静かな森の夜で
なんだかんだ騒いでいた令嬢も、次第に陽が落ち森の暗闇に染まりだせば、次第に騒ぐことをなくなった。
何かが潜んでいる訳ではないが、それでもただ真っ暗な森と言うのは令嬢にとっては不気味でしかなかった。
一人ではないとはいえ、その腕に子猫がいるとはいえ不安を覚える。
「ふか~・・・ふか~・・・・」
令嬢の不安など知らぬ子猫はのんきにイビキをかきながら寝こけている。
流石に腹が膨れていた子猫にいつまでも令嬢の相手をするのは無理な話であった。
そしてそんな子猫を抱いていても不安が拭えるわけもなく、令嬢が徐々にハンモッガと修二に近寄るのだった。
「・・・・・・・・・」
令嬢は修二とは反対側のハンモッガの傍に寄りかかり、しばらくして静かな寝息を取り始めた。
気絶中だったとはいえ、流石に色々あり過ぎて心が疲れていたのだろう。
まあ、本人は覚えていないようなので何とも言えないが。
「・・・・・・・・・」
修二は声を発さず静かに起き上がると、焚火に薪をくべる。
一瞬だけハンモッガに抱き付きながら眠る令嬢に視線を向け、寒さで震えていないか確認し、問題ないとわかり次第すぐに興味が失せたのか視線を外し、揺らめく焚火に視線を戻した。
「はぁ・・・・・・・面倒」
助けてしまったのは仕方がないし、己の選択ではあるモノの、やはり文句が口に出てしまうのは仕方がないと思う。
いや、別に後悔はしてないがな。
「モーセの虫も結構やられちまったな」
どうせモーセはこっちが勝手にしたことだから気にするなと言うだろうが、それに甘えるのもなんか違う。
ダチであるからこそ甘えていいのかもしれないが、俺はどちらかと言うとダチであるからこそ、借りは返したいと思ている。
とはいっても、モーセに渡せる情報はもうほとんどないんだよなぁ。
金や土地を用意することはできるが、ぶっちゃけ俺と同じで渡り鳥みたいな生活送ってるし、金なんざ高位の魔物を捨てるほど狩れるから全く困っちゃいねぇ。
となるとやはり。
「・・・探索に付き合うしかねぇか」
前回会ったときも、探索に誘われた。
弱い俺を誘っても意味ないと思うんだがねぇ。
「はぁ・・・・・・おい、なんで全員現れてんだよ。別に呼んでねぇよ」
探索と言う言葉に反応したのか、いつの間にか焚火の周りに虫達が飛び回っていた。
ブンブンと五月蠅いのか子猫もハンモッガも煩わしそうにしている。
「わかったわかった。コイツの件が片付いたら付き合うよ。それでいいだろ?」
その言葉に虫達は嬉しそうに飛び回る速度を上げ、何度も修二達の周りを飛び回った。
虫が渦の様に飛び回っているので、もしも令嬢が起きていたら多分泣いたな。
「ん・・んぅ」
「ガキが起きる。はしゃぐならよそでやってくれ」
令嬢が寝苦しそうに唸るので、軽く注意すると、虫達は少し戸惑いながらも飛び回るのをやめた。
「・・・・う・・うぅ・・・」
だが、静かにするのが遅すぎたのか寝苦しさは消えず令嬢は唸り続けた。
なんだかこのまま放っておくと起きて騒ぎそうだと思い、修二はため息を吐きながらアイテム袋から鎮静効果のあるお香を取り出し、令嬢の傍に置く。
「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」
「・・・・なんだよ」
そんな修二の行動が珍しかったのか、虫達が興味深そうに見ていた。
いや、虫達だけではなく付き合いの短いハンモッガや今まで寝こけていた子猫までも変な目を向けてきていた。
「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」
「・・・・だから何だよ。何か言いてぇなら言えよ」
「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」
修二の問いかけに皆答えることは無く、子猫とハンモッガは互いに視線をぶつけ合った後、ニヨニヨと嫌な笑みを浮かべた。
「お前等なんか勘違いしてねぇか? 俺がただ騒がれるのが面倒だっただけだぞ?」
「ふにゃ~~~、ふにょ~~~~~」
「すしゃ~~~~~~、しゃふぅぅぅ」
だが、修二の弁解を聞いても子猫達は、私達は何も見ていませんよと言いたげにワザとらしくイビキをかき、狸寝入りを始める。
「やっぱり勘違いしてるだろ。はぁ・・・マジで勘弁してくれよ」
ガキが大好きで面倒見がいいなどと思われたくないが、子猫達の認識が改まることは無い。
まあ、それはいいとしても、それより先程から虫達が一糸乱れぬ動きで、俺達はわかっているよと言いたげに首を縦に振るのをやめて欲しい。
というか、モーセも悪乗りし過ぎだ。
「付き合ってらんねぇよ・・相棒、この森の全体地図を出してくれ。あと地図上に敵意・害意・殺意・私怨を持つ生物を表示してくれ。種族名も載せてな」
そして相手をするのが面倒と考えた修二は能力を使い見張りをする事にした。
からかうのはいいが、からかわれるのはイヤなのだ。
なので能力を使ってまで本格的に無視しようとしたのだが、
「・・・・?・・・・・う~わ」
無視できないものが表示され、更に面倒ごとが舞い込んできたことに眉間にしわを寄せることとなった。




