お勝負ですわ
「・・・・最近の貴族様の流行りはイケメンをイジメることだったりするのですかねぇ~?」
今修二は椅子に縛り付けられている。
あれからハンモッガの通路で子猫に猫パンチを食らい続けていたが、途中で騒ぎを聞きつけた別のハンモッガが現れ助けてもらうこととなった。
その助け方が力任せに押したり引っ張ったりする、なんとも力任せな対応で、首が取れるかと思うほど酷い目にあったが、まあ助かったので良しとしよう。
そしてボロボロになりながらもなんとかバーで一服していた所、貴族の私兵に捕まり、なぜか逃げられないように椅子に縛り付けられたというわけだ。
「イケメンであれば流行ったかもしれませんわね。まあ、貴方のような不細工な下民をイジメるなんて時間の無駄ですからそのような心配は無駄ですわ」
目の前には金髪巻きグソ令嬢が優雅に紅茶を飲んでいた。
お前の目の前で今まさにその下民様が椅子に縛り付けられて身動き取れなくなっていると言うのに、これをイジメと言わないとか、頭が巻きグソの野郎はやはり頭の中もクソが詰まっているのだろう。
「まあ、それはいいとして、なぜ俺はこんな目に合っているのですかね? なにか御用っすか?」
一応相手が貴族であるため、できるだけ失礼にならないように敬語を意識して問いかける。
「ええ、貴方の子猫「ずずずずずずずずずずずずっ」・・・・こほん、貴方の子猫を「ゲエェェェップ!」・・・・」
ただ態度まで改めるつもりは無く、目の前に置かれているジョッキに顔を押し付け、無理やり酒を啜った。
失礼にならないようにとはいったいのは何だったのかと思うが、敬語を意識しているだけマシだろう。
「おいバーテン! このブレンド炭酸酒うめぇな! ヤベェくらいの辛口の酒が炭酸と共に弾けて喉が焼き切れそうだぜ!」
「・・・・・・・・・」
「なに黙ってんだよ。態度わりぃな。まっいいぜ。それよか同じモンくれ! それとジョッキじゃ飲みずれぇから深皿に注いでくれよ!」
「・・・・・・・・・少々お待ちを」
そして、己が問いかけたと言うのに、修二は令嬢そっちのけでバーテンダーに話しかけ、話しかけられたバーテンダーはチラリとご令嬢に視線を向けた後、店の奥へと引っ込んだ。
別に修二の酒を用意しに向かったわけではなく、ただ巻き込まれないように逃げただけだ。
流石に貴族の不快を得てまで商売を続けようとは思っていなかった。
「っち、何がお待ちをだ。丁寧なのは言葉だけじゃねぇかよ」
そして、バーテンの考えが嫌でもわかってしまう修二は悪態をつきながら、不機嫌そうにしている令嬢に視線を向けた。
「どうしたんすか? 目が据わってますぜぃ?」
「・・いいえ、なんでもありませんわ。それより貴方の猫が欲しいので、賭け勝負を致しましょう。貴方が賭けるのは子猫、ワタクシが賭けるのは貴方が望む願いを一つ叶えてさし上げること。勿論叶える願いは常識の範囲内です」
また変な邪魔をされてはたまらないと思ったご令嬢は不満を飲み込み、早口に用件を伝える。
こちらの有無を確認せず、勝負をすることは決定し、尚且つ賭ける物も指定してきた。
しかも、常識の範囲内で叶えられる願いを対価にしているようだが、それが貴族としての常識なのか、平民としての常識なのか示していないので、下手すると勝負に勝っても何も貰えない可能性が高いだろう。
貴族の常識だと、貴族に声を掛けられたのだからそれが報酬だとでも言いそうだからな。
「はぁ~、それはとても太っ腹っすねぇ~。だけど賭け勝負すか~。痛いのはイヤなんすよねぇ~」
「それはワタクシも同意しますわ。血を流されても面白くないですもの。ですので怪我をするような勝負は致しませんわ」
そして、勝負はこれだと言わんばかりに付き人に持って来させたトランプをこれ見よがしに見せつけてきた。
ババ抜きで勝負などと、バカなことを言う訳じゃないよな。
「勝負はババ抜きですわ!」
「・・・・マジ?」
予想外の幼稚な勝負方法で挑まれた修二は素で問いかけてしまう。
普通こういう時はバカラやポーカーなどで勝負するもんじゃねぇの?
いや、二人で勝負するならジンラミーかセブンブリッジとかの方か?
「マジですわ。それと普通のババ抜きではございませんことよ。貴族式ババ抜きですから少々特殊なルールですの。それとも貴族式ババ抜きが不満でしたら、貴族式真剣衰弱でも宜しくてよ」
「・・・・・・・」
真剣衰弱ではなく神経衰弱だと突っ込むべきか、それともお前の勝負方法があまりにも幼稚すぎて気分的にガキのお守りをさせられている様だと文句を言うべきか判断に困る。
アレだな・・・・・・スゲェ帰りたい。
「さあ! 何で勝負しますの! 今なら貴族式七並べで勝負してもいいですわよ!」
「・・・・ババ抜きでいいっす」
まあ、勝負を受けなければ帰れないので致し方なく一番時間の掛からないババ抜きで勝負することにした。
そして
「取り終わりましたわね! さっそくこれとこれとこれも揃っておりますわ! 凄いですわいっぱい揃っていていますわ! 幸先いいです「あがりだ」・・・ふえ?」
一枚もカードを交換することなく終了することとなった。




