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ロストしたら俺のモノ-酒飲み自由人のダメ男生活-  作者: タヌキ汁
第一章 日常生活と非日常編
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パシリ依頼


 子猫と喧嘩しながら宿へと帰ると、騒がしくしていたせいでオヤジ達を起こしてしまった。

 ただでさえティティティがいなくなり、皆疲れていたというのに、人の迷惑も考えず騒ぐ修二に流石のオヤジもブチ切れ、オヤジのドデカイ拳骨でもって気絶させられることとなった。

 そして気絶させられた修二は部屋に運ばれることは無く、そのまま廊下に放置された。

 放置したのは愛娘であるティティティを危険な夜の街に遊びに連れ出した罰であったのだろう。

 そのことに関して修二は何も悪くないのだが、ティティティがオヤジにそう伝えているので今のところそれが事実となっている。


「ぐぶふっ!?」

「廊下に泥ふきマットなんて需要があるのかしら?」


 そのまま朝になると廊下で転がる修二を躊躇なく踏みつけるエルフィナが現れるのももはやお約束ともいえる。

 人が通る場所で寝転がっている修二が悪いと言えば悪いのだが、流石に今回ばかりは同情を禁じ得ない。

 しかも人の頭を遠慮なく踏みつけるのはどうかと思う。

 まあ、前回塩対応されたので、エルフィナの気持ちもわからなくはないが・・。


「ち、チビなのにデブい・・」

「あ゛?」


 そして、そんなエルフィナの心情など知りえない修二が、いつも様に挑発を口にするのも必然でり、いつもの様にボロ雑巾になるのは言うまでもないだろう。





「あててててっ。なんでこうもお前は暴力的なんだ。少しは話し合いで解決しようとは思わねぇのかよ」

「アンタが喧嘩吹っかけてくるのが悪いんじゃない」

「今回はお前が先に吹っかけてきたんだろうが。もうぼけたのかよ」

「おいおい、珍しく二人仲良く昼食取ってんだから喧嘩は止めろよ」

「仲良くないわよ!」

「そうか? 昨日は一日中不機嫌だったのに今日は何か機嫌良さそうだから修二に構ってもらえて嬉しいのかと思ったぞ」

「っ!?・・オヤジさん。言っていい事と悪いことがあると思うんだけど?」

「おいおい、ちょっとした冗談だろ? そんなに怒るなって」

「オヤジがたじろぐ姿初めて見たな」


 ただの雑談に何を怒ってるんだかと呆れながら、修二はジョッキのエールを一気に煽る。


「プッハーーーッ!! やっぱ安くともオヤジがいれるエールはうめぇな。おうオヤジ! 酒が無くなりそうだ! 樽でお代わりくれ! それと倉庫に眠ってる上等なツマミも追加で頼むぜ!」


 修二の注文にオヤジはこれ幸いと言うようにその場を離れた。


「なによ。それでオヤジさんを逃がしたつもり?」

「まるで仕留めるような物言いだな。これだから日常的に血肉を貪ってる奴はこえぇ」

「誰も血肉なんて食べてないわよ!・・・たく・・・・それで用って何よ。私も暇じゃないんだからさっさとすませなさい」

「今日は珍しく休みじゃなかったのか?」


 珍しく依頼を受けずに昼まで宿屋にいるんだ。

 ヘタな詮索などしなくとも休みなのは確実だろう。


「休みだからって暇なわけないでしょバカね。こっちはアンタみたいに四六時中酒飲んでグータラしている訳なんかないのよ」

「そりゃあお可哀想に、ならさっさとすませるか。ほれ」

「なによこの安っぽそうな水晶」


 アイテム袋から犯罪者ギルドで得た水晶を取り出し、エルフィナに渡す。

 一応魔道具なのだが、エルフィナの目にはただの安っぽい水晶に見えるらしい。

 見る目ねぇんだな。などと小馬鹿にしていると、鋭い視線がエルフィナから送られてきた。

 本当に勘のいい女ですこと。


「そいつを副ギルド長に渡してくれや。俺だと面会するのも手間だからな。Bランクのそれも期待の新人であるお前ならすぐに面会可能だろ?」


 修二はエルフィナの視線から逃れるように、さっさと話を進める。


「何よ。この私をパシリに使うつもり? いいご身分じゃない」

「パシリが嫌なら報酬をくれてやるよ。ここの飯代でどうだ?」

「宿代に入ってるわよ。バカにしてるのかしら?」

「クカカッ、バレちまったか。なら仕方ねぇな。なら現ナマで払ってやるよ。いくら欲しい?」


 そういうと、修二は財布を取り出す。


「どうせ、中身は空っぽなんでしょ。バカにするのもいい加減に・・・・・」

「正真正銘今手持ちの全財産だ。ちょっとしたお使いで稼ぐには申しぶんねぇだろ?」


 文句を言い終える前に、財布を渡す。

 財布の中身は銅貨や銀貨などの小銭がぎっしりと詰まっていた。


「これはちょっと貰い過ぎね・・・面倒事じゃないでしょうね」

「禿との面談やら対応やらが面倒事と言えば面倒事だな。アイツの頭見てっと笑えてくるし」


 そいうと、思い出し笑いをしたかのかクツクツと笑い出した。


「ならこの報酬の多さは何なのよ。普通はこの半分くらいじゃないの?」

「報酬が多いのは細かい金は他国じゃ使えねぇし、両替するのもレートが悪い。ついでに言うとがさばって邪魔だ。だったら、使い走りとはいえBランクのお前に報酬上乗せした方が手間なく消費できるだろ? それにそれなりの金を払わねぇと周りに示しもつかねぇ」

「・・・本当にそれだけかしら?」

「マジだマジ。依頼で嘘はつかねぇよ」


 嘘はついていないが、必要なことも言っていない。

 ちゃんと確認して来ない方が悪いと思っているので、本人は悪びれることもなく、残った酒を煽りながらツマミを食べる。


「・・・・・・・・いいわ。受けて上げる」


 修二の変わらぬ姿に嘘はないと考えたわけではないが、それでもエルフィナは了承した。

 嘘をつかれて面倒ごとに巻き込まれてもそれを覆すだけの力があると考えており、何より嘘が発覚したら修二を叩き潰せばいいと思っているからだ。

 最近修二を殴ることが楽しみになりつつあるエルフィナであり、そんな不穏な空気を感じ取った修二は僅かに身体を震わせた。


「馬鹿の癖に風邪でもひいたの?」

「そうかも知れねぇな。つか、誰がバカだ」

「アンタ以外に誰がいるってのよ」

「俺以外にも俺の目の前に栄養が足りて無さそうな残念エルフがいるだろう? 」

「あ゛?」


 思わずと言った感じでエルフィナは修二の胸倉を掴もうと手を伸ばしたが、その動きを読んでいた修二はその手を軽く掴み、流れるようにテーブルに抑えつけた。

 違和感なく己の動きを御されたことに驚きつつも、その驚きを隠すようにギロリと修二を睨みつけた。


「最近のお前は沸点低すぎるっての。少しは我慢を覚えたらどうだ?」

「それよりも、お前達がいつの間にそんなに仲良くなったのか俺は知りてぇな」


 いつの間にか戻ってきたオヤジが酒とツマミを並べそんな事を問いかけてきた。


「おいおい、オヤジ。仲良くもなにもいつものやり取りだろうが。頭大丈夫か?」

「そうよオヤジさん。こんな奴と仲良くなったなんて変な勘違いしないでくれる。反吐がでるわ」

「いや、そうは言うが、流石にそんなの見せられちゃあ勘違いするなってのも無理な話だろ」

「「??」」


 そんなのと言われ、オヤジが指さすモノに二人共視線を落とすと、テーブルの上で手を繋いでいるのが目に入った。

 恋人握りなどと言った甘酸っぱい繋ぎ方ではなく、修二が一方的にエルフィナの手を握って抑え込んでいるだけだ。

 それでもオヤジの目には修二に手を被せられながら、嫌がる素振を見せずなすがままにされ、受け入れているエルフィナの構図に見えていた。


「長命と短命がくっつくと悲劇的な恋愛になるなんて聞くが、俺は応援するぞ」

「ば、ばばば、バカ言わないでよ! 何で私かこんな甲斐性なしと!」

「誰が甲斐性なしだ。テメェよりは稼いでるっての」

「うっさい! それよりアンタはいつまで握っているのよ! いい加減放しなさいよ! こんなのオヤジさん以外に見られたら変な噂がたつじゃない!」


 ブンブンと掴まれている手を振り回すが、修二の手が放れることは無い。


「面白そうだから広めてやるよ。どうせ俺は明日にはこの街とはおさらばするしな」


 最後の置き土産というか、嫌がらせを行う修二は、ふと視界に入ったティティティを見て笑みを深める。


「おうティティティ! これ見ろこれ! 俺等めちゃ仲良しー!!」

「うぁ?・・・・・うらぁ~~~~!?」

「ちょっ!? アンタマジで止めなさいよ!」


 行き成り立ち上がったかと思えば、ティティティにつないだ手を見せつけた。

 しかも一瞬の隙をついて恋人つなぎをしている。


「え、えるふぃなが! シュウジと結婚しているのらぁぁぁぁ!?」

「へっ? ちょっとティティティ! 何言ってるのよっ!」

「ままーー! 大事件なのらぁーー!! えるふぃなの趣味が悪いのらぁよーー!!」

「ちょっと待ちなさい!・・・って! アンタもいい加減放せこの!!」

「えぇ~、ここからが面白くなるってのに何で邪魔する・・・わかった。わかった。ほら、放した。放したから武器をしまってさっさと追いかけろって」


 顔を真っ赤にさせながら武器を向けてくるエルフィナ。

 本当に沸点が低いな。


「もしも、変な噂が立ったらぶち殺してやるから覚悟しなさい」


 そう言葉を残すとエルフィナはティティティを追いかけていった。


「さてと・・・・オヤジ世話になったな。気が向いたらまた来るぜ」

「出発は明日じゃなかったか?」

「確かにそうだが、ここにいると明日の朝日を拝む前に天に召されそうなんでな」


 カルラに話しが伝わったら、井戸端会議で嫌でも話が広がる。

 それがただのおふざけであっても、可笑しな憶測が飛び交い変な噂が広がることだろう。

 なので、さっさと退散するに越したことは無い。

 そう思い、修二は注文した酒とツマミを持ち食堂から逃げ出した。


「逃げ出すくらいなら初めからやらなければいいだろ・・・まぁ、アイツらしいと言えばアイツらしいか」


 最後までふざけた性格だったなと思いつつ、オヤジもエルフィナが戻ってきた時の為に、いい訳を考えるのだった。

 一応きっかけと言うか、初めにからかったのはオヤジなのだから。




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