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ロストしたら俺のモノ-酒飲み自由人のダメ男生活-  作者: タヌキ汁
第一章 日常生活と非日常編
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美しく可憐であっても毒はある


「ひでぇめにあった~」


 何とか依頼を受けられた修二はギルドからと言うより、シエルから逃げるようにギルドを後にした。

 シエルを怒らせた理由の全ては己に原因があるのだが、本人は全く反省しておらず、ブチブチとシエルの文句を言う。

 本人を目の前にすると実力差で何も言えず、無視はできても逆らえない存在であるため、仕方が無いと言えば仕方が無いが、あまりにもその姿は惨めであった。


「あぁ~あ、仕事する気も奪われちまったなぁ~。だけどな~、ブチギレ鬼シエルの後だとなぁ、少しは成果出さねぇとマジで殺されそうなんだよなぁ」


 ブチギレ鬼シエルの姿を思い出し、このまま何もしなければ確実に俺を殺しに来るかもしれないと思い身震いする。

 シエルが鬼状態であると、握力だけで俺の頭はトマトのように握りつぶせるほどだ。

 流石元Aランク。

 流石元二つなの化け物冒険者。

 これ以上下手な怒りを買うのは得策じゃねぇ。


「・・・・・・・しょうがねぇ。ちっと真面目にやって、今日中に終わらせっか~。あ~めんど~」


 修二は肩を落としながら、左手で口を隠し、能力を使う。


「範囲10キロ以内で検索 熱鉱石の欠片が使われ装飾にDとPの文字が書かれているブレスレットを常時表示 接触面は特に制限なし 元使用者ディドロとその妻プラミアの私物であった可能性の高いモノから順に案内開始」


 そして、依頼内容を設定した修二は白い矢印が指し示す方向へと進んでいった。





 修二がいなくなったギルドの空気は悪かった。

 主に怒りの矛先を失った為にシエルが醸しだす空気が悪くしているのだが、実力的にも、物理的な実力でも逆らえない職員達はただ嵐が過ぎ去るのを待った。

 とはいえ不満が無いわけでもなく、皆休憩中に個室でブチブチと文句を言い合っていた。

 ただ、シエルに対しての文句ではなく修二の文句をである。

 まあ、修二の態度が原因であるので仕方のない事だろう。


「なんでアイツ、まだ冒険者してんの? まともに依頼受けないなら冒険者やってる意味ないじゃん」

「ダンジョンにもいかないで、いつも一人で飲み歩いてるよね。マジ寂しいやつ~」

「しょうがないんじゃないの。貴族でもないのに仕事もしないで遊び惚けてる奴なんかと、付き合っても何の得にもならないじゃない。やっぱ友達だろうと将来性のある人じゃないと付き合いたくないわよねぇ~」

「「「わかる~」」」


 修二はいつも一人で飲み歩いているのは確かだが、別に友達がいない訳ではない。

 類は友を呼ぶとも言うし、同じようなダメ男との知り合いもいれば、いたって普通の友達もいる。

 まあ、一人で飲む理由は、ただ単に一人飲みが好きなだけであり、わざわざ知り合いを誘う暇があるなら一秒でも長く一口でも多く酒を飲みたいと思っているだけだ。

 あとは、なんだかんだと修二と飲み歩きに付き合える酒豪が少ないのが理由でもあった。


「それに貯金も大事よね~。蓄えがないといざという時路頭に迷うことになるし~。まっ、アイツが大金貨ほどの蓄えがあるなら少しは遊んであげてもいいけど~」

「アイツが大金貨なんて大金蓄えている訳無いじゃん。一応10年前くらいはBランクも目前の期待の冒険者とか言われていたらしいけど、それも眉唾物だしね。あっ! そう言えばアイツ10年前にある土地を買って、そこがミスリルの鉱山だったって話聞いたことあるよ! それが本当なら物凄い大金持ちだったりして!」

「それこそ眉唾物じゃない。ミスリル鉱山の所有者が危険な冒険者業に固執する意味がわからないわ。ていうか、碌に依頼受けないでただの身分証代わりにしか利用してないじゃない。お金あるなら貴族連中みたいに金で身分証買えばいいじゃない。国なんて金さえ積めば大抵のことは首を縦に振るんだし」

「確かに~、ってことはやっぱアイツなんの旨みないねぇ~」

「月に一度一件だけ面倒な依頼を片付けてくれるだけの能無しだもんね。別にいなくなってくれてもいいレベルよねぇ」

「「「たしかに~」」」


 そう言うと、受付嬢達はケタケタと笑いながら話に花を咲かせる。

 なんとも修二の評価は受付嬢達には低いようであるが、それもこれも日頃の行いが悪い修二が原因であるの仕方がない。


「あらそろそろ時間だわ。さあ、仕事、仕事」

「えぇ~もう休憩終わり~、もっと休みた~い」

「アイツみたいに落ちぶれ貧乏になりたいなら止めないわよ?」

「いや~! 貧乏飲んだくれと同レベルとかマジ勘弁」

「落ちぶれない為にお仕事がんばろー!」

「「「「おーーー!!」」」」


 受付嬢達は最後まで修二を話題に士気を高め、休憩室を後にした。

 そんな光景を修二が見たらさぞかしショックを受ける・・・訳もなかった。

 基本自分が皆にどのようにみられているかなど想像できてしまう。

 それを知っていても、己の行動を変えようとも改善しようともしないのは、好きなだけ酒を飲んで、好きなだけ寝て、好きな事だけを好きだけやれる現状に満足しているからだ。

 他人からなどの目など気にしない。

 働く意味もないのに、何故他人の目を気にしてあくせく働かなければならないのか。

 楽に稼げる方法があるのに、何故命の危険を冒してまで危険な仕事をこなさなければならないのか意味がわからない。

 冒険者とは危険な仕事で、危険であるが割の合わない仕事ばかり。

 一攫千金を得る前に死にゆくのが冒険者の人生。

 一攫千金を得ても、更なる金銀財宝を求めて、冒険に出ては死にゆく者ばかり。

 人の欲が尽きることは無く、人の欲が腕っぷしだけで叶えることが出来る簡単な職業が冒険者だ。

 最後には一人寂しく無残に死ぬ運命であろうとも、一時の財宝を、名声を求めて冒険者達は止まらないだろう。

 そんな冒険者になりたくない修二は、好き好んで危険な仕事は受けない。

 金があるのだ。

 金を簡単に得られる能力があるのだ。

 だったら、危険とは関わらない方がいい。

 長く楽しく生きていける方にいいに決まっている。

 金では買えないモノがあることを理解していても、それ以上に金で買えるモノの方が圧倒的に多い事を理解している。

 故に彼は変わらないだろう。

 死ぬまで彼は自分本位で、己が望むままに心のままに生き、金の力で自堕落な生活を送り続ける。

 それを成せるだけの能力を持っているのだから。




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