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ロストしたら俺のモノ-酒飲み自由人のダメ男生活-  作者: タヌキ汁
第二章 ドリル令嬢と酒切れ編
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骸は彼女


 朝、目が覚めると予想通り青年はいなくなっており、書置きだけが残されていた。

 書置きには、朝食は台所に用意してあり、足りなければ食糧庫からお好きに食べてくださいと書かれてあった。

 流石に好きに食べろなどとハンモッガ達に伝えれば、今日一日動けなくなるほど食べ続けることは目に見えていたので、用意された飯だけ出して俺達もさっさと村を出ることにした。

 村を出る際人の視線を感じたので、どこかで病気ではない者が監視していたのかもしれないな。


「なぜ道を外れますの。森に入る意味が分かりませんわ」


 しばらく歩いた後、修二達は道を外れ、道なき道を歩んでいた。


「野暮用だから別について来なくていいって言ったろ。つか、文句言うなら待ってろよ」

「イヤですわ。ワタクシ一人置いていくなんて怖いじゃありませんの」

「知るか。つかお前等も何でついてくるかな。別に食いもん取りに行く訳じゃねぇんだぞ」

「みしゃしゃッ!」

「シュシャシャッ!」

「嘘だッ! じゃねぇっての」


 人語ではないからわかりにくいが、コイツ等あのアニメのシーンをパクるなよな。

 一瞬狂ったのかと思ったぞ。


「はぁ・・・・・・ここか」


 目的の物を見つけた修二は、目の前でもごもごと口を動かすウズウツボと呼ばれる肉食植物の魔物を切り裂いた。

 切り裂いた先からどろりとした消化粘液が流れ、地面を焦がす。

 その粘液を魔法で水球を作り洗い流した。


「・・・結構原形は残っているモノだな」

「なにをして、ひぃっ!?」


 粘液を洗い流しその中から現れた物は、人らしき骸。

 服も肉も髪も全て溶けて、骨だけになった骸がそこにあった。


「ひ、人の骨ですわよね。なんでこれがこんなところに・・」


 この骨はあの村に住んでいた薬師のモノ。

 あの宿屋の青年は半年ほど前に亡くなったと言っていたが、本当はひと月ほど前に亡くなったばかりだ。

 遺体は埋めずにこんなところに捨てられたせいで、魔物に食われることになったが、まあ残っていただけ良しとしよう。

 普段から栄養が高く、身体に良い物を摂取するように心がけていたようだから、そのおかげで丈夫な骨が作られ、残ったのかもしれないな。

 流石夫の想いと願いを汲み取り、研究に没頭した変人。

 少しでも寿命を延ばす努力をしていたのだな。

 ホント殺される前に会いたかったぜ。


「・・・バカな冒険者がヘマして喰われただけさ。街も近いしついでに共同墓地に放り込もうと思ってな」


 令嬢に本当のことは伝えず、息をするように嘘を吐きながら、散らばった骨を全て回収し始めた。


 この薬師の女は、村人達に殺されここに捨てられた。

 いや別に村人達が直接手を下した訳ではないからこれでは嘘になってしまうな。

 ただ彼女は村八分にされただけだ。


 許可を貰ったからと言って行き成り大きな屋敷を構えたのが悪かったのか、人付き合いが下手だったのが悪かったのかわからない。


 大きな屋敷を建てる理由も、広い庭が必要だった理由も、温室が必要だった理由も村長に話しておいたのに、それを伝えなかった意地悪な村長が悪かったのかわからない。


 ただ普通に薬を作り、街から運ばれてくる素材の輸送費込みの値段で普通に薬を売っているだけで、暴利を貪っていると安易に疑う村人が悪いのかわからないが、様々な理由から彼女は村人達に嫌われた。

 そして、今回の病が発生した時、治せなかった彼女を村人達全員が責め立て、薬ができるまで閉じ込めた。

 彼女はただ亡くなった最愛の夫が生まれ育った土地で、静かに過ごしたかっただけだと言うのに。

 口下手で人見知りの彼女を村人達は誰一人理解しようとはせず、精神的に追いやり、彼女から生きる気力を奪った。


「あ、貴方にしては随分と殊勝な心掛けですわね・・・・もしかして知り合いの方だったりしますの?」


 知り合いと言う訳ではない。

 ただあの宿屋の青年から話を聞き、病状が何か検索した時に彼女の知識や記憶の一部が流れ込んできただけだ。

 そして、彼女の知識を利用する代わりに、彼女の記憶を己の脳に刻み付けただけに過ぎない。

 それが最悪の人生であっても、忘れられると言う本当の死に繋がらぬようにしただけだ。

 だから知り合いではない。

 現実で会ったことなどないのだから。


「こんなところに知り合いなんざいねぇっての・・・・」


 ホント、できれば生きているうちに彼女と会いたかった。

 村人達にどれほど嫌われようとも、最愛の夫が愛した地だからと、最愛の夫が生まれ育った場所だからと言う理由だけで、この地を離れなかった愛狂いの変人など早々お目にかかれない。

 彼女が何故そこまで彼を愛したのか、なぜそこまで酔狂できたのか、彼女の記憶を持つ俺は理解できるが、理解できるだけだ。

 共感などできないから、彼女の口からその狂った愛情について聞いてみたかった。

 ふぅじい(風の精霊)へのいい話のタネになりそうだったしな。


「よし、これで全部だな」


 回収した骨をアイテム袋に入れ、修二は来た道を戻り出した。

 骨は共同墓地へと言っていたが、恐らく街に最愛の夫の墓があるだろうからそこに埋めるてやるつもりだ。

 誰も管理する者がいなければ壊され使いまわされるが、最低でも半年くらいは共にあり続けられるだろう。


「え? 用事ってこれだけでしたの?」

「そうだぞ」


 柄でもないことをしているとは思っているが、まあ、これは無断で知識を利用させてもらっている礼みたいなものだ。

 こんなことして彼女が喜ぶ、などとは考えていないが、俺の気持ち的に今後彼女の記憶を利用するにしても気持ち的に楽になるので、俺的には必要な事であった。


「えぇ~」

「みぃ~」

「しゅ~」

「何でそんな残念そうなんだよ」


 初めから野暮用といておいたのだがなぜかこいつ等は不満そうだ。

 いったいコイツ等は何を求めていたのやら。


「ワタクシてっきり、温泉を見つけたのかと思いましたわ」


 いや、なんで温泉?

 まあ、確かに風呂に入りたいみたいなこと言っていたが・・。


「みぃみみみみぃっ!!」

「しゃしゅ~しゃ! しゅるるるるるぅぅぅ!!」


 お前等の言葉はわからん。

 わからんがどうせ食い物の話しかしてないのだろうなと思う。


「騒がしくすんなアホ共。こんなところで温泉だ美味い飯だなんざある訳ねぇだろ。そういうのは街にしかねぇんだよ」

「まあその通りですわね。では早くゆきましょう。今日中にお風呂と買い物がしたいですわ! こんなボロ布着せられて不快でしかありませんもの。早くワタクシに相応しい最高級のドレスに着替えたいわ」

「お前に相応しいドレスって・・・トイレのマットレスで作った奴とかか?」

「そんな汚らしいドレスがワタクシに似合うわけありませんわよ! バカにするのも大概になさいませ!」


 クソ貴族様ならばお似合いだと思ったのだが、どうやらお気に召さなかったらしい。

 あれは生地厚いし、重いし、水とかめっちゃ吸収するし、冬場身に着けていても暖かくなさそうだけど、お前には似合っていそうだっただがな。


「みぃみぃ!」

「ああ、そうだな。使用済みじゃねぇとコイツには相応しくないな」

「な!?シャルトテューラ! 貴方までそんなこと言いますの!」

「うにゃ!? みぃみぃ!」

「だって似合うんだからしょうがないじゃないか。と言ってるぜ」

「シャルトテューラ!!」

「うみゃっ!? みみみみみみしゃー!!」

「なんだよ。少し翻訳し間違えただけだろ? 文句があるなら人語を話してみやがれってんだ」

「みぃぃぃぃっ!!」

「しゅ・・・しゅしゃ?」

「おう、そうだな。街に着いたらいっぱい美味いの食わせてやるぜ。お前には色々と助けられたからな」

「しゅしゃ~ん!!」

「みぃぎぃぃぃ!!」


 あからさまにハンモッガと子猫の扱いが違い、怒る子猫だが、そんな子猫のことなど知らん顔で修二は軽くハンモッガの頭を掻き来た道を戻る。

 まあ、この面子で修二の役に立っているのはハンモッガだけで、後はマジでお荷物であるので仕方がないと言えば、仕方がないのだろう。


「みぎゃい! みぃみぃみぃっ!!」

「もうシャルトテューラ! また何か失礼なことを言っているのですわね! いくら可愛いシャルトテューラでもワタクシを侮辱することは許しませんわよ!」

「みしゅ!? みゃいみゃい!」


 そして一度ついた疑念はなかなか取れないのか、それとも令嬢がアホなのか知らんが、子猫が鳴き声を発するたびに、ぷんぷんと怒り出すのだった。




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