アザタ村 Ⅰ
なんか重苦しい空気になってしまった。
ミサは黙ってしまったし、俺としてもどう話しかけていいか分からない。
どうしたものかと思案する。
とにかく子供との付き合いがまったくない俺にとってこういうのは苦手だ。
どんよりとした重い空気の中を走ること4時間。俺たちはアザタ村に着いた。
「ミサ、とりあえず着いたぞ。ここがアザタ村だ」
「……ん?…あ、着いたの?」
どうやら寝てたようだ……。
「あぁ、ここがそうだ」
門を通り、通りを進むと女性から声をかけられた。
「あら、一年ぶりね!元気にしてた? あら、そちらの女の子は?娘さん……じゃないみたいね」
「あ、あぁこいつは部下からの預かり者だ」
女性はミサのほうを向くと話しかけた。
「初めまして、私はリアナ。リアナおばちゃんとでも呼んでね」
「リアナ……さん?」
「そんな丁寧に言わなくていいよ。リアナおばちゃんで」
「リアナ……おばちゃん?」
「はい、よく出来ました」
そういうとミサの髪をなでた。
リアナはこっちに再び向き直ると口を開いた。
「そういえばダイゴ君。あなたいつまでこっちに居るの?」
「まだ決めてないが、早ければ明日か明後日。長くて一週間は居ない」
彼女は思案するとこう言った。
「明々後日って迄伸ばせないかしら。今日から冬の精霊祭が始まるの。女の子も居るのだしせっかくだから見ていかない?」
リアナの申し出は俺を悩ませた。
…ミサに見せてやりたいとも思うけどな。一日も早く霊園につきたい気持ちもある。
仕方がない、急がず行くか。
「そうだな、4日ぐらい此処に滞在するよ。リアナのところに泊まればいいよな。
あと、機械の修理頼める人いるか?」
「うーん、…それならゲンジおじいさんが出来るかも。あの人が今農具とかの修理を全部引き受けてくれているし、元々は整備兵って人だったらしいから」
「そうか、ありがとう」
礼を言い、俺は爺さんの家へとバギーを進める。
「ゲンジ爺さん居るか?」
「ゲンジ爺さんっ!」
「じゃかあしいわぁ!!」
奥の方から爺さんの一喝が飛んできた。
「ヒャッ!」ミサが小さな悲鳴を上げる。
奥から体は小さいがクマのような威圧感のある爺さんが一人出てきた。
「何の用だ?ここには何もないぞ」
「バギーの点検と修理をな。これからなかなか厳しいところへ行くんでな、そのために」
「……ふん。大方行くところと言えば霊園じゃろう。そう言えば、あそこに小屋を建てた物好きがいたな・・・・・・」
「それは俺さ。あそこには大切なものがいっぱいあるからな・・・・・・」
ゲンジ爺さんはそれを聞くと、フンッと鼻を鳴らした。
「へっ、まるで女の子じゃねえか。全く最近の若い野郎どもは」
何処かいらいらしながらバギーの点検は進んでいく。
「……重大な問題は無いな。明日か明後日ぐらいには直ってるだろう」
「すまんな、よろしく頼むよ」
ミサと手をつなぎながら坂道をてくてくと降りていく。
夕焼けに染まる山脈は遠目ながら美しい。