その頃森の殺し屋達は
修二達を追いかけていた殺し屋達だが、丸一日以上敵と対峙する幻覚を見せられ続け、皆息も絶え絶えになるほどの体力を消耗することとなった。
殺し屋達も途中から見せられているのが幻覚であると気が付いたが、この幻覚の嫌な所は時々本物の魔物を混ぜて襲い掛けられるので、幻とわかりつつも対処せずにはいられなかった。
襲ってくるのがFやEランク程度の下級魔物であったとしても、棒立ちのまま、何もせずにいれば致命傷を受けることになる。
襲い掛かる魔物達の気配すらも隠蔽することが出来る幻覚使いの魔物がいるとは思わなかった。
この森はそこまでレベルの高い魔物はいなかったはずなのだがな。
「・・・・全員無事だな」
「・・・・・・・・・・・」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・無口野郎も・・無事しょ」
呼吸を整えながら、仲間の生存確認を済ませる。
生意気にも優秀な男は未だに呼吸を整えられていない。
いかに優秀であっても現場での経験が浅く、行き成りのトラブルに体力を削られたのだろう。
更に言うならば、先程の幻覚が獲物である冒険者からの奇襲と考えれば、見せられていた幻覚以外から攻められるのではと警戒し、無駄に神経を削られたのだろう。
警戒し過ぎの考えすぎであったのだが、戦闘時に油断すれば死に直結すると教わり、実直にもその教えを守っていたので致し方ない結果である。
教本通りで教わった通りに動く新人の殺し屋。
優秀であるのは認めるが、臨機応変に動けるほどの経験は彼等に身についていなかった。
「少し休憩する。呼吸を整えろ」
「い・・いらねぇし~・・もう・・いつでも・・いけっし」
「休憩だ。流石にこのまま獲物を狩るのは危険すぎる」
そういうとリーダーは近くの地面に腰を降ろした。
口の軽そうな男も流石にリーダーが腰を降ろしたのでは、無駄に強がっている理由もなく、男も静かに腰を降ろし休み始めた。
「「「・・・・・・・・」」」
自然ともう一人の男も腰を降ろし、誰もが無言になり、体力の回復に努めた。
朝日が昇り、薄暗い森に柔らかな光が差し込む。
少し眩しいが、たまに頬を優しく撫でる風が火照った体を冷やし、心地よい。
ずっと身体を動かし、神経を尖らせていた男達は天を仰ぎながら、一時の安らぎを堪能していた。
だから彼等は未だに修二の策から逃れられていないのだろう。
「「「・・・・・・・・・・」」」
モーセの虫を使った幻覚は確かに終わっている。
騒ぎを起こし血の匂いを撒き散らし魔物を呼び寄せ襲わせる策も終わっているが、撒き散らした血が呼び寄せるのは何も獣型の魔物だけではない。
ズズズッ
蟻の巣ができあがる程度に彼等の周りの地面が何か所も盛り上がり、盛り上がった地面から小さな白い花を咲かせた植物が現れた。
瞬きする間に彼等の足元は小さな花が咲き誇る綺麗なお花畑へと変わる。
芽がでるなどの工程など無く、直接花が地面から生え、生えた花達は一斉に身を揺らし始めた。
「「「・・・・・・はぁ」」」
そんな植物がまともなわけもなく彼等は知らず知らずのうちに疲れを癒すように目を閉じ始める。
殺し屋達の足元から産まれた花は、急激に成長したがために未成熟として発芽した睡花の大群。
前回修二が面白がって令嬢と子猫の鼻にぶっ刺して眠らせた花であるが、それとは少々異なる性質を持ていた。
未成熟の睡花の命は短く、子孫を残す時間は限られている。
それゆえ未成熟の睡花は、その短い時間の中で少しでも子孫を残すために周りの睡花へと花粉を飛ばす、己の一部である睡眠効果のある液を飛ばすほどに身を揺らすのだ。
そこに無害な生物がいたとしても、睡花達が気にすることは無く、己の子孫を残そうと必死に身を揺らした。。
「「「・・・・・・・・・・」」」
無防備にも魔物が蔓延る森の中で見張りを置かずに眠ったとしても、花達には関係のない事だろう。
「お? やっと嵐が終わったようだな。やっとお前の強みが生かせそうだ」
「シュ~?」
「つうことで、行先変更だな。よし、こっちに行くぞ」
「ちょ、ちょっと、お、おまちな、さい」
「なんだよ。もうばてたのか? やっぱ箱入りドリルはダメだな。地面を掘ったことのねぇドリルはこれだから使えねぇ。外に出るなら慣らし運転位してから来いってんだ」
「全く、意味が、わかりま、せんわ! はぁはぁ、それよりフモンショエルに乗せなさい」
「ふもん? なんだって?」
「フモンショエルですわ! まったく、いちいち聞き返さないで欲しいですわね。それよりシャルトテューラばかりフモンショエルに乗って楽するなんてズルイですわ!」
「・・・・・・と言ってるが、フモンショエルよ。この巻きグソドリルを乗せてやるのか? というかフモンショエルって名を受け入れているのか?」
「シュエ?・・・・・・ぶんぶん」
修二の問いかけにハンモッガは首を横に振る。
それは令嬢を乗せないと言う意味であり、そんな変な名は受け入れないという意味であろう。
「シュシェ~エ! シュセセセセシャー!」
「ふむふむ、なるほどそれなら仕方ねぇな。おい諦めな巻きグソ令嬢。昨日お前達を一日中乗せていたせいで背骨のラインが曲がってないか気になるんだとよ。コイツ何気にメスとしてそういうの気になるらしい。だから諦めて今日は気合で歩きな」
「誰が巻きグソですか! 下品な呼び方は止めて下さらないかしら!・・・あら? 貴方動物とお話しできますの?」
「話せるわけないだろ。なに夢見てんだ? 鼻に花を生やしていたせいで頭の中お花畑にでもなったのか?」
「鼻に花なんて生やすなど、そんなバカな事したことありませんわ! 可笑しなこと言わないでくださる!」
「は? 昨日生やして・・・あぁ、そうっすねぇ~」
「え? 今何を言いかけましたの? なんだか不吉なことを言いかけましたわよね?」
「いんや、なんでもないですぜ? なあ、ハンモッガ?」
「シュシャ!?・・・・シュッシュシュ~ン?」
あからさまにそっぽを向く修二とハンモッガの姿に何かやられたと思った令嬢は問い詰めるも、二人は何も語ることは無かった。
「ふえ・・ふえ・・ふぇっくしゅん! ボフッ!! うにゃ!?・・・・うみゃ~お・・・・・すか~」
そんな中子猫はハンモッガの頭の上で大きなくしゃみをすると同時に、鼻の中から小さな白い花が現れた驚きの声をあげて、そして寝た。
そういえば、令嬢に突っ込んだ花はバレる前に引き抜いておいたが、子猫のは放置したままだったことを思い出し、飽きたら引き抜いてやるかと思もっていたがいつのまにか無くなっていたんだよな。
まさか鼻の中に花が収納されているとは思わなかったぞ。
というか、この子猫の構造はどうなっているんだろうか・・・。




