さよなら...
朝。目が覚めた。耳に違和感。ユーチューブで動画を見てるうちに寝てしまっていた。イヤホンが耳に突っ込まれたまま。
上体を起こしスリーピー状態のパソコンを叩き起こす。目を覚ましたウィンドウにはロックバンドのライブ映像が映されている。
眠い眼をこすりながら関連動画をクリック。
イヤホンから無量大数の音が流れて入って来る。
毎日がパソコンと向かい合う日々である僕にとって、激しいロックを大音量で聞いた所でなんら刺激的でなかった。
しかし------------------------------------------------------------------
ふと、胸に手を当てていた。心臓が異常に脈打っていた。恐ろしいくらい。なぜ?…。…今日は何かが違う。いつもならこのまま義務的にパソコンの前に居続けるはずだ。しかし、しかしそれをやめようとしている。そとにでてみたくなった。訳は…わからない。わからないから、怖い。だが今走り出したいと、この心臓が、自分自身が言っている。そこに心の中のもう一人が僕に問う。
「今までパソコンの前にいる事で心の安定が手に入っていたんだよ?」
「そうだ。僕はそうやって変わらない日々を送ることで心の安定を保ったんだ。まるで義務のように…」
「そうだよ。君の変わらない日々は過去の君が未来の君に義務付けたことなんだよ!あの日の君が!」
「でも、それであの日が戻ってくる訳がない、もう自分で作り出した義務をただただ遂行するだけの繰り返しは嫌なんだ!」
「それでどうするの?そとは危険がいっぱいなんだよ?そんな所をたった一人で進めるの?もう君を守ってくれる人はこの世にいないんだよ?」
「………確かに怖い。そとに出たら何が起こるかわからない。何も得られないかもしれない。あの人に守ってもらう事も出来ない…あの日を取り戻すのは絶対不可能だ。でも僕は自分自身で歩きたいんだ!たとえいつか夢破れてゴミのように死んでも構わない、この足で世界を進みたいんだ!」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・そうか・・・。もう、何も言わん・・・」
「ごめんね・・・ありがとう・・・さようなら・・・」
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心臓の鼓動がおさまるのをまっているうちにミックスリストはだいぶ進んでいた。
「ススメ!男ならば!タタカエ!男ならば!
お国のためか?愛する女のためか?家族のためか?親友のためか?違うだろ!漢ならば!」
久しぶりの感覚だった。初めてロックを聴いたときと同じような気持ちだった。とにかく、今はやりたいことがたくさん出て来た。僕はこれから一人で歩いていくと思う。
(さようなら・・・じーちゃん・・・俺がんばるよ)
僕の心臓はまた高鳴りだした。