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王様の羽根

作者: 石動 友
掲載日:2012/04/22

 2人は仲の良い兄妹です。

 ある日、2人が公園で遊んでいると、空からとても綺麗な羽根が落ちてきました。

 それは見たこともない模様をした大きな羽根で、妹はよく見ようとその羽根を手に取りました。

 すると、なんと妹の体がふわふわと宙に浮き始めたではありませんか。

「きゃーー! 助けてお兄ちゃん」

 お兄ちゃんは慌てて妹の手を掴つかみました。しかしお兄ちゃんも一緒に浮いてしまいます。

「わーーー!」

 2人の体はどんどん空に昇ってきます。

 どうしていいか分からず、ただ真上に昇っていくだけの2人でしたが、やがて妹は風に乗って進めることに気付きました。

「お兄ちゃん、私たち鳥みたいに飛べるよ。ほら」

 だんだんと飛び方が分かってきた妹は、すいすいと空を飛びはじめました。

「わぁ、すごいすごい」

 妹と手を握っているお兄ちゃんも、一緒になって飛んでいます。

 初めは怖がっていた2人ですが、すっかり飛ぶのが楽しくなりました。

「わーーい」

「この羽根のおかげなのかな?」

 妹は握ったままの綺麗な羽根を見ました。

「おや、人が飛ぶなんて珍しいな」

 飛んでいる2人に、カラスが話しかけてきました。

「まぁ素敵。カラスがしゃべってるわ。こんにちは」

「おや、それは王様の羽根じゃないか」

 カラスは妹が握っている羽根を見て驚きました。

「王様の羽根?」

 お兄ちゃんがカラスに聞き返しました。

「そう、鳥の王様の羽根さ。王様にはすごい力があってな、どんな動物も羽根1枚持つだけで、鳥のように飛べて、鳥の言葉も分かるようになるのさ」

 カラスの話を聞いて、お兄ちゃんも驚きました。

「へぇー、そんな鳥がいたなんて知らなかったよ」

「素敵な鳥ね、会ってみたいわ」

「王様が人の住んでる場所に来ることなんてほとんどないよ。だから君たちはとてもラッキーだ。その羽根は大事にすることだね」

 そう言うと、カラスは飛び去っていきました。

「どうやら僕たちは、とてもすごい物を手に入れたようだぞ」

「この羽根があれば、いつでもお空を飛ぶことができるのね」

 2人は大喜びして、空を飛んで回りました。

 空の上から町を見ると、いつも生活しているはずなのに、まるで別の町のように感じられます。

 自分たちの家も、学校も、公園も、地上から見るのとは違って見えました。

「すごいね。楽しいね」

 空から見る景色は、今まで見たことがないものばかりで、2人は何もかもが楽しくてしかたありませんでした。

 やがて妹は、手に持っている羽根の持ち主である、鳥の王様にも興味が湧いてきました。

「こんなに羽根が美しいのだから、王様の姿はとても美しいんだろうな」

 そこで妹はお兄ちゃんに言いました。

「ねぇ、お兄ちゃん。鳥の王様をさがそうよ」

 2人は近くの公園で羽根を拾いました。ひょっとしたら、鳥の王様はまだ近くにいるのかもしれません。

「よし、さがしにいこう」

 2人は町の周り飛び回って、鳥の王様をさがすことにしました。

 空を見て回り、森や山ものぞきました。しかし、鳥の王様は見つかりません。

「ねぇねぇ、鳥の王様を見なかった?」

 鳥を見つけるたびに、2人は聞きました。しかし、返ってくる答えは「いや、見てないね」ばかりでした。

 しかし、ある鳥が教えてくれました。

「王様はいつも雲の上を飛んでいるんだ。だから人に気付かれないのさ」

 それを聞いた2人は、さっそく雲の上に行ってみました。

 するとそこは、まるで別世界のようでした。

 空一面を雲がおおい、まるで雲が地面のようです。

「まるで歩いて行けそうだね」

 2人は歩くようにして雲を進みました。

 そして雲の上から地上をのぞいてみると、本で読んだとおり、丸くなっていました。

「うわー、地球って本当に丸いんだ」

「本当だ。不思議だね」

 2人は不思議な気持ちになりながら、雲を進みました。

 でも、けっきょく鳥の王様は見つかりませんでした。

 2人はそれからも王様をさがして回りましたが、やはり王様は見つかりません。そのうちすっかり日も暮れてしまい、とうとう2人は羽根を見つけた公園まで戻ってきました。

「やっぱり、もうどこかへ行ってしまったんだよ」

 王様が見つからず、すっかり元気をなくしてベンチに座っている妹に、お兄ちゃんは言いました。

「もうあきらめて、家へ帰ろう」

 お兄ちゃんは手を出しました。しかし妹はその手を握ろうとしません。

「いや、まだ帰りたくない。王様をさがすの」

「もう暗くなるよ。あきらめよう」

「いやだ! さがす!」

 妹はすっかり駄々をこねてしまいました。

「ダメだよ、これ以上遅いとお母さんが心配しちゃうだろ」

「いやだ!!」

 とうとう妹は1人で空に飛んでしまいました。

「こ……こらっ。戻ってこい」

「お兄ちゃんは1人で帰ればいい、私はまだ王様をさがすの」

 そう言って妹はどこかへ行こうとしましたが、そこへ鳥の群れがやってきました。

「おまえだな、王様をさがしているという奴は。人のくせに生意気なんだよ!」

 鳥たちはいきなり妹をクチバシでつついたり、羽根で叩いたりしました。

「きゃーーー」

 鳥たちに襲われた妹は、慌ててお兄ちゃんの所へ逃げました。

 しかし鳥たちは追いかけてきます。

「おまえら、妹に何をする!!」

 兄ちゃんは妹をかばいながら、鳥たちと戦いましたが、鳥たちの数が多くて、太刀打ちできません。

「助けてーーー!」

 妹が泣きながら叫んだその時です。突然鳥たちがみんな逃げ出しました。

 何が起こったのか分からず、2人が顔を上げると、そこには1羽の鳥がいました。

「……鳥の王様だ」

 そうです。羽根の持ち主である、鳥の王様がそこにいたのです。

 鳥の王様はとても大きく、それはそれは美しい姿をしていました。

 王様は鳥たちがいなくなったのを見届けると、何事もなかったかのように飛んでいきました。

 2人は鳥の王様が見えなくなるまで、夕焼け空を見つめていました。

「ねぇ、王様は何て言ったの?」

 お兄ちゃんが妹に尋ねると、妹は「あっ」と言いました。

「羽根がなくなってる……」

 どうやら、鳥に襲われた時、手から離してまったようです。

 辺りを見回しても、もう羽根はどこにもありませんでした。

「あ~~あ」

 妹はとても残念そうでした。

「しかたないよ。でも、たくさん空を飛べたし、鳥の王様にも会えたし、良かったね」

「……うん。楽しかったね」

 妹はかすり傷だらけになっていましたが、元気に笑いました。

 お兄ちゃんはそんな妹の頭を優しくなでて言いました。

「さぁ、家に帰ろう」

 2人はまた手を繋ぎました。でも、今度はもう飛ぶことはありません。

 兄妹は歩いて家まで帰りました。

 鳥の王様の羽根は、風にゆられて、別の誰かの所へ飛んでいきます。

 ひょっとしたら、今度は君の所へ飛んでくるかもしれませんね。



おしまい

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