お家デート
「今日はどこ行くぅ?」
「ここでいい」
例のごとく、べるちーはごろりと横になりながらマネキンの様な表情でゲームに夢中です。でも、そんな無気力な彼氏でもきらりんはめげたりなんてしません。
だって、そういう野郎なんだって分かってるんですから。×ムも自分で用意しておかない様な男だというのは、とっくに思い知ってるんですよ。
「そうだね! お家デートもたまにはいいもんだよね!」
果たして何回目なのかもはや数えるのも面倒くさくなってしまいました。彼氏の無気力さ、無関心さもついにここまでの域に達してしまったらしいのでした。やれやれです。本当にやれやれとしか言えませんでした。
「しょうがないもんね、今日は曇ってるからわざわざ出かけて嫌な思いしても意味ないからね!」
「わかったなら黙ってろ、うるさくてゲームに集中できないだろうが」
思わず近くにあった別のゲーム機を鷲掴みにして、彼氏の頭めがけてぶん投げてやろうとしましたが彼女はぐっと堪えました。我慢した先に何があるのかわからないというのに。
「かまって」
「あとで」
「かまってよー。かまってかまってー」
「だからもう少し待ってろ。お前のためにクリアしようとしてるんだから」
「かまってかまってかまってー! 私はいつまで待てばいいのー?!」
「だから、こいつをクリアするまでだ。そしたら、キスでもデートでもしてやるから」
「うん、わかった。大人しくしてるね! ところで、いつになったら終わりそう?」
「少なくとも2週間、やりこみを迫られたら1ヶ月ってところだな。それまでお家デートでもしとこうか。それがいいよ」
さて、そろそろ苛ついてきたところでしょうから、今回もやっときますか。ストレスは人間をダメにしてしまいますからね、さっさと発散しましょうかね。
「あと何回お家デートさせるつもりじゃコラァ!! こっちはテメェがブス連れて歩いてるって周りにバカにされねぇ様にオシャレしてるんじゃ!! ピコピコピコピコちいせぇ画面とにらめっこしてねぇでとっとと外に連れてけやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
きらりんは最近覚えた必殺技のひとつ、アイアンクローをかましてあげました。べるちーは痛がる様子もなく、ゲームを続けています。
もしや、もしかしてもしかすると、この草食系無気力男子は痛みってものを感じていないのか? そもそも本当に人間なのか? 謎は深まるばかりでした。
このお話には伏線とか込み入った設定などはありませんので悪しからず。
~続く~