ブリッジにて
「お疲れ、なんかあったか?」
「ああ、お疲れ。いや、相変わらず何もない静かな空さ」
朝日が昇り始めても可笑しくない早朝に二人の操縦士がブリッジで挨拶を交わす。
早朝であるため二人の操縦士以外にもう一人予備の操縦士がいるのだが、そいつは昼間の航行で疲れているのか、今は静かな寝息をたてていた。
他にも船員はいるが皆ただ席に座り、欠伸を噛み殺しながら暇そうにしている。
「船のほうは?」
「そっちも今のところ問題なしさ。今も点検はしているようだから、全て異常なしとは言えないが」
「そりゃあ良かったと言うべきか。しかし、それならなぜ昼間あんなに揺れたんだ?」
「さあ? それは答えようがないさ。バランス計器も魔力エンジンも異常は見られないからな」
「そうなると、コイツの操縦ミスになりそうだな。連帯責任とか嫌だぞ」
「確かにこっちにまで始末書と拳骨が飛んできそうだが、まあ幸い高慢ちきな貴族も、強欲な商人や積み荷も無事なんだ。それ以上に酷い厳罰が無いだろうから仕方ないですまそうぜ」
魔導船は優秀な技術者達の手で作られた船であり、積み荷を大量に運ぶことを想定して作られた船だ。
その積み荷には貴重で割れやすい陶器なども含まれている為、魔法や魔道具でガッチガチに振動の対策はされていた。
昼間の様に船が揺れるなどと言うことは人為的でない限りあり得ない。
「さてと、そろそろ俺も休ませてもらうさ。後はよろしく」
「ああ、任せろ・・・とその前にコイツも一緒に連れて行ってくれないか? 流石に隣で寝ていられるとイラついてくる」
「そこまで気になるほどでもないと思うけど・・・まあ了解さ」
操縦士は静かに眠る仲間を背負いブリッジを後にした。
昼間やらかしておいて、緊張感も欠片もない仲間に呆れながら、もう一人の操縦士は舵を手に取り、僅かに明るくなりつつある空に視線を向けた。
そして、それから数時間後。
「護衛は何やってんだ! さっさとあんな蚊トンボ始末してくれよ!」
「左舷より魔岩風! 数三! っ!? 後方より更に巨大な魔岩風! 数五!」
「全ての魔力を後方障壁に集中させつつ回避行動! 全員衝撃に備えろ!」
魔導船は大量の空の魔物に襲われ、更には大自然の脅威にさらされることになった。
雨風降り注ぐ嵐などではなく、この世界で最も脅威とされる大嵐に。




