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日日是好日

作者: 林代音臣
掲載日:2026/03/12

 数日前私は、しっかり掴んでいた大切なものを手放した。

 大切なものはフワフワと風船のように、ゆっくりと飛んで私の手が届かないところへ行った。


 私は、大切なものを失ったら……また前のように、暗闇の底に落ちてしまうと思ってた。

 だから必死になって腕に力を入れて……大切なものを痛いほど握って、苦しめてしまった。


 しかし、いざ手放してみると……私は地上に立ったままだった。

 振り返ると暗闇の穴は遠くなってて。

 私はもう、穴の縁には立っていなかった。

 時に大切なものに引っ張ってもらって、時に自分の足でぎこちなく歩いて。

 そうして気付かぬうちに、私は少し明るい場所にやって来ていた。


 見えなかったものが見えるようになっていた。

 周りの人は私を支えてくれて、愛してくれていた。

 外の世界は思い込んでいたほど薄汚れていなくて、綺麗だった。

 見ず知らずの私のことを助けようとしてくれる人がたくさんいた。

 世の中には確かに苦しみや絶望もたくさんあるけど…喜びや希望も、同じくらい落ちていた。


 大切なものが、遠く離れてしまった。

 けれど、大切なものが残してくれたあったかい灯が、私の心の中で優しく燃えていた。


 今日は鏡に映った自分を見て、くたびれてるな、老けたなって思ってしまいそうになった。

 でも……大切なものが隣にいたら、きっとそうは言わないから。

 鏡をもう一度まっすぐ見る。

 うん、良いじゃないか。


 綺麗なものがたくさん見たいな。

 楽しいこといっぱいしたい。

 美味しいものだってたくさん食べたい。

 少し遠くへ行ってみたい。

 人と出会って話してみたい。


 ああ、私変わったな。

 私、すごく幸せ者だな。

 心の中がふわりとあったかい。

 そりゃ、たまに灯が弱まることもある……でも、この先消えることは無い。


 いっぱいごめんね。いっぱいいっぱいありがとう。

 私は今日も、まだまだぎこちない足取りで、でも前より真っ直ぐ立っているのです。

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