おもちゃとお菓子
バキン!
張り付けにされた男の心臓にナイフを突き立てたが、そのナイフが心臓を突き刺すことはなかった。
「痛めつけられてもまだ能力は使えるか。しぶてぇなぁ~」
刃先が欠けてしまったナイフで手遊びしながら、今度は修二を睨みつける眼球へとナイフを突き刺した。
「肌を硬質化するだけだったのが、先の戦闘で眼球まで硬質化できるようになったようだな。怖い怖い。才能ある若者ってのは怖いねぇ」
この男の能力は硬化。
己自身は勿論のこと、触れた物質でさえ固く頑丈にする能力
まあ本人は能力を扱いきれておらず、己の皮膚のみを硬化することしかできていないので、さほど危険ではなかった。
もしもちゃんとした師に出会い、能力を使いこなすことが出来れば、それなりの使い手として名をあげていたかもしれないな。
「つう訳だから、能力が開花してねぇお前じゃ逆立ちしたってコイツを仕留められねぇわけだ。だから諦めるこったな」
「み・・・みゃいみゃい!」
刃物が突き刺さらないのを見せられた子猫は戸惑いながらも、やはり決着は己でつけたいのか、嫌だと駄々をこねる。
「コイツは能力のせいで物理耐性が無駄に高いんだよ。内側から破壊する技なり、道具を使わねぇと簡単に殺せねぇの。物を使えねぇお前じゃどうやったっても敵わない相手だろうが」
目玉などの急所が柔らかければ子猫にも憂さを晴らせるチャンスはあったかもしれないが、流石に子猫が望むような敵討ちはできないだろう。
「まっ、納得できなくても諦めることだな。ただ、かわりに少しは憂さが晴れる方法で処理してやるよ」
そういうと修二は男の顔面を抑えながら、猿轡をいじくり出した。
この男を捕まえ、張り付けにしたのは付き合いの長いモーセだ。
そのモーセが俺のやりたいことを予想できない訳もない。
そう思って猿轡をいじくっていると、猿轡の真ん中部分をスライドさせて空気穴を作る仕組みを見つける。
「マジでモーセに頼んで正解だったな。手間が省けて助かる」
この場にはいない友に感謝しつつ、修二はその空気穴の中にさらさらと粉薬を注ぎ込んんだ。
大量の粉薬に男はむせ返るも、修二は気にせずめいっぱい男の口の中に注ぎ込んでいき、最後は空気穴を閉じる。
「さてさて、お次はこれだな」
間髪入れずハンマーを取り出すと今度は男の膝を殴りだした。
殴りつけられた男はくぐもった声を上げるも、その声は痛みで苦しむ声ではなく、何しやがると言った強気の声であった。
その唸り声を聞きながらも、修二は何度も何度も膝を殴り続ける。
そして、丁度15発目に男の声は強気の声から一転して苦痛をあげる声と変わった。
「硬化能力で物理耐性は得られるが、所詮は耐性だからな。俺の力でも何度も同じ箇所を集中的にぶっ叩いてりゃ嫌でも痛みは覚えるよなぁ」
そう言いながら今度は先の尖った杭を取り出し硬化が弱った膝に打ち付けだす。
「ウ゛ゥゥゥゥゥッ!?」
「ほらほら、頑張って能力使え~。じゃねぇとデカイピアス穴ができるぞ~。まあ、それはそれでカッケェかも知れねぇけど」
身体中に穴をあける民族がいるからな。
あの人達と比べれば穴を一つあけるくらいどうってことないだろう。
開ける箇所が骨を貫通するヤバイ場所だが、そこは気にしてはいけない。
「よっと。う~わ、きったねぇ~。ションベン漏らしやがった」
膝を貫通させると、男の股から尿が漏れ出した。
幸いズボンに浸透してくる前に膝を貫通させることが出来たが、もう少し遅ければ男の尿に触れていたかもしれない。
「あぶねぇ、あぶねぇ。まさかこんな反撃をくらうとは思わなかったぜ。まっ、おかげでもう片方の膝に穴開け無くて済んだから儲けものだがな・・・・って、気絶してやがるし」
唸り声一つ上げないことに修二は面白みを感じなかったのか、水をぶっかけて無理やり起こす。
そして、あるモノを取り出すと痛みで唸る男に見せつけた。
「ッ!? ッッッッ!?!?」
それは二匹の虫がミイラ化した死骸。
ただそれだけを目にした瞬間、今から何をされるのか理解し男は顔を青ざめ暴れ出した。
「コイツ等の飼い主なんだからちゃんと食わせてやれよ」
そういうと、穴の開いた膝に一匹の虫の死骸を置き、もう一匹は男のズボンを引っ張り、股間の中に放り込んでやった。
すると、ミイラ達は男の血や尿を吸収しだした。
「ゆっくり食べるといい。お前達の主だからな。さぞや甘いお菓子だろうさ。慌てずゆっくりしていけよ~」
また明日~、といった軽い感じで男に別れの挨拶をすませると、修二は子猫の所へ戻り、子猫の鎖を解き始めた。
「グググググッ!! ウウウウウゥゥゥゥッッッ!!」
鎖を解く理由はわからないが、解けた瞬間男に襲い掛かろうと思っていた子猫であった。
だが、男が悶え苦しみだしたことで襲い掛かると言った意思が奪われる。
修二が置いた干からびた虫達は、血や尿を吸ったことで息を吹き返したのか、そのまま男の体内に入り込み暴れだした。
「夜中だってのに騒がしいなぁ~」
「・・・・うなぁ~?」
暴れ回る虫達に子猫は修二に疑問をぶつける。
「あれはアイツ等が好んで使っている拷問魔道具だ。対象者の体液を与えることで、その対象者の体内を食い破っていく嫌な道具さ。しかも心臓とか脳みそとかギリギリ破壊せず、できるだけ生き地獄を味合わせる代物だ」
昔なにかの映画で見たな。小さな虫が身体の中に入って食い破ってくやつ。
あれは数百匹に集られて死んでいったから、今回のように二匹だけで時間をかけて食われていくとはマジで地獄だろう。
「ついでに言うとあの拷問魔道具には、意識を失うと軽めの電気ショックを流して無理やり起こすクソ仕様だ。意識失っている間に殺してくれるなんて優しい仕様じゃねぇ」
あの拷問用の魔道具は対象が死ぬまで離れず、解除するには破壊するか、対象が死ぬかのどちらかしか手はない。
それでも行き成り魔道具が壊れるなんてこともあるため、生き残る可能性も僅かに残っている。
その為の保険として男の口に無理やり粉薬を入れてやったんだ。
二時間後には下痢や嘔吐、めまいなどでまともに動けずに脱水症状となり死ぬだろう。
僅かな希望もあの薬のおかげで確実に消せる。
まあ、それでも生き残ったならば、それはそれでコイツの運がよかったと思っておこう。
俺が想定した生命力よりも高かっただけの事なのだから。
「後は放っておいても勝手にくたばるから俺は出てくぞ。お前はどうする?」
「・・・・・・・」
子猫の鎖を解き鎖を回収しながら声を掛けるのだが、子猫は何も発さずただ苦しみ悶える男を見ていた。
その目にはまだ憎悪が浮かんでおり、未だに己の手で息の根を止めることを諦めていないようだ。
「・・・今あの魔道具に触れるとテメェも食われる対象にあるからな。それでもいいなら止めはしねぇよ。地獄を味わってまで果たしたい仇討ならそれも良し」
「・・・・・・」
聞いているのか聞いていないのかわからないが、一応忠告した修二はそのまま子猫を置いて部屋を出て行った。




