ロクでもない戯れ
「ネコ!お前らも食え!!」
「ウニャー!!!!」
俺は裏路地で猫を相手に大盤振る舞いしていた。
余った丸焼きの晩餐会である。
腹をすかせた猫たちは、我先にと肉を奪い合っていた。
この世界の猫たちは可愛い。毛色、瞳の色が日本よりバリエーション豊かで、心なしか耳も大きい。
日頃餌をやってるおかげか、俺に対しては警戒心も薄く、撫でさせてくれる猫も多い。
ここは大通り化から2本ほど入った、日の入りにくい裏裏路地である。
ここら一体は猫の群生地だ。それはもう一方で、ネズミが多いことも表している。ネズミ対策に猫を飼う家が多く、それにともない野良化した猫もたくさんいる。
この辺にまとまった飯をもってくれば、このように手軽に人気者の気分を味わうことができるのだ。俺のお気に入りだった。
「おうおう、なんだなんだ?たりねーってか?しょうがねえな~ちょっとまってろよ」
鶏にあぶれた猫たちが恨めしそうにこっちをみるもんだから、俺はしょうがなく近所の商店に入った。
「おじさん、猫缶あるかい?」
「あるよ」
「あるだけくれよ」
「全部かい?払えんの?」
「ほれ」
俺はカバンから、今日の稼ぎの入った封筒を取り出して、商店のジジイに見せびらかした。
「こんな通りであんま金を見せびらかすもんじゃねーよ」
「あいあい、気をつけるよ。ほんじゃね」
猫缶を受けとると、俺は猫道へと舞い戻る。
後をつける人影に、俺は気づいていなかった。
* * * *
「ふ~やれやれ。こりゃ一仕事だ」
猫缶を開けては開け、開けては開けの作業を何度繰り返しただろう。
すべての猫缶を展開し終わり、むさぼり食う猫を、俺はしゃがみ込んで眺めていた。
うーん愛くるしい。
俺の猫好きは、前世から2代に渡る筋金入りの愛好だ。
これほどまでに愛しているのに、なんという悲劇か、前世の俺は猫アレルギーだった。
近づくと目が痒くなるのだ。
その反動がますます俺をネコ好きにしたのかもしれない。
ここいらの猫もだいぶ見覚えのある猫が増えてきた。
怪我だらけのデカい黒猫。珍しい朱色の猫。毛並みも眼も琥珀色の猫。
そして白毛に赤と緑のオッドアイの猫。この猫は俺の中でイタリアと呼んでいる。
ん?あの銀毛の猫、どこかで見たような…。
なんだっけ、と記憶の糸を辿っていたときだった。
ゴイン!
俺の世界に火花が散った。
な、なんだ?何が起こった!?
猫たちが驚き飛び退る。
足元に影が差したと思ったら、背中を強く押されて…
どうやら俺は、突き飛ばされ、頭を打ったらしい。
誰に?
俺が頭をさすりながら、体を起こすと、何者かが角を曲がって走り去るところだった。
「え?何?あら手のピンポンダッシュ?」
と、自体が飲み込めていない俺だったが。
違和感に気づき、次の瞬間すべてを理解した。
ない。
さっきまでかけてたものが。
「あんにゃろ、バッグか!」
気づくやいなや走りだす。
走り去った人影を追いかけて。
「返せ!!俺の金!!!!!!」
バッグの中には、まだまだ残ってる、今日の稼ぎが入っていた。
ということで4話です。
猫回。瀬文も猫アレルギーなので猫はあまり近づけません。撫でるくらいなら大丈夫ですが、飼うのはむりですね。世の中には、猫アレルギーの薬を飲みながら猫を飼う愛好家もいるらしいですが、見上げたものです。
次話も明日13時更新です!
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どのくらい嬉しいかというと、たくさんの猫に集られてるときくらいです!次話もよろしくお願いします。