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イベントの真実

 ローズはそれから十二時間以上眠った。


「そういえば、まともな物は何も食べていなかったなぁ」


 ローズは立ち上がり、空腹を満たす為にリビングへ向かう。


 すると珍しく父親が帰って来ていた。


「パパ、どうしたの? 帰って来るなら言ってよ。料理を作ってあげたかったのに…………」


 ローズは笑いながら言うが、父の表情は暗かった。


「ローズ、突然、帰って来てすまない。それに時間が無いし、ちょっと信じられないような話があるんだ……」


 父は少し言いづらそうだった。


 もし、一緒に女性を連れてきたら、再婚の話かも、とローズは予想が出来ただろう。


 しかし、父の隣にいたのは屈強な男だった。


「まずはこちらの方を紹介しよう。こちらはアメリカ軍特別外星人対策部、及び地球防衛軍、連合宇宙艦隊、参謀部所属のオルティス大佐だ」


 紹介されたオルティスが頭を下げる。


「えっ? アメリカ軍は分かったけど、その後になんて言ったの?」


 ローズは別に聞き漏らしていない。

 あまりに冗談のような単語が並んでいたので、信じられなかった。


「ご紹介に預かったオルティスです。ミス・マスグローブ(ローズの姓)、これから私がする話は信じられないかもしれませんが……」


 そう切り出し、オルティスはここへ来た理由を説明し始める。


「あなたには宇宙艦隊の分艦隊司令官として銀河連邦と戦って頂きたい」


「???」


 ローズは何を言われているのか分からなかった。


「これを見てください」


 オルティスは持って来たノートパソコンを操作し、映像を見せる。


 そこには宇宙空間で行われる艦隊戦が映っていた。


「何かの映画ですか?」


「これは現実なんです」


 オルティスは説明を続ける。


 そして、ローズは映画のような話を聞くことになった。

 現在、地球は銀河連邦から生存を賭けた勝負を仕掛けていることを知る。

 その内容が実際の宇宙空間で行う『艦隊戦ゲーム』なのだ。


「『銀河大戦』は実際に宇宙で戦う際の司令官を選別する為に作られたってことですか?」


 ローズの言葉に対して、オルティス大佐は「そうです」と告げた。


「まだ信じられないでしょう。これを見てください」


「!!?」


 オルティスが提示したのはオーバーテクノロジーのアイテムの数々だった。


 その中には映像に質量を与える、なんてとんでもない技術もあり、それが地球の技術では不可能なことをローズはすぐに理解する。


(※銀河連邦の詳細については『ペスカトーレ~銀河連邦に挑む者の序章~』参照)


「我々が生き残る為には銀河連邦の、宇宙の覇者の仕掛けて来たゲームに勝つしかないんです。その為に力を貸してくれませんか?」


 オルティスは心配そうに言う。

 彼は内心で一般人に『人類存亡の為、戦ってくれ』と言っても快諾されるとは思っていなかった。


「良いですよ」


 しかし、ローズは二つ返事で人類の為に戦うことを承諾した。


「本当ですか?」


 オルティスは驚き、確認する。


「だって、宇宙空間で本物の艦隊を指揮して戦えるなんて、すっごくワクワクするじゃないですか!」


 ローズは興奮気味に言う。


 ローズの父とオルティスは顔を見合わせた。


「しかもあのシンと一緒に戦えるなんて熱い展開です! これはあれですよ。映画とかアニメである敵だった者同士が強敵を前にして、共闘するやつですよね!」


 オルティスは困惑する。

 ローズの父は苦笑した。


「オルティス大佐、説明したとおりでしょ? うちの娘は楽しそうと思ったら、首を突っ込む性格なんです」


「パパ、私のことをオルティス大佐にどんな風に説明したの?」


 ローズがジト目で父を見ると咳払いをする。


「いいか、ローズ」


「うん?」


「君はいつも通り自分の好きなようにやって来なさい。人類全体のことなんて考えなくていい。昔した星の光の話、覚えているかな?」


「うん、覚えてる。夜空の星はもう本当は消えているかも、って話でしょ」


「そうだ。星にだって寿命がある。人類だけが永遠に繫栄できる道理はない。もし、人類代表が負けて、我らが滅ぶなら、ここが人類の限界点だっただけの話だよ」


「そうかもね。でも、こんな面白そうなお祭りを今回だけで終わらせたくないよ。銀河連邦に認められて、宇宙を知りたい!」


 ローズは子供の頃に夢見た『銀河を旅する』という願いが叶う可能性に心が躍っていた。


「それではなるべく早く出発したいと考えています。準備にどれだけかかりますか? 正直、時間が惜しいのが現状でして…………」


「四十秒で支度します!」


「なんと?」


 オルティスは驚き、ローズの父を見た。


「決めたら、すぐに実行する。娘はこういう性格なんです」


 ロースが立ち上がり、自分の部屋を向かった。


 そこで一旦、立ち止まる。


「すいません。やっぱり四十秒は格好つけすぎました。シャワーとかも浴びたいので四十分頂けますか?」


 ローズの言葉にローズの父とオルティスは笑った。


 約束通りローズは四十分で全ての準備を済ませる。


「それじゃ、パパ、行ってくるね」


 ローズは父にハグをした。


「お前らしくやりなさい。オルティス大佐、娘のことを頼みます」


「分かっています」


 ローズはオルティスと共に軍用車に乗り込んだ。

 軍用車は走り出す。


「それでこれからはどうするんですか? どこかの宇宙軍基地から宇宙(そら)へ行くんですか?」


「いいえ、まずは空港へ向かいます」


「空港?」


「そして、ジャパンへ向かいます。今回、宇宙艦隊の司令長官を務めるシン氏、そして、あなたと同じく分艦隊の司令官を務めるペスカトーレ氏、両者とも日本人なので、お二人と合流してから宇宙へ向かいます」


「二人とも日本人だったんですね。私、ジャパニーズアニメ大好きなんです。二人はどうなんですか?」


 ローズの質問に対して、オルティスは即答できなかった。


「どうなんでしょう。そういった情報は聞いていません。二人のプロフィールをご覧になりますか?」


「ぜひ」とローズが言うとオルティスは数枚の書類を渡した。


「ペスカトーレ…………は女性の自衛官だったんだ。『ツリノリカ』さん、か。釣り、だからイタリア語でペスカトーレ……なんだね。どうせなら、フィッシャーにすれば良かったのに。あの艦隊運用はフィッシャーを名乗る資格があると思うだけどなぁ。そう思いません、オルティスさん?」


「すいません、意味が分からないのですが…………」


「まぁ、そうですよね。そして、この人がシン…………『ブンノマサト』さん。こっちの人は男性なんだ。プロフィールを見る限り、特別なところは無いけれど……ああ、早く会いたい。それに宇宙に行きたい。戦いたい!」


 ローズには人類を救う使命感なんて無かった。


 ランバルと共闘し、強敵を打倒する。

 そんなイベントを楽しむことに心を躍らせていた。

読んで頂き、ありがとうございます。

中途半端な形ではありますが、一つ目の序章はこれで完結となります。

時期は未定とさせて頂きますが、次は本編を開始します。

もし興味を持って頂けたら、またよろしくお願いします。

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