平和な空
「みゃぐみゃぐ、うみぃぃぃ!!」
「お前はいい加減食うのをやめたらどうだ。マジでデブ猫になるぞ」
「みみゃ?」
一日中ハンモッガの上で食っちゃ寝生活を送っていた修二達だが、流石に部屋に引きこもっているのも飽きてしまい、今は魔導船に完備されているバーに訪れていた。
そこでは相変わらず子猫がその身に入り切らない飯を平らげている。
ホントコイツの胃袋は未知だな。
まあ、修二もどこに入っているのかと思うほどの酒を飲んでいるので未知な胃袋を持っているのは同じだと思うが。
「おいそこのボーイ。お代わりだお代わり。魔導船の名物酒。空酒のお代わりだ」
「お客様、少々ペースが早くはありませんか? 空の旅は始まったばかりですので、あまり飲み過ぎますと、後々大変な目にあいますよ?」
これから魔導船はノンストップで六日は飛び続ける。
客が船酔いを起こそうとも気にせず飛び続けるのだ。
そんな船の上で二日酔いなどになれば地獄を見ることになるため、警告しているのだが
「心配ねぇっての! いいから酒だ! 酒くれ!!」
修二が聞くはずもなかった。
「しっかし、ここは空酒以外全部ありきたりな酒ばっかで面白くねぇな。船内に金掛けるなら酒にも金掛けろってんだ」
魔導船は元々貨物船として作られた大型空挺。
それを貴族が、たかが商人や平民に使わせるのは勿体ないと騒いだせいで、急遽
内装を作り替えられた。
それもセンスの欠片もない貴族が選んだ芸術家を呼び寄せ作られたらしい。
そのため変な成金趣味のラウンジや廊下ができあがっている。
唯一の救いが部屋だけはまともな芸術家が手掛けたらしく、そこまで酷くはならなかった。
まあ、修二が過ごしている部屋は平民が過ごすために作られた安っぽい部屋なので関係ない話ではあるが。
「無駄に高い金払ってるってのに、品ぞろえ悪すぎだな。こんなことならテメェで用意してくればよかったぜ」
そう愚痴りながら、ボーイが持ってきた空酒を飲む。
魔導船名物と言ってはいるが、空酒の味はどこにでもある安っぽい酒と変わり映えしない味だった。
度数は割と高い方なので、好みの部類に入るが。
「はぁ、ホントつまらねぇな」
「それでしたらカジノに行ってみてはいかがですか?」
修二のぼやきにボーイは答える。
一応暇つぶしの為に小さなカジノが用意されていることは知っていた。
このカジノも貴族連中の為に作られた様なモノで、普通は庶民が行くべき場所では無い。
そして、普通はそんな所を進めるべきではない。
「そんなとこ行ってどうすんだっての。アホ貴族のご機嫌取りのために金巻き上げられろってか?」
「ウチの船ではそう言ったサービスは行われていませんので、安心して遊べますよ?」
「お前達がどうこうじゃねぇっての。貴族共が集まるカジノじゃ、どうやっても俺みたいな冒険者はカモられるだけだ」
賭け事は嫌いじゃない。と言うか時々小金を稼がせてもらうための手段として利用させてもらっている。
俺の場合能力を使えば負けはまずないからな。
ただ、勝てるとしても大勝ちすることは絶対しない。
大勝ちすれば変な奴等に目がつけられるのは勿論、無駄な妬みを抱かせる。
そして、身分違い同士で賭け事なんてやっても碌な目に合わない。
下手な貴族共から少額でも巻き上げても、逆恨みで仕掛けてくる奴等ばかりだからな。
アイツ等金を巻き上げられるよりも勝負ごとに負ける方が我慢ならないみたいだからな。
モーセとかクソヤベェ実力者が傍にいれば、虎の威を借りて土地も利権も全部巻き上げられるのになぁ。
「ん?・・・おいおい、マジかよ。こっち来るなよなぁ」
不意に修二が不満を漏らす。
貴族が同じ船に乗っているのだ。
そいつらに絡まれないように、随時能力を発動し貴族の位置を表示していた。
「飯はしまいだ。部屋に戻るぞ」
「みぃ? みゅみゃみやぁ?」
「クソうざってぇ貴族共のガキ共が来やがる。貴族のガキは親以上にプライドが高く我儘な奴等ばかりだからな。ああいうのには視界でさえ入らないようにした方がお互いの為だ」
「・・・みぃ?・・・みっ!」
子猫はよくわかっていないが、修二が戻ると言うのであればそれに異を唱えることは無く、一気に料理を頬張り、最後に頬をパンパンに膨らませながら修二の肩に飛び乗った。
その行動に意地汚い奴だと思いつつも、なんだかんだと修二も飲みかけの酒とツマミを一気に口に放り込み部屋へと戻っていった。




