4海目! 「不滅の巨人軍!」
聞いてくれ、夜起きたら目の前が海だった
……しかもピザが中々来なかった
「よっ!よっと! イケるイケる!
あ!馬鹿!そこいったら!
……オオゥ、オッケーオッケー
お!ざまぁ! 貰ったぞこのラグヤロー!
SMAAAaaaaSH!!」
WIN!!
6 ー 4
「ッシャァ!見たかオラァ!!
星2如きが限定ソファタッグに挑むなんて
100年はえーんだよ!!
出直して来い!!」
ハハハハハ!ハハハハハ!ハハ……
まだかよ!!ピッツァはよ!!
サザ〜ン、サザ〜ン……
……真面目な話
これからここでどう過ごせばいいのだろうか
今、俺が自分以外に信用出来るのものは
現在座ってるこのベッドだけだ
一見、頼り無さげに水面に浮いているこいつだが
不思議パワーで海には沈まないらしい
たった1畳半程度の島と見渡す限りの闇の海
それが俺のいる世界を構成する全てで
見てるだけで、何だか生きてる実感が無くなっていく
……あ、トイレもあるけど
枕に頭を落とし、寝転がってみると
夜空の満天の星々が目に入る
絶景…… って言うべきなんだろうな
波の音と心地良い潮風、浮かぶベッドに揺られて
一瞬この世界も悪くないなんて考えて見たり……
……ああ、そうだな
ここは美しい神の世界だ
もし例え僕がパイロットフィッシュだったとしても
この世界で死ねるのならば、それはそれで幸せなのかも知れない
……でも
この世界にこれから生まれてくる生命
そのほんの一欠片でも構わない
どうか、ここに僕という存在が居た事
それを覚えていて欲しい
神様は嫌いでも
僕の事は嫌いにならないで欲しい
我が巨人軍は永久に不滅です。
完。
……バリバリバリバリバリバリバリバリ
うぉい!!何だよ!!
人が折角このクソストーリーを終わらせるシメに
入ってたっつーのに!
てかマジで何、この音!? うるさっ!
音がする方向を見上げるとプロペラを勢い良く回して、ヘリが飛んで来ていた
ヘリは爆音を鳴らしながら真上まで来て
ホバリングを始めたかと思えば
ドアがスライドして中から何者かが顔を出す
「どうもー!ANGELデリバリーでーす!
ピザをお届けに参りやした!!」
キィィイイイイン
不快なハウリングと共にチャラ男の顔が
ライトアップされた
「あー!どーもー!!
ごくろーさまー!!」
「お代は頂いてますんでーー!
んじゃ投下しまーーす!!」
……えっ!?投下?
「ちょ!ちょちょちょ!」
無念にも俺の声はヘリのプロペラに掻き消され
チャラ男は問答無用で投下する
ピザを内包しているであろう箱にはパラシュートが
付いており、ユラユラと落ちて来た
「ANGELデリバリーごりよーありしたー!」
頭の悪そうな言語を残して
スライド式のドアがピシャリと閉まると
ヘリはまた爆音を唸らせて飛んでいった
ヘリなんてどーでもいい!
も、もうすぐピザが!
いや!ピッツァが食える!
パラシュートのついた箱は頭上10mの空中を
クラゲの様にフワフワと浮遊している
ピッツァ!ピッツァ!ピッツァ!ピッツァ!
ピッツァ!ピッツァ!ピッツァ!ピッツァ!
……じゃあアレは? ピッツァ!!
後少し!後少しで手がとど……
「……ああ、そうさ
その時僕は大切な事を忘れていたんだよ」
初老の男は曲がった背中を少し起こしてから
徐に煙草に火を点けて煙を吐き出す
お気に入りの椅子に座ってる彼は
今日は少しだけ腰の調子がいい様だった
過去の自分を振り返っているのだろう
暫く懐かしそうに目を細めていたが
煙草を灰皿に落とすと
短くそして何処か寂しそうに零す
「こーゆーのフラグってゆーんだよ」
それは無情にも箱に指が触れた瞬間
イタズラな風さんが横薙ぎに髪を揺らし
パラシュートをベッドから遠ざけた
箱はポチャリと近くに着水する
ガッデム!!
ファッキンサノバビッチ!!
……いやいや、ここは冷静になるべきだ
焦っても碌な事は無い
ふむ、とするとこれはまた選択肢の時間かな
現状況で有効と思われる方法は
・海に飛び込んで取りに行く
・棒的な物で引き寄せる
・諦める
早速始めるぞ!時は金なり!光陰矢の如し!
Lesson.1「海に飛び込んで取りに行く」
服を脱いでから、大きく息を吸い込む
「無限の彼方へさぁ行くぞ!」
と勢い良く海にダイブした
ガボ…… ガボ…… ゴボ……
(冷てーーー!!!
心臓が止まるーー!!)
プハッと水面に飛び出す
ハァッ…… ハァッ……
ピ、ピッツァは何処だ!?
しまった!勢い良く飛び込む必要は無かった
お陰でピッツァの位置を見失なってしまった
では無いか!
幸いグルグルと首を回すとピッツァの箱は直ぐに
目に入った
……あれ?なんかチョット遠くなってね?
!! しまった! あのピッツァ!
波に乗ってやがる!
逃がさんぞ! ピッツァ!!
平均男子高校生のクロールを舐めるなよ!
バシャバシャと近づいていくが
無情にも箱は遠ざかってゆく
待てよ!ピッツァ!!いや!ウィルソン!
そっちに行ってはいけない!!
寒さで身体が震えてきた
これ以上は……
目に海水が入ったらしい
とめどなく海水が流れ出て来て視界が歪む
ウィルソン……
僕もう無理だよ……
僕は立ち泳ぎで旅立つウィルソンを
見守る事しか出来ない
僕を見ながら去ってゆくウィルソンは
優しく微笑んでいた気がした
「ウィルソーーン!!
……ゴメン! ゴメンよウィルソン」
「でも僕はそっちにはいけないんだ
……ゴメン、ウィルソン」
平均速度の平泳ぎでベッドへ戻ると
もう一度だけウィルソンへ顔を向ける
「何も言えねぇ!」