表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロストしたら俺のモノ-酒飲み自由人のダメ男生活-  作者: タヌキ汁
第二章 ドリル令嬢と酒切れ編
63/232

許される罪


 上空とは空気が薄く、気温が下がり寒くなるモノである。

 だが、この魔導船は魔道具や魔法で快適に過ごせるように施されていた。

 故に甲板に出て優雅にお茶を楽しむことも可能であり、


「クソガーーッ!!」


 簀巻きにされて船の外にぶら下げられることも可能であった。

 前回修二が子猫にしていた事と同じことが、今度は己の身に起きていた。

 ギルド長から自白剤を打たれた後、半日後には正気に戻ることが出来た。

 普通の自白剤ならばまず廃人になっていそうなものだが、ギルド長の調合が良かったのか、それとも解毒剤が良かったのかわからないが、無事に廃人にならずにすんだ。

 変わりに物凄い吐き気に襲われ、身体も風邪を引いたかのようにだるかったが、まあそれも半日寝ていたら大体治った。

 なので、牢から出てバーで酒を飲んでいたのだが、その姿を巻きグソ令嬢の付き人に見つかってしまい、そのまま捕まり、巻きグソ令嬢の指示の元簀巻きにされ外に放り出されたと言う訳だ。

 本調子であれば付き人程度に捕まることも、ここまで酷い目に合わされる前に逃げきれたと言うのに・・・ギルド長許すまじ。


「おいこらっ! 人としてこれはどうなんだ! 落ちたら死んじまうだろうが!!」


 そして始まる己の事を棚に上げた言動。

 少しでも己の行動を振り返ればこんな発言は出てこないのだが、残念なことに修二は己の過去にやましいことなどなに一つないと考えている残念で自己中心的な男であった。


「見下げ果てた男ですわ。貴方がこの子にやったことだと言うのに」

「知るかバーーーカッ! つか、面白れぇ恰好してんなクソネコ! スゲー滑稽! では無くて! スゲェ~滑稽! では無くて! スンゲェェェェッ滑稽! クカカカカッ! カカカカカッ! カヒュヒャヒャヒャヒャヒャッ!」


 薄いピンクのフリフリドレスに身を包まされた子猫を見て、そのあまりの似合ってなさに笑った。

 されるがままにされている無様な姿に声を大にして笑った。

 失ってはいけない何か大切なものを奪われたことで、もはや生ける屍の様になっている子猫の表情を見て呼吸困難が起こりそうなほど笑った。

 貴族に失礼な態度を取らないように心掛けていたというのに、今ではこのざまである。

 まあ、元々口調以外は貴族に接する態度ではなかったので、変わっていないと言えば変わっていないのかもしれない。


「・・・・・・・・・」


 修二の馬鹿笑いの声を聞いて、子猫がするりと令嬢の腕の中から抜け出し、修二が繋がれている縄へと降り立った。

 未だに子猫の表情に生気は無い。

 だが、そんな状態でも修二にバカにされていることは理解できたのか、身体が自然と動き出し


「ヒヒャヒャヒャヒャヒャヒャッ!!「ガリガリ」・・・・・・・あん?」


 修二の命綱である縄に爪を立てひっかき始めた。


「何やってんだクソネコ!! テメェ俺を殺す気かっ!!」

「・・・・・・・・・・」


 いつもの様に何かしらの反応が返って来ず、それが逆に不気味だ。

 修二は能力を使うまでもなく子猫が本気で縄を切るつもりだと本能で察知しすぐに視線を令嬢に向ける。


「おい! そいつ止めろ! コイツマジで切るつもりだぞ!!」

「あの時の貴方と一緒ではありませんの。あの時この子がどれほど恐怖を味わったか知るいい機会ですわ」


 助けを求める修二の言葉に耳を傾けることは無く令嬢は冷たく突き放す。


「何がこの子の恐怖を味わえだ! あれはそいつの為に訓練してやってただけだ! これくらい一人で上がって来れねぇと今後足手纏いにしかならねぇからな!!」


 本来は恐怖でもって子猫の能力が開花する手助けする為の訓練ではあったが、まあわざわざ子猫が能力持ちであることを教えるなどとバカなことはしない。

 下手に能力持ちと知られれば、飼殺されるだけではなくマジで解剖されかねないからな。


「でしたら、お手本を見せて頂きたいですわ」

「・・・・・はあ?」

「この子にやらせようとしたことを貴方がおやりなさい」

「はぁ? 何で俺がそんな面倒な事しなくちゃならねぇんだ! ふざけんな!!」


 扇を広げ口元を隠しながらそんな事を宣いだす令嬢。

 暇つぶしなのか知らぬが、何故そんな疲れるようなことをしなければならないのか。

 いいからさっさと引き上げろよな。


「もしも、一人でここまで登って来られましたら、今までの失礼な言動に目を瞑って差し上げますわ。更に、ワタクシの許可なく牢を抜け出したことも許して差し上げますわ」

「ああ? そんな事許されんでも別に「言っておきますが、今の貴方は貴族に対する不敬罪として斬首することも可能ですわ。考えてお返事した方がいいですわよ」・・・・う~わ」


 流石貴族頭が悪すぎる。

 少し言葉遣いが荒いだけで斬首とか言って来る、その思考があり得ない。

 人の命をなんだと思っているのか。

 つか、現状斬首とあまり変わらぬ刑を執行されているのだが?


「ッチ、おい一つだけ条件追加だ! それを飲むならその勝負に乗ってやる!」

「この状況で何故条件などと言えるのか理解に苦しみますが、まあいいですわ。寛大なワタクシはその条件を聞いてあげますわ」

「おおっ! マジか!?」


 もはやどうにでもなれの精神で口にした修二だったが、意外や意外、令嬢は条件の内容を聞く前から了承した。

 なかなか話の分かる奴だと思う修二であるが、令嬢からしたらその追加条件と言うのが何であるか予想できたために了承しただけに過ぎない。

 修二の条件と言うのは子猫を返せと言うことだろうと。

 か弱くカワイイ生き物をイジメたくなるのはわかるが、暴力や虐待などのイジメは違う。

 それは令嬢として許せない事であったので、子猫を虐待していた修二から子猫を無理やり奪ったのだ。

 だが、その考えは間違いであったことを、子猫と過ごして理解することとなった。

 定期的にお風呂に入っているのか子猫の毛並みがとても綺麗でノミが一匹たりとも見当たらず、何よりしっかり食事を与えられているのかやせ細ってなどいない。

 更には人を恐れることはなかった。

 日々暴力を振るわれていれば、嫌でも人に怯え震えるもの。

 だが、子猫にはそんな素振りは無く、我儘で手のかかる騒がしい子であった。

 故に令嬢は己の勘違いであったと反省し、子猫を持ち主に帰すべきだと考えていた。

 ただ流石に貴族としての面子があるので頭を下げる訳にもいかず困っていたのだ。

 なので修二の提案は令嬢からしても渡りに船だった。


「なら今後俺の酒飲みの邪魔はするなよ!」

「・・・・・・はい?」


 まあ、令嬢の考え通りに行けばの話ではあるが、残念なことに修二が子猫を気に掛けることは無かった。


「よし! 言質は取ったぜ! なら見せてやるよ!」


 令嬢の疑問符交じりの返事を聞いた修二は、了承したと勘違いした。

 その勘違いを正す間もなく、修二は一瞬で両手の縄を解いた。

 修二を簀巻きにしたのは令嬢の付き人達。

 護衛ではなくただの付き人。

 縄の縛り方もよくわからず、荷物を結ぶようにすればいいと考えている素人芸である。

 そんな奴等の目を盗んで縄を解けるように細工するなど簡単な事だ。

 流石に全身の縄を解ける細工はできなかったが、両手を自由にできれば解けたと言っていいだろう。

 そして、そのまま修二は縄をするすると登っていき、危なげなく令嬢の元までたどり着いた。


「それでは寛大なるお嬢様、私目はこれにて失礼致します~」


 絡みついていた縄をナイフで切った後、優雅にというか若干小馬鹿にしながら挨拶してその場を後にしようとする。


「ちょっと貴方! この子はいいのですの!」

「?? 別にいらねぇよ。・・じゃなかった。いりませんですよ~。別に俺はそいつの保護者って訳でもねぇですし、ただそいつは俺の旅について来ただけです。いついなくなろうが、誰についていこうがそれはそいつの勝手ですわ」


 エルフィナを誘う(おちょくる)ために守ってやるなどと言って差し出した手を掴んだのは子猫だった。

 なので、面倒は見てやるし、能力が使えるまで、己を守れる程度に成長するまで守る気ではいたが、自ら離れるならば追いかけるつもりなど無い。

 無駄に逃げ足の早そうな子猫ならば逃げられるだろうし、仮に逃げられないとしても助けを求めて来ない限り手を差し出すつもりはない。

 というか、なんだかんだ言って令嬢との生活も楽しんでいるのかもしれないので邪魔する気はない。


「と言うことなので、そいつの事は好きにしてくれて一向にかまわないですぜ。まあ、そいつは飽きたら勝手に逃げ出すと思うので、逃げ出したからと言って俺の事は責めないでくださいよ」


 そういうと、修二はもう関わり合いになりたくないと言わんばかりに、逃げるようにその場を後にした。

 そんな修二の言動に令嬢は己の思い描いていた主従関係でないことに茫然としていた。


ガリガリガリガリッ


 ちなみに子猫は未だに修二が結ばれていたであろう綱をひっかき切り落とそうとしていた。

 無意識とはいえ日頃どれだけ恨みを買っているのだろうか・・・。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ