大自然の栄養満点汁
「ワタクシ!」
「ずずずずっぶちゅぶちゅぶちゅぶちゅ・・・・・・・随分と独特な目覚め方だな」
「うみゃ~、みゃぐみゃぐ」
「もちゅもちゅちゅるるるるっ」
魔物のテリトリー外の洞窟へと訪れた修二は、その洞窟を今夜の寝床と決め早めの夕食を食べていると、行き成り令嬢が飛び起きた。
「ここは?・・・・はっ!? お前は誰ですの! 名を名乗りなさい下民!・・・・・ああ、シャルトテューラの元主人でしたわね。思い出しましたわ。貴方のような下民の名前など興味もありませんので教える必要はなくってよ・・・・はて? なぜこのワタクシがこの様な汚らしい場所に? ワタクシは魔導船にいたはず・・ああ、そういえば落ちてしまったのでしたわ。そして・・・・・貴方に助けられたのでしたね。そうです。はい思い出しましたですわ。そう、そうよ。そうなのよ。助けられたのよね・・・・・・・ふむ・・・ワタクシを助けたことを褒めて差し上げますわ。光栄に思いなさい」
行き成り騒ぎ出したかと思えば勝手に自己完結して、勝手に状況を把握し、上から目線で偉そうに礼を述べてくる。
なんか騒がしいしイラつくな。
ケツでもぶっ叩いて憂さを晴らしてやろうか。
「それで下民、迎えはいつきますの? こんな汚らしい所にいつまでも高貴なるワタクシガボッ!?」
なんか耳障りな事を話し始めそうだったので、修二はその手に持っていた食い物を令嬢の口の中に突っ込んだ。
「おえっ、やめ! うぷっ、や、やべへ」
「文句言ってねぇでさっさと食え。貴族様じゃ食うことができねぇありがたい大自然の恵みだぞ」
「うぷぷぷぷぷぷっーー!?」
今令嬢と修二達が食べているのはハチトウミミズという八つの頭を持った長いミミズだ。
運よくそのミミズを大量に捕まえたので、それを鍋で煮込んで塩で味付けして晩食にしている。
まああれだな。
素うどんのようなモノだと思ってもらえればいい。
うどんがミミズだし、汁もミミズの頭からダシが出ていて臭みとえぐみが酷いことになっているが、気にしてはいけない。
決して美味しいものではないが、栄養価がとても高く、サバイバルでは重宝する食材だ。
魔物なのに小さな子供でも捕まえることが出来る程弱いしな。
「ううぅぅぅぅぅうっ!?・・・・うえぇぇぇぇぇ」
「おいおい、吐き出すなよ勿体ねぇ。大事な食料だろうが」
令嬢にあるまじきことだとはわかっていても、あまりに酷い味に耐えきれず、令嬢は寝床から飛び出し口にいれられた物を吐き出した。
人に見られないように草むらに駆け込んだのは、貴族としてというより乙女の威厳を守らんが為だったのだろう。
「そんなんじゃすぐ餓死しちまうぞ~。ずずずずずずっ、ぶちゅぶちゅぶちゅぶちゅごっくん・・・まっず」
一人旅でこういうゲテモノを食べなれている修二でもやはり文句が出るほどだ。
箱入り娘である令嬢にこの料理を食することは不可能だろう。
というか、箱入り娘でなくともこんな酷い料理を口にできる人間はあまりいないと思う。
「なんてもの食べさせますの! 貴方打ち首よ!」
「はいはい、打ち首、打ち首。お貴族様の大好きなギロチン体験は生き残ってからにしてくれ。ごくごくごく、ふぅ・・・さて、お前等そろそろ口直しするぞ」
「「ぴくっ!?」」
ガサゴソと荷物を漁り始める修二を、二匹の獣は食べるのをやめ見続ける。
そんな二匹の視線を感じつつ、修二は酒を一本取り出す。
匂いで酒とわかったのか、二匹とも見るからに肩を落としながらモソモソとうまくもないミミズ汁食べ始めた。
「お前等わかりやすすぎだろ」
そんな二匹の姿に呆れながらも、修二はリンゴを数個取り出した。
実は宝石の様に赤く、ヘタの部分は黄金。
黄金のヘタからは、ねっとりとした黄金色の蜜が付着している。
リンゴはリンゴでも、蜜リンゴと言われる、最上級に甘いリンゴだ。
普通のリンゴのおよそ20倍もお高い高級果実である。
「速いもん勝ちな。食い終わった奴から好きなだけ食って良し」
「「・・・びゃばびゃばびゃばびゃば! ぢゅずずずずずずずっ!」」
修二の煽りに二匹は一瞬互いに視線を向けた後、競うように食べ始めた。
分け合うと言う発想は無いようだ。
「無視するんじゃないですわ!」
「うるせぇなぁ。お前もさっさと食えよ」
「え? や、やだ! それいやですわ!!」
「やだじゃねぇ。これ食わねぇとここじゃ生きていけねぇぞ」
「いやですわ! そんなの食べるくらいなら死んだ方がまずっ!?」
「わかった。わかった。なら食ってから死ね。ほ~らヌメヌメのブヨブヨのネバネバのグチャグチャのブジュブジュだぞ~。口の中が一気に不快なハーモニーを奏でる最低の飯だ。味わわないで一気に飲み込め」
「ンンーーーー!!」
貴族に対してこんな扱いをすれば、後でどんな仕返しをされるかわかったモノではない。
下手したら本当に首を落される可能性もあるのだが、そうなったらそうなったで、逃げればいいだけ。
強制的に魔導船から途中下車する羽目になったが、ここから他国までの国境線はそう遠くない。
ここならどうとでも逃げられるからな。
なので令嬢の顔が凄く可笑しなことになっていても修二は飯を食わせるのを止めることは無かった。




