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ロストしたら俺のモノ-酒飲み自由人のダメ男生活-  作者: タヌキ汁
第二章 ドリル令嬢と酒切れ編
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ただいま落下中


「ぬおぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

「みぎゃぁぁぁぁぁぁっ!?」


 修二達は落ちる。

 重力に逆らうことなどできず、真っ直ぐ地面に向かって。

 ああちなみに令嬢はお付きの者の裏切りと、落下する恐怖のダブルパンチで精神的に限界が来たのか意識を失っている。

 うむ、無駄に騒がしく無くてとても良い。

 ついでに騒がしい子猫も意識を失って欲しいものである。


「うっせぇぞクソネコ! 落ちてるくらいで騒ぐなぁ!!」

「ふぎゃっ! みっぎゃっ! ふぎぎみみゃぁぁぁっ!」


 不満を口にしているのだろうが、子猫の言葉がわからないのであっているのかは知らない。

 と言うか今はそんなのどうでもいい。

 今は生き残るために悪あがきをしなければ。

 まずは意識を失っている令嬢を足で挟み支えると、そのまま切られた縄で己の身体に縛り付け固定する。


「ふにゃにゃっ!?」

「ばっか! ちゃんと掴んでろっ!」


 縛っている間、子猫が令嬢の腕からすっぽ抜けてしまい、一匹だけ宙を舞いそうになったが、すんでの所で捕まえると、そのまま修二の服の中に突っ込んだ。

 爪を立てているのか胸元がチクチクと針を刺すような痛みを感じるが、まあ状況が状況なので致し方ないと思い諦める。


 次に修二はアイテム袋からゴツイ手甲を取り出した。

 このゴツイ手甲には風の魔石が大量に使用されており、一度だけ強力な魔法を放つことが出来る。

 地面すれすれに魔法を放てば落下の衝撃を押さえられ、怪我だけですむはずだ。

 まあ、時速200キロ近い速度で落下しているのに、ドンピシャのタイミングで魔法を放てるわけないが。


「少し回るぞ! 今度はすっぽ抜けんなよ!」

「み、みゅゃっ!?」


 子猫の了承を聞く前に取り出した手甲を咥えると、そのまま令嬢を抱きしめながら身体を丸める。

 それだけで制御を失ったかのように修二達の身体は回転し始めた。


「ッ! ッ!!」


 声にならない叫びが子猫から発せられるが、それに構っていられる余裕はなく、修二は回転しながら必死に右腕に手甲を嵌めていった。

 そして数秒後には手甲が装備できると、回転を止めるために、身体を開きゆっくりと態勢を立て直していった。


「落下予測地点に藁山か衝撃が吸収されそうな生物を表示! この際魔物の死骸だろうが、肥溜めの山だろうが柔らかけりゃあどこでもいいぞ!」


 態勢を立て直している間に、能力を使う。

 地面すれすれに放つのがベストだが、流石に時速200キロ近く出ている中でそんな芸道ができる訳もないので一度減速した後、柔らかな場所に落下する必要があったからだ。

 だが、そうそうそんな場所がある訳もなく、検索結果は該当なしと表示されてしまった。

 むしろ、修二達が落ちる場所は木々が生い茂った森の中で、柔らかそうな魔物もその森には存在しなかった。


「チッ、ついてねぇな。なら、枝が密集している場所を優先的に表示! 勿論棘とか生えてない柔らかそうな種類を頼むぜ!」


 その条件に該当する場所がいくつかあり、ゆっくりと迫る地面に視線を向ければその該当場所が赤く表示された。


「角度的に・・あそこか・・・・・うまくやらねぇと」


 落下すべき候補を決めた修二は、一度だけ右腕を真下ではなく斜め下に向けた。

 真下に魔法を放っては、衝撃を和らげてくれる木々が吹き飛ぶことになるので気を付けなけらばならない。

 でなければせっかく能力で探しあてた意味が無くなるのだから。


「目測を誤れば死ぬ。ビビってタイミングを誤っても死ぬ。うまくいっても魔道具の反動で片腕がおしゃか、更には全身打撲のプレゼント付きか」


 強力な風魔法を一度だけ放てる魔道具。

 それは力を持たない者にとって、とても便利な魔道具ではあるのだが己の実力以上の力を発揮すると代価を払うことになるのは、いつの世も同じである。

 一生魔法が使えぬ身体になったり、使用者の命を求められたりと代価は色々だな。

 まあ、今回修二が使う魔道具はそこまで危険なモノではなく、一時魔法が使えなくなるのと、修二が予想している通り反動で片腕が使い物になるだけだ。

 命の危機がさほどないのでマシな部類には入るだろう。


「おしゃかになる程度ならいいが、運が悪けりゃ利き腕すっぱり無くなっちまうかもな。まっ、教会に金積めばどうにかしてくれんだろ。やっぱり世の中金だぜ・・・・・しかし・・クカカッ! いい眺めじゃねぇかぁぁぁっ!!」

「み、みにゃぁ?」


 危機的状況にもかかわらず、行き成り楽し気に叫び出した修二に、子猫は頭がイカレタのかと心配する。

 そんな子猫に修二は笑みを浮かべながら話しかけた。


「翼のねぇ俺達が裸一貫で空を舞うなんざそうそうできる体験じゃねぇぜ! 下手すりゃ死ぬかも知れねぇし超コエェェェッけど、絶対死ぬと決まった訳でもねぇ! なら、アホみてぇに縮こまってやるもんかよ! 危険に身を置くベテラン冒険者! 舐めんじゃねぇぞ! こんにゃろぉぉぉぉっ!!」


 空を舞ってんじゃなくて落ちているんだとツッコミたいところだが、今の修二を見て茶々を入れたくないと思った子猫は黙って修二を見つめた。

 こんな危機的状況下でも、最後まで楽しもうとする生物があまりにも可笑しくて眩しくて、恐怖に屈さない勇ましいその姿が子猫の目にはとても輝いて見えていたからだ。


「アホ面晒してねぇで笑えやバカネコ! それとも怯えてんのか? なら雑魚いお前に有難いお言葉を聞かせてやる!・・・自分失敗しないんで、ってな! クカカカカカカカッ!!「バキッ!」・・・・かぁ?」


 無駄にカッコつけようとしたのか、見せつけるように右腕ににはめた手甲を掲げる修二であったが、その瞬間を待っていたと言わんばかりに、魔力の塊がその手甲に勢いよくぶつかった。

 しかも内側に設置してある壊されてはいけない部分に向かって・・・・。


「・・・・・・・・・・」


 本来手首を軽く捻ると魔法を放つための発射口が開くようになっているのだが・・・作動しない。

 魔力を流しても、こんなもんいるか! と言わんばかりに勝手に魔力が外に放出され、うんともすんとも言わない。


「み、みにゃ?」

「ク、クカカカカッ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・壊れた」

「みぎぃっ!?」


 魔道具は便利な道具であり、弱者にとって強力な魔法を放つことができる夢のような道具であるが、取り扱いには気を付けなけらばならない。

 モノによっては精密機械並みに脆いのだから。

 というか、完全に使い物にならなくなり、このまま何もしなければ皆仲良く落下死が確定したことになる。


「・・・・・・いやぁぁぁぁぁぁっ!? 助けてモーセェェェェェッ!!」

「みぃみゃーーーごーーー!!」


 お前数秒前と態度が変わりすぎだろ!!

 数秒前の感心を返せ! とブチギレる子猫である。

 うむ、キレてもいいと思うよ。


「うるせぇバカ野郎! 最悪な状況でも生き残る可能性があったんだよ! ならそういう時は無駄にカッコつけるのが男ってもんだ! さっきのセリフだって一度は言って見たかったんだっ!!」

「みゃーぎっ! ぎみみみぎゃーーー!(ヘマしている時点でものすっごくカッコ悪いんじゃボケェ!!)」

「ああん! このクソネコバカにしやがって! なにも出来ねぇ役立たずの癖してバカにしやがって! このバカネコ!」

「みっみゃみゃみゃっ! みゃーーいーーー!!(バカって言うほうばバカなんだ! バーーカーーー!!)」


 能力を使っている訳ではないのだが、なぜか会話が成立していることは一旦置いておいて、修二の助けを求める声を聞いて、モーセの虫が一匹現れた。


「おお! 流石モーセ! 頼りになるぜ! さあ、俺を助けるのだ!」


 世界最強で最高のダチ。

 虫を操るという能力を持ち、一度に操れる虫の数は億を超える。

 その虫達の一部が今も俺を護衛してくれていた。

 俺の意識が奪われたときや本当にヤバイとき、もしくは今回の様に俺から助けを求めない限り、率先して助けには来てくれないが、それでもとても頼りになる護衛達だ。

 そう、とっても頼りになる護衛達なのだが


「おい、なんで首を振る。了承じゃねぇだろそれ。否定のほうだろそれ!」


 なぜか今回は首を横に振られ、拒否されてしまう。

 何故助けてくれないのかと修二は問い詰めようとしたが、虫が真横をチョンチョンと差すので視線を向けてみる。

 すると何故助けられないのかを理解させられ、修二は落下中にも関わらず、器用に土下座の姿勢をとる。

 土下座の姿勢のせいで令嬢が物凄い体勢になっているが気にしない。

 物凄いエビぞり状態で背骨とか腰とかマジで痛めてそうだけど気にしない。

 気絶しているコイツが悪いのだから。


「いや~。マジで頭下がるわ~。モーセには足向けて寝れねぇわ~」


 お忘れかもしれないが、ここは嵐の中。

 しかも普通の嵐ではなく魔力の塊が四方八方から飛びかう嵐の中だ。

 落下中とはいえそんな嵐の中にいれば、魔力の塊が牙をむく。

 だが修二達は何事もなく落下できていた。

 その訳は、虫達が襲い掛かる魔力の塊から修二を守っていたからに他ならない。

 今も数千の虫達がその身を盾にして修二を守っていた。

 そんな修二の与り知らぬところで奮闘してくれている虫達に対して、流石の修二も失礼なことは言えなかった。


「つか、どうすんだコレ! マジで打つ手ねぇけど!?」


 最後の頼みの綱であるモーセの虫達が使えなくなり、これは本格的にヤバイと思う修二。

 今までなんだかんだと余裕があったのは、最終的にモーセの虫達がどうにかしてくれると言う安心感があったからだ。

 人任せもいい所である。


「みみゃ~~ん」


 そしてこんな状況下では、人の本質というのがでる。

 子猫は服の中から顔を出すと、目の前の虫に向かって幼い子猫特有の甘えた声を出しながら、目を限界まで開き、小首をかしげた。

 己の種族と容姿を最大限に生かした戦法で虫に媚びを売ったのだ。

 虫の大きさは丁度子猫より一回り小さい程度。

 頑張れば子猫くらいなら何とか掴んで飛べそうと考えたのだろう。


「テメェだけ助かろうとしてんじゃねぇ! ずりぃぞ! こんにゃろう!」

「みにゃーにゃ! みみみみみっ!(オレはこんな所で終わる猫じゃない! オレを待っているイケ猫達がいるんだ!)」

「テメェみてぇな化け猫に擦り寄る雄猫がいる訳ねぇだろ! 現実みろ! 現実!!」

「んにゃと! みにぇ!!(んだと! テメェ!!)」


 そして始まるいつもの喧嘩。

 死ぬ寸前であってもこの二人は変わらないのか、もはや呆れを通り越すほどである。


「・・・・・・・」


 そして虫はそんな二人のやり取りを見て、付き合ってらんないと言いたげに首を振るとそのまま仲間達の元へと飛んでいった。


「おらっ! クソネコ! 俺のクッションとなって死ねぇーー! 俺は一秒でも長く生きるぅぅぅぅっ!」

「ミンギィシャァァァァァ!!(お前がクッションになれこのヤロウォォォッ!!)」


 そして醜い争いを続けたまま修二達は落ちて行った.



(完?)




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