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東方旅人形  作者: みすたー五式
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第8話 上海と花畑

遅くなりました、野を超え山超えなんとやら


今回のリクエストは七夜士郎さんとシルクさんのリクエストです。

向日葵が日光を浴びて輝く花畑の上を上海は飛んでいた。


一面向日葵だらけの中に一人の女性が居た。日傘を持った女性は一本の向日葵を見つめていた。ゆっくりと――まるで愛しい自分の娘を撫でるような感覚で花を撫でている女性は背後の気配に気づく。


「誰かしら?こんな所に?」


そう言って女性が振り向くと目の前に上海が居た。

・・・顔から約10cm位の近さで。


「―――ッ!?」


無論女性は驚いた。というか誰だって驚く。上海はそんな女性の顔を見つめながらふよふよと浮かんでいた。

驚いた女性は若干動揺していたがすぐに落ち着きを取り戻すと改めて目の前の人形を見つめた。


「貴女・・・どこかで見たことがある様な・・・。」


そう言った女性ではあるが、どこで見たのかが思い出せない。


そうしている内に上海はふよふよと花畑の奥へ進んで行く。


「あ、ちょっと待ちなさい!」


そう言って女性は上海を追いかける。雛畑を抜けて少しした所にある鈴蘭の花畑に上海は止まった。見れば自分の足元をじっと見つめている。


「どうかした・・・の?」


見てみるとそこには鈴蘭を握りしめ頭に赤いリボンを付けた女の子が寝ていた。


「しゃんはい?」

「・・・生きてるのかしら?」


そう言って頬を思いっきり引っ張る女性。


「いだだだだだだだっつ!?」

「あら生きてたの?」


酷い扱いである。


「い、いきなりなにすんのひょ!?」

「鈴蘭ねぇ〜。」

「しゃんは〜い。」

「聞けよお前等」


酷い扱いである。


「で、何してたのこんな所で?」

「ふっふっふ。よくぞ聞いてくれました!私の名前は―――――――――」

「別にそんな事は聞いてないんだけど?」

「いひゃひゃひゃひゃいふぁい!!!」

「しゃんはいーい。」

「アンタも引っ張るなー!」


便乗して女性と一緒になって頬を引っ張っていた上海に向けて怒る女の子。

両側に引っ張られた女の子の頬は赤くなっている。


「まぁ貴女が何者だろうが名前が何であろうがどうでもいいけどね。取り合えず家に来なさいな。服が土で汚れてるわよ。」


酷い人なのか優しい人なのか良く分からない女性である。

女性は上海の方を向いて聞く。日傘に隠れて口元しか見えなかったが彼女は微笑んでいた。


「(コクッ)」

「じゃあ決定ね。ついて来なさいな。」


そう言って彼女は二人を自分の家へと招いていく。

向日葵畑の真ん中に建っている小さな家。女性はそこの扉を開けて手招きする。二人は一瞬お互いの顔を見合ったがすぐに家の中へ入って行った。


「おじゃましまーす・・・。」


そう言って恐る恐ると入って行く二人。中は普通の家の内装だった。しいて言えばそこかしこに花が飾ってあるくらいだろうか。


「どうしたの?はやくいらっしゃい。」


そう言って奥にある客間みたいな所へ通される。


「待ってなさいな。今紅茶でも入れるから。」


台所へと引っ込んで行った女性を見送ると女の子は上海をジッと見つめる。


「貴女人形よね?なら私と一緒に来ない?」


突然の言葉に訳が分からない上海は唯首を傾げるだけである。その様子を見て察した女の子は詳しく説明を始めた。


「人間達に復讐するのよ!そしてこれからは私たち人形が世界を支配するわ!!」

「それは無理ねぇ〜。」


何時の間にやらお茶を持って戻って来ていた女性は柔らかな笑顔でそう言った。


「どうしてよ!?」

「ふふふ・・・貴女も時間が過ぎれば分かると思うわよ。さぁ、クッキーと紅茶をどうぞ。」


そう言って女性が差し出した紅茶を受け取ると女の子は頬を膨らませながらも紅茶を飲んだ。


「貴方は普通のコップじゃ大きいわね。これでどうかしら?」


そう言って女性が差し出したのは、木で出来た上海サイズのコップだった。


「この子が作ってくれたのよ。」


そう言って女性は家の壁と一体化している樹木を指差す。その木に対し上海はぺこりとお辞儀をする。


「あら、律儀なのね。」

「なによ、たかが木じゃない。」


女の子がそう言った途端女性の右手が女の子の頭を鷲掴みにする。


「そうよ〜あれはたかが一本の木。それでもあの子は生きているのよ〜?」

「いだだいだい痛い痛い痛い!!ごめんなさいごめんなさい!!」


あまりの痛みに女の子が涙目で謝る。すると女性はポンと手を離した。だいぶ力を込めたらしく掴まれた部分に跡が残っている。


「しゃんは〜い?」

「うぐぐぐぐ・・・。」


跡の付いた所をさする上海とうめき声をあげてテーブルに顔を突っ伏す女の子。よほど痛かったのだろう。ちなみに女性は笑顔だった。



その後は3人でクッキーを食べて話をした。主に女性による植物の話であったが。

日が傾き空が茜色に染まっている。向日葵たちの花が項垂れる時間だ。


「あら、もうこんな時間なのね。」


そう言うと女性はテーブルから立ち上がって別の部屋へと入っていった。奥からはゴソゴソズルズルと何やらよく分からない音が聞こえてくる。

そして5分ぐらいすると女性が戻って来た。


「はいこれ。お土産。」


そう言って女性はある物を手渡した。それは鈴蘭のネックレスだった。


「貴方には鈴蘭がぴったり見たいだからね、ちょうどよかったわ。それとあなたはこっち。」


そう言って上海には、向日葵の種が下げられたネックレスだった。上海の体にはちょうど良いサイズである。先程女性が部屋で作っていたのはこれだった。


「さぁ、そろそろ自分の場所に帰りましょう?」




外は丁度日が落ちる時だった。

家から出てまた別の所へふよふよと飛んで行こうとした上海は、一度振り返ると女性に向けて深いお辞儀をした。それを見ていた少女も礼を言う。


「・・・ありがとう・・・。」


頭を掴まれた事を根に持っているのかプイッと女性の方を見ないでいう女の子。だが、女性は微笑みながら


「またいらっしゃい。」


その声を背に女の子は鈴蘭のネックレスを握りしめながら、夕暮れの中を歩いていく。上海も別の方向に飛んで行った。

女性は二人が見えなくなった頃、そっと家の扉を閉めた。
























余談であるが上海が持っていた向日葵のネックレスはお腹を空かせて死にかけていたネズミに与えたという。


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