お犬様
はじめてのホラージャンルに挑戦です。
ホラーと呼べる作品なのかどうか。
人間に対しての悪意や、不快な表現が多少含まれる作品になりますので、ご了承の上、お読みください。
残虐なシーンはないです。
チュンチュン…
鳥のさえずり。
ワンワンッ
犬の鳴き声。
ん…朝か…。僕はいつも通り、ベッドで目覚める。
昨日は夜ふかししてゲームをやりすぎてしまったので、まだ少し眠い。
でも、朝ごはん食べないと。朝ごはんを食べて、歯を磨いて、顔を洗う。そして、服を着替えて、学校に行く。いつも行っている学校だ。門の前で立ち止まり、まっすぐにピンと手を伸ばしてお辞儀をする。
「おはようございます」
きちんといつも通り挨拶をする。挨拶は大事だからだ。
──ガシャン!
門の横の壁に埋め込まれている、自動販売機からコーヒーが落ちてきた。今日のコーヒーは微糖だった。僕は朝はホントは無糖がいい。でも仕方ない。
コーヒーを飲みながら校舎に入る。校舎と言うべきか、強制訓練所と言うべきか…
ここには、およそ100人くらいの生徒がいる。と思う。思うというのは、自分のクラス以外のことはほとんどわからないからだ。あと、人数は常に変動している。
ここに来ている限り、生活はできる。そしてご飯も食べれる。あと生きていける。
僕が入った教室には20人の人がいた。男女10人ずつ
が、男5女5の交互に学習机のイスに座っている。名前は…知らない。
「はい、みなさん!おはようだワン!今日も元気にやってるかワン」
このワンワン言っているやつが教官だ。ちなみに顔は犬である。
「おはようございます!」
「声がちと小さいワン。もっとワンダフルにお願いしますワン」
「おはようございますっ!!」
「まぁ、いいワン。じゃあ…順番に点呼するワン」
1番端から順番に番号を言っていく。
「じゃあ…今日の1限目は歴史だワン。教科書の64ページを開くワン。えーと、6番の君、読むワン」
「はい。第3章、人間の残虐さ、愚かさについて。人間はとても残虐です。自分達が生きていく最低限のことでは飽き足らず、必要以上に生き物を殺します。生き物だけでなく植物、森林も無駄に破壊します。そして、必要以上に消費し、廃棄していった結果、人間同士で奪い合い、争い、殺し合いをしました」
「はい、人間同士が殺し合いをして、助けてくれたのは誰ワン?7番」
「はい。お犬様です」
「よろしい。次続き、8番」
「はい。人間はとても愚かな生き物です。殺し合いをしていく中で、とても危険な生物兵器を使いました。それは人間のDNAに直接干渉し、遺伝子操作を強制的にしてしまうものでした。それによって、人間は世界人類の90%が死にました。その生物兵器は人間以外の生物にも作用しました」
「はい、そこでいいワン。生物兵器の特殊作用によって、僕たちは素晴らしい体と、頭脳を手にしたワン。はい、続きを9番」
「はい。そして、我々は弱体化した人間を支配し、それを使役することにしました。我々はとても寛大なので、人間を傷めつけたり、鎖につないで拘束したりはしません。狭い場所に閉じ込めたり、見せ物にすることもしません。食事をきちんと与え、そして教育も施します」
「はい、お犬様はとても心が広く、自分達が受けた屈辱的な行為すべてを許したわけだワン。はい、続き10番ね」
延々とお犬様の教科書を読まされる。そう、僕がいるこの世界は、完全に狂っている。人間が淘汰され、人間以外の生物、特に犬が権力を持った世界なのだ。
「はい。人間はそうやって生かされ、我々の管理のもと、日々を過ごしています。人間の生活は常に監視され、ワンチューブでライブ配信されています。配信中もリアルタイムで我々からリクエストができます。リクエスト参加の場合はアカウント登録と1回につき、100ワン円が必要です」
徐々に僕の番が近づいている。さっきコーヒーを飲んでしまったからトイレにいきたくなっている。
「教官!トイレに行きたいです!」
「待てワン」
「え…」
「待てと言ってるワン。お前ら人間は、よく僕たちにそう言ってたらしいワンね。はい次11番」
「はい。人間は見せ物としてはとても面白い生き物です。喜び、怒り、哀しみ、楽しみ、それ以外にも様々な感情を持ち、かつてしていたように自分の欲のために騙したり、逆に見返りを求めず善行を行う種類もいます」
早く終わってくれ、休憩時間になってくれ。
「よし、次読み終わったら休憩にするかワン。じゃあ15番」
僕が急に呼ばれた。
「はい…えーと。人間を飼うときは許可が必要です。とても弱くなったとはいえ、中には多少知恵が残っている種類もあるため、危険なときは処置が必要になります。あー、教官!すみません」
「待てといったワン。はい、まだ続きあるワン」
もう無理だ…
「シロ!お願いだ!」
教官が鬼のような形相で睨んだ。
「その呼び名は禁じられているワン」
はっ…
あれ…
ここはどこだろう。何かものすごく嫌な夢を見ていた気がする。
あ、トイレトイレ、もれちゃう。すぐ用をたして、また床につく。まだ朝早いもんね。
ワンッ!ワンワンッ!
なんか庭でシロが鳴いている。ご近所さんが散歩に連れている犬に吠えてるのかな?
ワンッ!
ちょっとうるさいな…まだ空は薄暗いけど、ちょっと様子見に行くか。昨日夜ふかししてまだ眠いんだけどな。
ワンワンッ!ワンッ!
「シロっ!少しうるさいよ!静かにするんだ!」
シロの鳴き声がピタリと止んだ。そして、ゆっくりと口をあける。
「おまえこそ、静かにしろ」
おわり




