席を譲る
「そろそろ歩くのも飽きてきたな。どっか入ろっか」
「えっ? まだ10分も歩いてない気がするけど……わかった、べるちーが言うなら近くのお店に行こう!」
たまたま近くにあったファミレスを見つけ、二人はそこに入りました。さっそくきらりんが座ろうとしたその時……
「よっこらせっ、と」
どすん、と体を椅子に投げおろすかのごとく座るべるちー。え? え?? なに、いったい何が起きたのかしら? と、きらりんはハテナマークを頭にいくつも浮かべてしまいました。
「なっ、なにやってるの?」
「疲れたから座っただけなの。どうかした?」
「彼女より先に座ってんじゃねーよ!! 男だったら女に席を譲るのが普通じゃねーのかよ?!」
おや、今回はいつものあれが早かったみたいですね。周りのお客さんが怖がっているのもお構い無しに、べるちーの首根っこをひっつかまえて無理矢理立たせるきらりん。
「あー、そうだな。じゃあ座れば?」
「なんだその態度は?! 滅ぼすぞ!!」
せっかくのランチが美味しくなくなってしまいました。しかし、きらりんはともかくべるちーは全く気にしていません。何故って? 彼の思考回路はよく把握できていませんので……
「美味しかったねご飯。ねえ、どっか行こー」
気を取り直して、きらりんは電車にのってどこかに行こうと提案しました。
座席はそこそこ空いていましたが、近くのスペースはちょうど一人ぶんしか空いていません。
「よっと」
「おい?!」
迷わずに座ったべるちーと鬼の形相で突っ込むきらりん。ここでも周りがドン引きしようがお構いなしです。
「だから彼女に譲れってんだよこの野郎!!」
「じゃここに座れば?」
「えっ?! やーん、やだー恥ずかしいー♪」
膝に座る様に言われ、形だけ恥ずかしがってみたきらりんはあっさり彼氏に従いました。さすがべるちー、彼女の扱いに慣れているみたいです。
~続く~