金の匂い
「へいらっしゃい〜!今日はタマネギが安いよ〜!暗黒大陸で品種改良された甘みが強くて涙が出ない!イチオシだよ〜!そこの奥さん!さあ見てらっしゃい!」
ということで八百屋である。八百屋はいいよね。いつも元気でさ。
さてさて。
お目当てのニンジンは…と。
お、あったった。
3本入りで180ルピア。1本60ルピアか。安いもんだ。
じゃ、お会計と…
「ちょうどお預かりね。はい、まいどあり~」
「さーて帰るか~」
人参をカバンにしまい、店を出ようとした俺だったが、ふとあるところで目が止まった。
まぎれもない、それは大根だった。
まるまる太った立派な大根だ。だがそうじゃない。
大根がほしいわけじゃない。
むしろ大根はいらないさ。
だって今日の俺は、ニンジンを大根にできるんだから。
俺が注目したのは、
「大根一本、200ルピア…?」
値段である。
このとき俺の脳裏を走ったのは、山吹色の閃光。
そしてジャラジャラと金屬のぶつかる音、バサバサと紙の擦れる音。
俺は直感した。
これは。
金の!!!匂い!!!!!!
その芳醇な香りに、俺の眠気はすべて吹き飛び、スーパーコンピュータのごとく脳はフル回転。算盤を弾いた。
そして俺は急いで店を飛び出すと、近隣の八百屋を数件回った。
そしてある確信を得た。
ほどなくして最初の八百屋に戻ってくると、俺は大将に詰め寄った。
「おじさん、つかぬことを聞くが、大根の仕入れ値っていくらだい?」
「ん?仕入れ値かい?ま、まあ教えてやってもいいが…今年は大根が不作でね〜130ルピアくらいだね」
「おお!そうかい!おじさん、ものは相談なんだが、120ルピアで卸せるっていったら、ウチから買うかい?」
「え?そ、そりゃ魅力的な話だが…。問屋との付き合いもあるし…」
「ひとまず今日の分だけでもいいさ!ほら、不作で品薄だからもう在庫もないんだろ?今日はまだピークの時間もこれからだろ?それを在庫無しで迎えるのはもったいないよ!」
「そ、そりゃそうだが」
「それに!近所の他店はみんなここと同じ値段で売ってる。おじさんとこだけ安けりゃ今日の目玉商品にできる!皆ここのを買いに来るさ!そして呼び込んだお客は大根だけ買うわけじゃない!全体の売上げアップも間違いなしだよ!」
他店が、というとおじさんの目の色が変わった。予想通りだ。やはり商売人。ライバル意識はあるよなあ?
「わかった!そこまで言うならのってやろう!品薄で困ってたのはホントだしな。300本仕入れるよ。モノと売れ行き次第では今後はアンタからかってもいい」
「商談成立!だな!」
俺はおじさんとガッツリ握手をした。
すぐ納品に来るよ、と告げて俺は踵を返した。
よっしゃああ!!きたああああ!
俺はガッツポーズをした。
60ルピアで仕入れたニンジンを、スキルで大根に変換して、120ルピアで売れる!
つまり原資が2倍になるっていう最高の商売だ!
しかも売れることが決まった上での仕入れ!
美味しすぎる!
自分の商才が怖いぜ…。
俺はニヤケがとまらなかった。すでに、儲かった金で何をするかに思いを馳せていた。
「っと、興奮して大事なことを忘れるところだった」
俺は振り返って大将に言った。
「ところで別件なんだけど、ニンジンが大量に必要でさ、全部買いとるよ。300本はほしいんだけど、あるかな?」
ということで第二話です。ニンジン編完結までは執筆済みなので安心してお読みください。毎日13時投稿です。
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60ルピアで仕入れたニンジンを120円で大根として売れるくらい嬉しい!
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