王様の羽根
2人は仲の良い兄妹です。
ある日、2人が公園で遊んでいると、空からとても綺麗な羽根が落ちてきました。
それは見たこともない模様をした大きな羽根で、妹はよく見ようとその羽根を手に取りました。
すると、なんと妹の体がふわふわと宙に浮き始めたではありませんか。
「きゃーー! 助けてお兄ちゃん」
お兄ちゃんは慌てて妹の手を掴つかみました。しかしお兄ちゃんも一緒に浮いてしまいます。
「わーーー!」
2人の体はどんどん空に昇ってきます。
どうしていいか分からず、ただ真上に昇っていくだけの2人でしたが、やがて妹は風に乗って進めることに気付きました。
「お兄ちゃん、私たち鳥みたいに飛べるよ。ほら」
だんだんと飛び方が分かってきた妹は、すいすいと空を飛びはじめました。
「わぁ、すごいすごい」
妹と手を握っているお兄ちゃんも、一緒になって飛んでいます。
初めは怖がっていた2人ですが、すっかり飛ぶのが楽しくなりました。
「わーーい」
「この羽根のおかげなのかな?」
妹は握ったままの綺麗な羽根を見ました。
「おや、人が飛ぶなんて珍しいな」
飛んでいる2人に、カラスが話しかけてきました。
「まぁ素敵。カラスがしゃべってるわ。こんにちは」
「おや、それは王様の羽根じゃないか」
カラスは妹が握っている羽根を見て驚きました。
「王様の羽根?」
お兄ちゃんがカラスに聞き返しました。
「そう、鳥の王様の羽根さ。王様にはすごい力があってな、どんな動物も羽根1枚持つだけで、鳥のように飛べて、鳥の言葉も分かるようになるのさ」
カラスの話を聞いて、お兄ちゃんも驚きました。
「へぇー、そんな鳥がいたなんて知らなかったよ」
「素敵な鳥ね、会ってみたいわ」
「王様が人の住んでる場所に来ることなんてほとんどないよ。だから君たちはとてもラッキーだ。その羽根は大事にすることだね」
そう言うと、カラスは飛び去っていきました。
「どうやら僕たちは、とてもすごい物を手に入れたようだぞ」
「この羽根があれば、いつでもお空を飛ぶことができるのね」
2人は大喜びして、空を飛んで回りました。
空の上から町を見ると、いつも生活しているはずなのに、まるで別の町のように感じられます。
自分たちの家も、学校も、公園も、地上から見るのとは違って見えました。
「すごいね。楽しいね」
空から見る景色は、今まで見たことがないものばかりで、2人は何もかもが楽しくてしかたありませんでした。
やがて妹は、手に持っている羽根の持ち主である、鳥の王様にも興味が湧いてきました。
「こんなに羽根が美しいのだから、王様の姿はとても美しいんだろうな」
そこで妹はお兄ちゃんに言いました。
「ねぇ、お兄ちゃん。鳥の王様をさがそうよ」
2人は近くの公園で羽根を拾いました。ひょっとしたら、鳥の王様はまだ近くにいるのかもしれません。
「よし、さがしにいこう」
2人は町の周り飛び回って、鳥の王様をさがすことにしました。
空を見て回り、森や山ものぞきました。しかし、鳥の王様は見つかりません。
「ねぇねぇ、鳥の王様を見なかった?」
鳥を見つけるたびに、2人は聞きました。しかし、返ってくる答えは「いや、見てないね」ばかりでした。
しかし、ある鳥が教えてくれました。
「王様はいつも雲の上を飛んでいるんだ。だから人に気付かれないのさ」
それを聞いた2人は、さっそく雲の上に行ってみました。
するとそこは、まるで別世界のようでした。
空一面を雲がおおい、まるで雲が地面のようです。
「まるで歩いて行けそうだね」
2人は歩くようにして雲を進みました。
そして雲の上から地上をのぞいてみると、本で読んだとおり、丸くなっていました。
「うわー、地球って本当に丸いんだ」
「本当だ。不思議だね」
2人は不思議な気持ちになりながら、雲を進みました。
でも、けっきょく鳥の王様は見つかりませんでした。
2人はそれからも王様をさがして回りましたが、やはり王様は見つかりません。そのうちすっかり日も暮れてしまい、とうとう2人は羽根を見つけた公園まで戻ってきました。
「やっぱり、もうどこかへ行ってしまったんだよ」
王様が見つからず、すっかり元気をなくしてベンチに座っている妹に、お兄ちゃんは言いました。
「もうあきらめて、家へ帰ろう」
お兄ちゃんは手を出しました。しかし妹はその手を握ろうとしません。
「いや、まだ帰りたくない。王様をさがすの」
「もう暗くなるよ。あきらめよう」
「いやだ! さがす!」
妹はすっかり駄々をこねてしまいました。
「ダメだよ、これ以上遅いとお母さんが心配しちゃうだろ」
「いやだ!!」
とうとう妹は1人で空に飛んでしまいました。
「こ……こらっ。戻ってこい」
「お兄ちゃんは1人で帰ればいい、私はまだ王様をさがすの」
そう言って妹はどこかへ行こうとしましたが、そこへ鳥の群れがやってきました。
「おまえだな、王様をさがしているという奴は。人のくせに生意気なんだよ!」
鳥たちはいきなり妹をクチバシでつついたり、羽根で叩いたりしました。
「きゃーーー」
鳥たちに襲われた妹は、慌ててお兄ちゃんの所へ逃げました。
しかし鳥たちは追いかけてきます。
「おまえら、妹に何をする!!」
兄ちゃんは妹をかばいながら、鳥たちと戦いましたが、鳥たちの数が多くて、太刀打ちできません。
「助けてーーー!」
妹が泣きながら叫んだその時です。突然鳥たちがみんな逃げ出しました。
何が起こったのか分からず、2人が顔を上げると、そこには1羽の鳥がいました。
「……鳥の王様だ」
そうです。羽根の持ち主である、鳥の王様がそこにいたのです。
鳥の王様はとても大きく、それはそれは美しい姿をしていました。
王様は鳥たちがいなくなったのを見届けると、何事もなかったかのように飛んでいきました。
2人は鳥の王様が見えなくなるまで、夕焼け空を見つめていました。
「ねぇ、王様は何て言ったの?」
お兄ちゃんが妹に尋ねると、妹は「あっ」と言いました。
「羽根がなくなってる……」
どうやら、鳥に襲われた時、手から離してまったようです。
辺りを見回しても、もう羽根はどこにもありませんでした。
「あ~~あ」
妹はとても残念そうでした。
「しかたないよ。でも、たくさん空を飛べたし、鳥の王様にも会えたし、良かったね」
「……うん。楽しかったね」
妹はかすり傷だらけになっていましたが、元気に笑いました。
お兄ちゃんはそんな妹の頭を優しくなでて言いました。
「さぁ、家に帰ろう」
2人はまた手を繋ぎました。でも、今度はもう飛ぶことはありません。
兄妹は歩いて家まで帰りました。
鳥の王様の羽根は、風にゆられて、別の誰かの所へ飛んでいきます。
ひょっとしたら、今度は君の所へ飛んでくるかもしれませんね。
おしまい




