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ロストしたら俺のモノ-酒飲み自由人のダメ男生活-  作者: タヌキ汁
第二章 ドリル令嬢と酒切れ編
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村の状況は


「二月ほど前に隣の女性が倒れたんです。初めはただ顔色が悪かっただけで、みんな疲れが出ただけだろうってそう思ってたんです。休んでいればよくなるってそう思っていたんです」


 粗方食事も終わり、落ち着いたところで青年は語り出した。


「けれど、何日たっても一向に良くならなくて、日を増すごとに顔色が真っ青になっていって、ちゃんと食事をしていたはずなのに頬がコケるほどにやせ細っていったんです」


 栄養のある物をと村人達が色々と持ち寄って食べさせた。

 消化に良いとされる物も食べさせた。

 身体にいいと言われる物も食べさせた。

 それでも女性は病的なまでに痩せ続けた。


「それと同時に手足が赤く腫れあがって、そして全身から白い粉みたいな発疹が出始めたんです」


 あれはまるで誰かに呪いを受けたようだったと言う言葉を飲み込みながら、青年は話を続けた。

 彼女は誰かに恨まれるような心根が汚い人ではないのだから。


「それからです。発疹が出始めて次の日に村の女性達が倒れ、次の日に小さな子供達が倒れ、男衆が倒れ始めたんです。皆同じような症状がでて倒れたんです」


 行き成り目の前で倒れる両親や村人達の姿を思い出したのか、青年は顔色が悪くなる。


「今集会場に倒れた皆を隔離して、唯一病にかかっていない長老達が面倒見ています」


 青年も両親の看病に行きたかったのだが、運がいいことに青年だけは病が発症しなかった。

 それ故、村の者達は唯一無事である若い青年に被害が及ばないように、遠ざけることにした。


「薬を買ってきてくれそうだった商人の旦那は、村の変化に勘付いていつの間にかいなくなっていました」


 あれだけ村の皆が良くしていたというのに、手を伸ばすことはせず見捨てた商人に怒りを覚え、青年は拳を握る。


「この村唯一の薬師様もご高齢で半年前にお亡くなりになりました。国に要請しているのですが新たに薬師様が派遣されない現状です」


 国がちゃんと対応してくれていれば、こんなことにはならなかったのにとやり場のない怒りを頭の中を駆け巡らせながら、


「お願いします。薬をください。お願いします。薬を作ってください。助けてください」


 青年は土下座する勢いで頭を下げた。

 知識だけなら一流の薬師に負けないと言う修二の言葉を信じて青年はただ懇願する。

 風貌がどう見ても薬師には見えなくとも、酒の席で気が大きくなり、出鱈目な事を言っているだけかもしれないと思っていても、それでも青年は藁を掴む思いで頭を下げ続けた。


「ゴクゴクゴクゴク、ぷはぁ~~・・・・・・痩せて、腫れて、白い粉のような発疹。発症は女に始まり、ガキ、男。なぜか目の前にいる男とジジイとババアは発症せずか」


 頭を下げる青年を横目に、修二は聞いた話を再確認するように呟いていた。


「考えられる病気は、ニッカセイキョウキ病・ニュウセツカイキ病・シチュウキュウガガイ病・ラノウソウ病・ランラコウシ病ってとこか。まっ、ガキと男が発症している時点で、ラノウソウとランラコウシは除外だな」


 となると他三つのどれかだろう。


「何の病気かわかるのですか!?」

「断定はできねぇよ。恐らくだ。恐らく」


 病人も見ないで話だけ聞いた症状だけでは決定的な結論など出せるわけもない。

 更に言えばこの世界の偉い学者達が知らない未知の病気の可能性も捨てきれない。

 未だ発見されていない新種の病であるならば、俺にできることなど何もない。

 俺は人々が知っている事しか調べることしかできないのだから。


「まあ、何の病気がわかったところでここじゃ作れねぇな。薬の調合に必要な機材も無けりゃ、必要な薬草もねぇからな」

「機材なら薬師様のお家にあるモノで何とかなりませんか? 薬草も自分が街に行って買ってきます!」

「それにしたって人手が足らねぇだろ。テメェと年寄り以外の村人全員ぶっ倒れてんだろうが。どれだけ患者いると思ってんだ」

「でしたら人手も集めます! それならどうにかなりますよね!」

「そこまでやるなら薬買ってこいバカタレ。アホかテメェは」

「あっ! そ、そうですよね。すみません」


 街に行くと言った段階で気付けと思いながら、修二は青年に紙とペンを持ってこさせる。


「ほら、病状とそれに必要な薬を書いといた。薬はたけぇが、今回俺が払った金でどうにかできる買える薬を書いといたぞ。金に余裕があるなら一番下にある薬を買いな」

「あ、ありがとうごさいます! このご恩は一生忘れません!」

「そういう気持ち悪いのはいい。それより薬買う前に一度薬師ギルドの受付にこの村で起こった病気について話せよ。俺の見解が間違っている可能性もある。本職の奴等から確認して貰った方が確実性も高くなるだろしな」

「はい! わかりました!」

「デケェ返事はいいから、酒持ってこい。空になっちまったじゃねぇか」

「はい! わかりました!!」

「だからウルセェっての・・・はぁまあいいか」


 無駄に元気になった青年を見送りながら、空になったジョッキを転がしながら暇をつぶす。


「ほへ~」


 そうしていると、なんとも間抜けな声が聞えてきた。


「おい、巻きグソ。不細工な顔がブスになってるぞ」

「だれが巻きグソでブスですか! せっかく感心していたというのに、今の言葉でマイナス100点ですわ!」

「そりゃあ嬉しいねぇ。貴族様に気にいられていると碌な目に合わねぇから嫌われて距離置かれている方が幾分か楽だ。やり返すにしても全く心が痛まねぇからなぁ~」

「ホントに、貴方は失礼極まりないですわ。なぜこんな禄でもない方が博識なのでしょう。納得いきませんわよ」

「なんだよお前より頭いいのが気に食わねぇのか? 止めてくれよ。お貴族様特有の理不尽な嫉妬はよぉ。バカなのはテメェが悪いんだからよぉ~」

「ホントに失礼この上ないですわ! お屋敷に帰りましたらすぐにお父様にお願いして鞭打ちの刑をして差し上げますわ!」

「鞭打ち系とか止めてくれよ。SとMとは無縁でありたい人間なんだよ俺は」

「エス? エム?・・・・はっ! そういうことではありませんわ! 貴方は何を考えていますの!!」

「は? 俺はただ、凄い(S)鞭打ちの刑罰とマジ(M)でヤバイ鞭打ちの刑罰の話をしただけだが? お前は何の話をしてるんだ?」

「そのはぐらかし方は無理がありますわ! 下手にもほどがありますわよ!!」

「何のことかわからねぇな。お前の脳みそがピンク色に染まってるだけじゃねぇの? エロい事ばっか考えてどうしようもねぇ奴だな。将来そっちの道で稼ぐつもりなのか?」

「エッチじゃありませんし身体を使ったお仕事になどつきませんわっ!」

「流石傲慢貴族様だ。仕事は身体を使ってなんぼだってのに、毎日食っちゃ寝すると豪語しやがった。こんなヒキニート貴族に税を納めていると思うと悲しくなるな」

「ひきにいと? また意味の分からない言葉を使ってワタクシをバカにしましたわね! イイですわ! ワタクシだって身体を使って稼いでやりますわ!!」

「うえっ!? お客さんそういう・・・」

「え?」


 酒を持ってきた青年が戻ってきた。

 どこから聞いていたのかわからないが、どうにも間が悪い所からしか聞いていなさそうだ。


「あ、あの、流れの娼婦の方でしたか、すみません。そういうお仕事はウチではやめて欲しいのですけど・・それに先程も言いましたが、今この村はそういうことが出来るほど余裕がなくてですね」

「ち、違いますわよ! 何を勘違いしているのですか!!」

「ナニと勘違いしてんだろ? やだやだ、下品なお嬢様が隣にいるだけでこっちまで変に見られちまうよ。客が欲しけりゃ街まで待てっての」

「こんなに小さい子なのに・・・・・都会は凄いなぁ」

「貴方マジでおやめなさい! この庶民が本気にしてしまうではありませんか!!」

「いいじゃねぇか。都会に憧れが抱けたんだからよ。おうお前、明日にでも薬買いに行くんだろ? 街に付いたらコイツでどこか適当な所で遊んで来い。これも経験だ」


 餞別として修二は青年に金を渡す。

 少なくない金に青年オロオロとしながら受け取れないと返そうとするも、それは修二が許さない。

 更にはお勧めの店の名前と場所も教えていた。

 そんな修二達の姿を令嬢は冷めた目で見ているのだった。




 ちなみに修二が教えた店は確かに娼館ではあるが、基本女よりも酒を優先している修二であるので遊ぶと言っても酒飲みとして楽しめると言うだけの話である。

 まあ、娼館として酷くない場所でもあるので、青年が利用するにしても酷いことになることもないだろう。




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