青空の中に
修二は一人、バーで酒を煽る。
共に食事の席にいた子猫はおらず、そんな子猫がいないにもかかわらず子猫の分の料理を頼むなどと言ったお約束も無く、本当に修二は一人で静かに飲める時間を楽しんでいた。
元々一人で酒を飲むのが好きな修二。
騒がしいのは嫌いではないが、だからと言って毎日宴会をしていたいわけではない。
たまにはアダルティでハードなボイルド風に飲みたいときもあるのだ。
「マスター。空酒を樽で追加だ」
ただ修二の飲み方ではどうやってもそんなお洒落に飲めるわけもなく、そのことも本人は理解している為、ただ雰囲気を楽しんでいるだけに過ぎない。
まあ、この船に酒一杯で金貨数枚吹き飛ぶほどの高級酒が常備されていればその限りではないが。
「ごくごくごくごく・・ふぅ、やっと一息付けたって感じだな。たく、貴族に関わったせいで丸二日間も潰されたぞ」
高い金を払って、危険もなくのんべんだらりと旅する予定が潰された。
魔導船を利用するのだから貴族がいるのは致し方が無いにしても、少しは組み分けしてくれれば貴族のガキに絡まれることもなかったのにと思う修二である。
「まっ、酒を飲んでいる限りあの面倒な巻きグソは関わって来ねぇだろうから、ゆっくりできそうだ」
後は巻きグソ令嬢以外の貴族や貴族の従者に気を付けて置けば当初の予定通り、のんべんだらりとした空の旅が送れるだろう。
今回は気を抜かずに貴族達の位置を把握しながら飲もうと、気合を入れながら修二は届いた酒樽を抱えながら飲みだした。
ガタガタッ
「おっとと、あぶねぇなおい」
行き成り船が大きく揺れたため、思わず酒樽ごとひっくり返りそうなった。
というか、この船に乗ってここまで大きく揺れたのは何気に初めてのことだ。
天気が崩れたか?
そう思い視線を外へと向けるが、天気は崩れておらず青空が広がっていた。
強風でも吹いたのだろうかと思いつつも、今は特に問題なさそうなので修二は気にせず、酒を煽った。
うむ、久しぶりにゆっくりと飲める酒は美味い。
そんな事を思いながら、まったりと酒を楽しんでいた修二であったが、この時もう少し注意深く目を凝らしていれば青空の中に紛れる違和感に気付けていただろう。




