鬼ごっこが始まりました
凶悪な犯罪者がこの街に入り込もうとしたが、兵士がそれを撃退。
だが、捕らえることが出来ずその犯罪者は未だ街の周りに潜伏しているという情報が街中に広まった。
特に箝口令が敷かれている訳ではないが、あまりに話が広がるのが早すぎる。
まるで誰かが故意的に広めたように思え、領主は不審を覚えたが、街の住人はそんなことは関係ない。
誰が広めたのかなどどうでもいい、それより凶悪な犯罪者がこの街の近くにいると言うことのほうが問題だ。
街に入り込んでいないと言われても、安心して眠れるわけもない。
国が凶悪と指定する犯罪者。
そんなのが周りに潜んでいると言われれば誰もが安心できなず不安を覚えるのは仕方がない事だった。
故に街の住民が領主に早く捕まえるように訴えを出すのは当然の行動であり、領主も住民の不安がこれ以上膨れないように動き出すのも当然と言えた。
それに、今回追う凶悪犯罪者は侯爵家の一人娘を誘拐している。
ここで侯爵家に恩を売るのも一興と考え、領主は少なくない人員を派遣することになった。
それと別に、多くの冒険者や賞金稼ぎ達が動き出す。
修二に懸けられた懸賞金は悪くない金額。
数カ月遊んで暮らせそうなほどだ。
そんな獲物が運良く近くにいるとなれば動かない訳もない。
相手は元Cランク冒険者。
その程度の実力者であれば殺すのは容易と考える者が多く、誰もがその懸賞金にありつくために動き出した。
斯くして兵士・冒険者・賞金稼ぎが修二の首を狙い動き出した。
「と言う状況らしい。つか、なんで俺がこのガキ誘拐したことになってんだろうな? しかも生死不問のだぜ? 生死不問。俺殺されていいって言われてんだぜ。物騒すぎんだろ。そう思わねぇ?」
「みぃ~~」
「しゅ~~」
「誘拐は誤解であることはワタクシが証言して差し上げますし、処分されないように口添えしてあげますわ。なんだかんだと、貴方にはお世話になりましたから」
「ほぉ! 殊勝な心掛けじゃねぇか! なんかいい子ちゃんすぎて気持ちわりぃぞ」
「ええ、誘拐の件は誤解だと証言致します。ですが、貴方がワタクシにしてきた不敬の数々は許しませんわ! 不敬罪で牢にぶち込んでやりますからね! 鞭でいっぱいペチペチされるといいですわ!!」
「う~わ、結局無実の罪でぶち込まれるのかよ。マジありえねぇわ~」
「何が無実の罪ですか! 現に今もこんな格好を強いられて最悪ですわ!!」
森に逃げ込んだ修二達は生い茂った草むらの中で隠れていた。
そして隠れるならこれだろと言わんばかりに、修二が用意したお手軽お手製ギリースーツを身に着けていた・・・令嬢だけが。
「なに文句言ってんだ。森の中でのかくれんぼでそれが最強装備だからな。お前がいなけりゃ俺が装備してもいいと思うくらいだ」
「なら、貴方が着ればいいじゃないですの」
「え~。それ着るとムッ〇みたいになるからヤダ~」
「〇ック? 何ですのそれ?」
「う~ん・・・怪獣?」
「こんなガサガサした怪獣がいますの? 怖いですわ」
「ガサガサと言うか、モサモサ? まあ全身毛むくじゃらの二足歩行みたいな?」
「それはただの獣人ではありませんの。変に驚かせないで欲しいですわ」
「あ~、確かに獣人には全身モサモサの毛深い奴もいるからな。こっちではそう解釈されるか・・・ん? おい、人がこっち向かって来てるぞ。あんま喋んな。静かにしてろ」
「・・・今更ですが、ワタクシは関係ないのですから先に街に行っていてもいいような気がしますわ」
「金もねぇのにどうすんだ? 見捨てるなら金は渡さねぇぞ?」
「そんなものこの地の領主に命じれば」
「見た目どこにでもいる平民のガキと変わらねぇのにか? どうやっても今のお前は令嬢には見えねぇぞ」
「それは・・・・・・・・ど、どうにかなりますわ! おーいですわー!」
「うおぉぉい!? 何やってんだ!?「おい! 見つけたぞ!」やばっ!」
「うきゃっ!? 何しますの! お放しなさい! 放しなさーい!!」
モサモサと動く芋虫令嬢が勝手に己の居場所をばらしたため、致し方なく修二は令嬢を担ぎ森の中を逃げ回った。
逃げている途中何度も自分から発見されようとする令嬢に、ほとほと困った修二は最終的に手足を縛って猿轡を噛ませて身動き取れないようにするのだった。
冤罪なのは確かだが、その光景を見ればどう見ても誘拐犯にしか見えないだろう。
ちなみに例のムッ〇さんは怪獣ではなくイエティをモチーフにされている事をここに記しておきます。




