは無い。それに、奇遇だね。俺も君のことは嫌いだよ。君が散々活躍したせいで、どれだけ独立に苦労したか」


 部屋の雰囲気の悪さに、茜はキョロキョロと視線を右往左往させる。


「螢田茜」


「ひゃ、はい!」


 籠原が茜を呼び止める。不意を突かれ、茜の返事は少々裏返った声になった。


「本日付けで正式に、藍原Ⅰ種隊員を螢田隊所属とする。藍原隊員は螢田茜の監視のもと行動をすること。また、螢田隊員は一日一日の行動を本部に報告すること」


 Ⅰ種隊員というのは、上位一割の実績を持つ隊員を表す。残りをⅡ種隊員として、所属する。ちなみに、茜は、Ⅱ種隊員である。


「わかりました」


 茜は命令を承諾した。「よろしい」と、籠原は相槌を打つ。


「後の説明は諏訪、任せた」


「承知しました」


 諏訪はリモコンのスイッチを入れる。すると、扉の上にあるモニタに、スライドシートが映る。

 諏訪はスライドシートを使い、現状の戦況を説明した。要約すると。現在の領地はL字型。もう半分以上の領土を取られている。右側の正面は拮抗しているが、左上の中部、北部は押し込まれているのが現状みたいだ。


「とまぁ、以上が現在の戦況です」


 諏訪はモニタの電源を消した。

 

「今後としては、北部を捨て、首都から反抗を行い、左右分断を狙う。それが、籠原大統領の意向だそうです」

 

 発表を締めて、何か質問はありますか、と言う。


「諏訪さん自身はどう思ってるんです? 中部と北部には、それなりの避難者が居るとお聞きしましたが」


 光は、迷いなく訊ねた。

 籠原は、諏訪へ視線を向ける。


「私は大統領の意向に賛成しているよ。避難者数千人を助けるために、首都の数十万人を危険に脅かす恐れがあることをするだなんて、ナンセンスだ」


 冷淡な言葉だった。


「ふうん‥‥‥。諏訪さんらしい」


 光は仄かに笑みを浮かべて呟いた。


「ま、現状は前線への戦力集約が最優先だ。しかし、そう簡単に物事が運んでくれはしない。

 先日中部基地から連絡があった。『避難者を難民としてラビリンスに送る』と。

 確かにこれは綺麗な考えだ。だがしかし、そんなことをされては、我が国の存続に関わる」


 籠原が言う。

 支離滅裂な発言に反対者が誰もいないということは、既に会議で決定していると光は推察し、何も言わなかった。


「ということで命令する。藍原隊員には桜ヶ丘基地から北上し、中部基地へと向かえ。そして、ラビリンスに避難させようとする『裏切り者達』を葬ってこい」


 工藤と白井は、不満げに下を向いていた。

 光は返事をせず、籠原の瞳の奥を睨んでいた。


「何故黙っている。その化物を使えば簡単であろう」


「残念だけど、それは無理」


 白井を除く他の皆が光の顔へと視線を向ける。


「どうして従えないというのだね!」


 鴨宮が荒い口調で言う。


「簡単ですよ。大統領が持っているのは、Ⅰ種隊員の指揮権」


 光が、胸の上に手のひらを置く。


「こっちの扱いは特種隊員。特種隊員の私への指揮権は、直上である、白井さんです」


「何を悠長なことを! 間に白井が居るだけで、実際は何も変わらんだろう!」


「まぁまぁ鴨宮さん。落ち着いて下さいって」


 工藤が鴨宮の肩に手を置き、着席を促す。


「まぁ、籠原大統領の直命が通らなくとも、各基地は本部の意向に従い動くこととなっております。

 そこは、藍原隊員も重々承知しているでしょう」


 冷淡に、諏訪は言った。


「もう少し素直な子であれば、そんなことをせずに済むのだがな。ま、ラビリンス人だから仕方がないか。

 では、これにて解散とする。諏訪と鴨宮、あと螢田はこの部屋に残れ」


 号令とともに、工藤と白井は席から立ち上がる。

 光はドアに体重を掛けた。


「じゃ、またあとで」


 光は茜に言って、部屋を出た。

 それに続き、白井と工藤が部屋を後にする。二人とも浮かない顔をしていた。



「あいつ、なんでここまで指図してくるのよ!」


 咲の声とともに、机を叩く音が、タブレット端末越しに聞こえる。

 ここは、本部基地のカフェテリア。かつての活気はとうに消えていて、料理店も全て撤退、無人販売のみしか機能していなかった。

 この空間には、白井と光しか居ない。


「さぁな。国防の唯一機関に権力をひけらかしたいが為というのが専らな噂だ」


「だからといって、あんな命令を光にするなんて、おかしいですよ!」


 タブレットによるネット通話越しに、咲の音声が聞こえる。


「それは僕も同感だ。避難者がラビリンス領に入るなら、殺したほうがマシだとは。思考回路を疑うよ」


「まぁでも、諏訪さんがトップでも、中部基地以北は捨てていたでしょ。あの人、引き算大好きですから」


 アイスコーヒーを飲みながら、光は言った。


「諏訪さんなら北方を切り捨てなんかしないよ」


 咲は言う。なぜ? と光は訊ねた。


「中部基地には工藤さんを除いた赤松陣営がほぼ揃っている。Ⅰ種隊員を二隊分有している。これは今の状況からしても、貴重な戦力だ」


 白井が光の質問に答える。


「それに、戦域最北端には、袴田隊員が居る。諏訪が持つ、現在唯一で、最強の駒だ」


「諏訪さん、袴田さんだけは指揮権を大統領に渡すことを拒否してましたからねー」


 光はストローでアイスコーヒーを吸いながら、二人の会話を聞いて、自分が居なかった時の状況を整理する。


「で、今後の方針はどうするんです?」


 咲が、場を仕切り直す。

 白井は過去を懐かしんでいる顔をしながら、「そうだなー」と呟く。

 彼もまた、大統領に多くの隊員へ対する指揮権を剥奪された。年齢が若かったということで、咲は大統領の目から逃れた。

 光は、当時は死んでいた扱いだったため、特種隊員にもかかわらず、話にすら上がらなかった。


「一応、本部からの命令は、中部基地以北である防衛脆弱区域に対する、ラビリンスの全面的介入の防止」


「あいつ、根っからラビリンス嫌ってますね」


「まぁ、ラビリンスからの影響を防ぐ。というのが彼の政治方針だからね」 

  

 その政治方針は、侵攻前は大きな支持を得た。今はどうであるかは、分からない。

 白井は咳払いをして、話を戻す。


「取り敢えず、僕たち七番基地の隊員は、中部基地以北の隊員及び避難者の救出へと向かう。

 咲、中部基地の現状は?」


「えっと、昨日の通信では、侵攻がピシャリと止んだみたいです。

 ただ、奇妙な事に今日の通信は、打電が荒くて‥‥‥」


 咲は、中部基地から届いた通信メッセージを、本部の二人へと送る。


「『‥‥‥も‥‥‥でした』か。今日も大丈夫だったんじゃない? 通信機器が壊れただけだと思うよ」

 

「そうだと、嬉しいな」


「きっと、大丈夫ですよ。中部基地の隊員達は、優秀ですから」


 光のアイスコーヒーが全て無くなり、ストローに空気と液体が混ざった音が鳴る。


「そうだな。よし、僕たちも、万全を期して、作戦に取り組もう。

 光と咲に邪魔が行かないように、桜ヶ丘基地と上には僕が話を通しておく。

 目標は、残存隊員と避難者の安全確認と救出。出発は明日の正午。明後日の正午到着を目処に進軍しよう」


「わかりました。接敵道中で外界人(フォーリナー)と遭遇した場合、どうします?」


 光は訊ねた。


「捕虜として丁重に扱おう。後で役に立つかもしれない」


「わかりました」


 光が返事をした時、着信音が、彼女の携帯端末から鳴る。茜からであった。


「どうやら、終わったみたい」


「じゃあ、解散だな」


 光が頷いて、席から立ち上がる。


「私、白井さんの部下で良かったです」


 光は白井に背を向け、カフェテリアを後にしながら言った。それは白井を慕う気持ちと、籠原を嫌う気持ちから出た言葉だった。しかし、それはこれから死地に行くような人の言葉にも聞こえた。


「そんな縁起でもない発言はよしてくれ」


 白井は遠ざかる光に向かって呟いた。彼は、ペットボトルに入った緑茶を一口飲む。


「本当に、明日出発で良かったんですか?」


 咲は訊ねた。


「ああ。焦って光や咲に無理をさせるのは、上司失格だ」


 白井は自分の携帯端末の待受画面を見る。

 画面に映っているのは、家族の写真だった。妻と、年上の長女と、年下の長男、そして白井自身。

 娘が遠くの基地に行くからという理由で、白井は無理を言って家族写真を取ることにした。

 長男の顔が少し不満げな顔をしているのが、それを現している。


「本当は、僕が直接行きたいぐらいだがな」


 娘の着ている服は、RIOから支給されたジャージ。今年で中学二年生だそうだ。

 所属は、赤松陣営、中部基地。ジャージの左胸にプリントされたエンブレムが、それを示している。


「光が戻ってきてくれて、良かったですね」


「ああ」


 もし自分がレジスタの所持を許可されていたのなら、飛び出して中部基地へ向かっただろう。

 しかし、赤松陣営が中部基地へ移動となった時、大統領からレジスタも剥奪された。

 

 彼は、娘の無事を祈ることしかできなかった。


「頼む。咲、光」


「はい。わかっています」


 咲は落ち着いた口調で答えた。

 重い空気が、カフェテリアを包んだ。

 

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