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ロストしたら俺のモノ-酒飲み自由人のダメ男生活-  作者: タヌキ汁
第二章 ドリル令嬢と酒切れ編
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落ちる令嬢


 修二が戦場で逃げ回り、安全地帯でヤジを飛ばしている頃、令嬢は子猫を抱えて柔らかなソファーの上に身を固くしていた。

 供の者も近くに控えてはいるが、皆一様に何かに掴まり急な揺れに対応できるように踏ん張っていた。

 こういう時でも座っていられないのはなんとも可哀想ではある。


「いつになったら終わりますのよ!」

「みゃあぁぁぁぁぁ~~~ん・・むにゃむにゃ」

「なんでシャルトテューラはそんなに余裕ですの!?」

「むうみぃ~~~~」


 ただ子猫の場合は皆とは違いのんびりしていた。

 元々酷い環境で生まれた子猫にとって、ちょっと揺れるくらいなんてことない。

 酷く揺れていても、別に地面に叩きつけられるわけもなく、高い木の枝よりも足場がしっかりしているのだから怖くない。

 まあ、知能はあっても魔導船が落ちるなどと言う考えには至らない故に余裕なだけであるが。


「うみぃ~~~~ん」


 ゴロゴロと寝転がりながら、飯くれ飯と言わんばかりの声を発するその姿は、どこぞのダメなおっさんを連想させられる。

 いや、自分で食べるのではなく人を顎で使おうとしている時点で、ダメなおっさんよりも尚悪くなっているかもしれない。


「変な声出してないで少しはシャンとなさい! 貴方はこのワタクシのシャルトテューラですのよ!」

「みゃいみゃい」


 そんな変な名前はお断りだと言わんばかりに子猫は首を横に振るう。

 だがそんな子猫の想いは届かないのか、令嬢は貴族のペットはこうあるべきだとか、こうしなければならないとか、理解できないことを淡々と話し始める。

 昨日から行き成りこんな風に話しかけてくるようになったのだ。

 全く行き成りなんなんだよと文句を言いたいみゃ!

 というより、昨日何かあったような・・・・・・気のせいにゃな!


「シャルトテューラ! ちゃんと聞いていますの!」


 だからシャルトテューラじゃにゃ~し!

 名前は無いが、だからと言ってその呼ばれにくい名前は受け入れられみゃいからな!


「みぃみゃ~~」


 もぉ、コイツ面倒だよぉ~。

 無駄にからかっては突拍子もない事をしてくるバカ野郎がいないのはありがたいが、流石にこうも口うるさいと流石に嫌になってくる。

 それにアレだ。この子にはアレをさせられるから嫌だ・・・アレがなにか思い出せないけれど・・。

 まあなんだ、シュウジもオレがいなくなって寂しがっているだろうし、一眠りしたらぼちぼち帰ってやるかと思いつつ、子猫は静かに目を閉じ始めたが、


「み?・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 目を閉じきる前にゾワゾワとした悪寒が全身に走り、起き上がる

 落ち着きなく周りをキョロキョロと見回し、なぜかここに居たくないと感じた子猫は令嬢の膝の上から逃げ出そうとした。


「ダメですわよシャルトテューラ! まだお話は終わっておりませんわ」


 だが、令嬢に捕まり逃げ出すことはできなかった。


「みみゃみゃみゃみゃみゃ! みぃぃぃぃぃぃっ!!」

「きゃっ!? もうどうしましたのシャルトテューラ! 行き成り暴れてはいけませんわ!」


 ここに居たらマズイ。ここに居たくない。ここはダメな所だと本能が危険を察知し暴れるが、力の弱い子猫がいくら暴れた所で逃げ出せるわけもなく、そのまま令嬢のフワフワドレスに包み込まれるようにして身動きが取れなくなった。


「みぃみゃみゃ! うみみみみぃぃぃっ!!・・みっぎゃっ!?」

「あら、やっと落ち着いたの? もういったいどうしきゃゃゃゃゃゃゃっ!?」


 そして逃げ遅れた子猫と令嬢がいる部屋に巨大な魔力の塊が襲い掛かり、部屋の一角が抉られ、抉られると同時に令嬢が腰かけていたソファーが傾き外へと放りだされた。

 放りだされた瞬間運よく長いドレスが突出した木の棒に絡まらなければ、そのまま落ちていったことだろう。

 本当に運がいい。


「いやぁぁぁぁぁぁっ!! 助けて! 誰か助けて!!」

「みぎゃぁぁぁうぅぅぅぁぁあぁぁぁっ!?」


 絡まったドレスがゆっくりと破れていき、一分もしないうちに外に放り出される。

 それがわかり令嬢は必至に助けを呼んだ。


「助けて! 助けてっ! たすけてぇぇぇぇっ!!」

「「「「・・・・・・・・・」」」」


 だが、その声が聞こえているにもかかわらずお供であるメイドや護衛達は動こうとはしなかった。


「怪我をしたものを治療しつつ、お嬢様が落下しだい予定通りに行動なさい」


 それどころか、メイドの一人がはっきり令嬢を助けないと口にだしていた。


「えっ?・・な、なんで?」

「・・・・・・」


 令嬢の困惑する声が聞こえているにもかかわらず、メイドは何も答えず静かにスカートを持ち上げ優雅にお辞儀する。

 まるで命綱であるドレスが破れて落ちる瞬間がわかっていたかのように、メイドがお辞儀をすると同時に、ドレスは破れ令嬢と子猫は落ちて行った。


「いやぁぁぁぁぁぁっ! やだぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「みぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」





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