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ロストしたら俺のモノ-酒飲み自由人のダメ男生活-  作者: タヌキ汁
第二章 ドリル令嬢と酒切れ編
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有名人


「ちょっとこれどう言うことよ!」


 修二が街を出て行っても、街は変わらず平和な時間が流れていった。

 そんなおり、エルフィナはギルドで張り出された新たな手配書を目にし、珍しくも受付で声を荒げていた。


「落ち着いてくださいエルフィナ様。なにがご不明なのか、おっしゃて下さらなければ答えようがございません」

「ご不明も何も、なんでコイツが賞金首になってるのよ! 可笑しいでしょうが!」


 エルフィナが手にしている手配書には凶悪そうに笑みを浮かべた一人の男の似顔絵。

 エルフィナにとっては見慣れた似顔絵であり、いい意味でも悪い意味でも忘れたくとも忘れられない顔がそこに描かれていた。


 描かれているのは修二の似顔絵。

 その下には生死不問と書かれており、ほかにも懸賞金や修二の情報が記載されていた。


「そちらの犯罪者は魔導船の破壊工作及び貴族令嬢の誘拐を行った罪で手配されているだけで、何も可笑しなことは無いと思いますが?」

「可笑しいことだらけじゃない!」


 辛辣でどこか他人事のように話す受付嬢に、エルフィナはイライラを募らせる。

 それほど修二が犯罪者として賞金首になるのが許せない


「コイツが犯罪者で手配されるのはどうでもいいけど、この誘拐された令嬢の生死不問ってのはどういうことよ! コイツの首に金掛けるよりも、まずこの子の救助に賞金を付けなさいよ!」


 訳でもないようだ。

 至極まともな事を言っているのはわかるのだが、なんとも修二への配慮と言うか心配が全く見られない。

 というか、先程修二が賞金かけられたことに不満を申したはずなのだが・・・・。


「誘拐されて三日ほどたっておりますが、犯人からはなんの要求もない事を考え、生存は諦めたようです」


 たった三日で生存を諦めたと言う言葉に、エルフィナは目を細めるが、受付はただ聞かされた話をするだけである。


「それと誘拐された令嬢が無事であったとしても、今も心に消えない傷を負わされ続けている可能性がある為、少しでも早く楽にさせようとの配慮だそうです」


 犯人が男で、誘拐されたのが女。

 言わずとも、最低の行為が行われていることが想像できてしまう。

 それが今も続いているのであれば、令嬢には利用価値が無くなったと思わせ、そのイラつきをぶつけられ死なせることで、その地獄から解放させようと遺族は考えたのだ・・・と言うのは表向きの理由で、本当はただ厄介払いしたいだけだ。

 どこの馬の骨に穢されただけでも貴族としては恥でしかなく、もしも、その男の子供まで孕まされていたら面倒でしかない。

 政治としても利用できぬ、完全なお荷物である。

 家族愛が深ければ、そんなこと関係なく救助を望むだろうが、今回手配書を出した貴族はそこまで家族愛が深くはなかったのだろう。


(なにが配慮よ。ただ利用価値が無くなっただけじゃない。ムカつく)


 それがわかっているエルフィナはイラつきを募らせながら、ギルドカードとこの国の地図を取り出した。


「だったら私がこのバカを殺してその子を助けるわ。情報も寄越しなさい」

「受領了承しました。しかし情報と言われましても、犯人は魔導船から飛び降りこちらの森へ逃げていったことしかわかっておりません」


 受付嬢はおおよそ魔導船が飛ぶ経路を指でなぞりながら、修二が飛び降りたであろう森を指差した。


「こちらの森からならば他国に渡る為の検問所とそこまで離れておりません。犯人はギルドで他国へ赴くための手続きをしていたので、もしも令嬢が生きているのであれば他国に連れ出す気かもしれませんし、手際の良さからして落下地点にあらかじめ足を準備しており、もうこの国にはいないかもしれません」

「そう・・・・ここで手続したなら、恐らくシエルが対応したはずよね? ねぇ、シエルからアイツがどこの国のどの街に行くとかって聞いてないの」


 十中八九修二の世話を焼いていた受付嬢のシエルが対応しただろう。

 そう思っての質問だったのだが、シエルからは何も聞かされていないとのことだ。

 ちなみにギルド長が帰って来てからすぐに修二からもたらされたギルド内の裏切り者の職員は秘密裏に処分されている。

 ただし、行き成り数人姿を消すのは不自然である為、急遽多くの職員が人事異動を命じられたということで、処理されていた。

 その為シエルが死んだことは表に出されず、今もどこかの他の街のギルドで仕事をしているだろうとエルフィナは勘違いしていた。


「なら仕方がないわね。なら一旦検問所にいったほうが「シュウジのことだからこの村に行くんじゃねぇの?」・・・誰よ。アンタ」


 いきなり話に割り込んできた男にエルフィナは胡散臭そうな視線を向けるが、男は気にも止めない。

 というか


「つか、シュウジの野郎マジで何やってんだよ」

「貴族の女攫ったとか書いてあるぜ。愛の強制逃避行てか? 貴族相手に良くやるぜ」

「年齢は・・・ふむ、幼女ではないのか。なれば興味なし」

「もはや少女となりてババア一歩手前。悲しいが我等のパトスはたぎることは無い」

「逆に幼女だったらテメェ等のやる気がヤバそうなんだが?」

「「「当たり前であろう!!」」」

「なになに魔導船の障壁やら動力源の一部やらを破壊、及びメイエッド侯爵家の一人娘、ディオニア・オルセイン・メイエッドの誘拐ねぇ。アイツ魔導船の動力部破壊できるほどの魔力もってねぇよな?」

「んだよ。壊すなら魔導船の全破壊しろよな面白くねぇ。中途半端すぎんだろ」

「ちょっと、さっきからなに読んでるのよ。誘拐だとか破壊だとか物騒なこと言って~」

「何が逃避行だ。年齢見て見ろよ。相手はまだケツの青いガキだぜ? 身代金要求するしか使い道ねぇぞ」

「闇市で奴隷として売っぱらう気じゃねぇの? 二束三文にしかならんが、あそこなら何でも買い取るからな」

「二束三文で思い出したんだが、この前ゲロっぽい何かを吐き続けられる悪戯アイテムが格安で売ってたぜ。制作者不明だけどよ」

「ああそれ知ってる。アレなんの役にたつんだろうな」

「お~い誰か歯ごたえのある食い物持ってねぇか? スープの具材が足りなくてよ~」

「俺さっきそこでサンダル買ったけど?」

「よしいれろー!」

「そのサンダルの素材ってポイズンスネークの皮だったはずよね?」

「そもそも汚くねぇか?」

「別に火を通すんだから問題なくね?」

「「「なるほど一理ある」」」


 いきなり現れた謎集団に流石のエルフィナもたじろぐも、すぐに持ち前の強気な態度で変な集団と向き合った。


「なんなのよアンタ等! 騒ぎたいなら外で騒ぎなさいよ!」

「おぉ、怒ったぞコイツ。おい変態共、どうにかしろよ。幼女はお前等の管轄だろ」

「誰が幼女だ! ぶっ殺すわよアンタ!」

「彼女は幼女ではない」

「熟れすぎた少女だ。後数年もすれば女性となり、朽ちていくだけであろう」

「「「お前達の様にな!!」」」

「「「こっち指差すな変態共!!」」」

「まあまあまあまあ、そう怒りなさんなっての、ほらウチの特性サンダルスープでも飲んで落ち着きな」

「そんなの飲めるわけないでしょうがっ!」

「そうだそうだ! まだ味を調えてねぇのにだす奴があるかい!」

「そういう意味で言ったわけじゃないわよ!!」

「え? 別に結構いけたぶくぶく?」

「おい、なんか口から泡吹いてんぞ」

「それ毒じゃね?」

「あば、まぶか・・・・かっ・・・」

「あ~あ、ぶっ倒れちまった。おい! 誰か布団持ってこい! このままじゃ寝にくそうだ!」

「「「へ~~~い」」」

「その前に解毒しなさいよ!・・・はぁ、もういや。何なのこいつ等」


 まあ、いつものような強気な態度で接しても、話を聞かない変人集団の前では意味をなさなかった。

 ちなみにエルフィナを取り囲んでバカ騒ぎしている者達は、前回犯罪者ギルドを潰すために修二が援軍を要請した他ギルドの者達である。

 それぞれ有益な情報を修二から報酬としてもらったので、今後色々と忙しくなる予定ではあるのだが、働く気がしないのか皆なぜかこの街で入り浸っていた。

 そのおかげと言うか、コイツ等のせいというか、街はなお一層騒がしくなっているのは言うまでもない。

 というか他ギルド所属の者達が冒険者達の集う冒険者ギルドで、我が物顔で騒ぐなと言いたい。

 でないと、周りの冒険者達も黙ってはいない。


「さっきからうるせぇグボボッ!?」

「テメェなにしやがグボッ!?」

「おいなにがボボボッ!?」

「お~、お客さんがいっぱいだ~」

「みんなで仲良く飯なんざ最高だな!」

「ほい、追いスープ」


 黙っていないのだが、悪意無い料理人達のありがたくもない歓迎のせいで誰も近寄らなくなっていた。

 誰だって躊躇なくゴミ毒料理を食わせてくる奴の傍には近寄りたくないよな。


「ああもう! マジでアンタ等邪魔!」

「邪魔とは酷い嬢ちゃんだな。こっちはシュウジの居場所を予想してやってるってのに、つうことでここにシュウジがいるのに金貨を賭けるぞ!」

「は~? だったら俺はここら辺の村に賭けるぜ!」

「なら俺はこっちの村に幼女の絵画集を賭けてやろう。特別だぞ?」

「「いらねぇよ!!」」

「「「なら我等はこのスープを」」」

「「「引っ込め味音痴共!」」」

「もういや、私帰る」

「「「「え? 逃がさねぇよ?」」」」

「へ? ひひゃーーー!? 担ぐなーー!!」

「あはははっ!! 俺達を前にしても未だに強気だぞこのガキ! マジで面白そうなガキだな! コイツ引き抜こうぜ!」

「おう! 移籍させろ! 移籍!!」

「こりゃあ久しぶりに仲間が増えそうだ! 何処の陣地に入っても文句なしだかんな!」

「それわっしょいわっしょい! 手始めに変異体集団に放り込め!! 」

「え、運ぶの? 幼女以外に触れるのはちょっと」

「ババ臭くなるのはちょっと」


 エルフィナは無理やり胴上げされながらギルドの酒場へと運ばれる。

 その先で静かにお茶やケーキを楽しんでいる変異体集団(身体の一部が普通ではない者達)の元へと運ばれていった。

 流石に初っ端から変態・変人集団と関わるのはレベルが高いと思い、基本的に見た目以外はまともな変異体集団に関わらせようとしたのだろう。

 彼等は彼らなりに気遣いができるようではある。

 あるのだが、


「止めなさい! この! やめろって、やめろって言ってんでしょうがーーー!!」


 そんなわかりにくい気遣いに気付けるはずもなく、エルフィナは初めてギルド内で暴れるのだった。







「「「「「「ギャャャャッ!? シュウジが言った通りにこのガキヤベェェェッ!!」」」」」」

「は? しゅうじ? え? アンタ等仕向けたのアイツなの?」

「「「「「「ん?・・・・・・そうです! シュウジの奴が嫌がらせしろと言ったですっ!!」」」」」」

「ほ~・・・ほ~ほ~ほ~ほ~・・・・・・・・・アノ、クソ、ブッコロス」

「「「「「「(あ~あ、俺知~らね)」」」」」」


 その後、殺意剥き出しの小さな悪魔が修二を抹殺する為に動き出したことを、


「おい見ろ! でけぇ芋虫見つけたぞ! これ今日の飯にしようぜ!」

「シュシュシュ~ン!!」

「みぃ! みゃみ!!」

「いやーーーーっ!? 気持ち悪いですわーーー!!」


 のんきに森の中を歩いている修二が知る由もなかった。




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