住み家
商業地区の裏街道
空の箱が重なり、まばらに人が行き交う場所。
下働きの年若い商人見習いくらいしか使うことのない裏街道に修二は訪れた。
そして、ゴミが転がっていて埃っぽく薄汚い場所に訪れるとその場に座り、酒とツマミを食べ始めた。
「みぃーみぃー!!」
ここに捨てられると思ったのか、子猫は修二の服に爪を立て抵抗していたのだが、
「場合によっちゃあ最後になるぞ」
そう言いながらある場所に子猫は押し込まれた。
無理やり押し込まれた場所でしばらく抵抗していたが、不意に子猫は抵抗することを止める。
汚い。
ゴミやホコリしかないそんな場所。
気を付けて歩かなければ尖った何かを踏んで怪我してしまう危険な場所。
いい所なんてご飯になる鼠が多いだけ、そうここは
「・・・み」
子猫が生まれ育った場所だった。
家族と共に生きた住み家。
弟妹達と遊び、小さな鼠を追い掛け回し、疲れたら弟妹達と重なり合って、母猫に優しく舐められながら眠った住み家。
そしてここは子猫以外の家族が殺された嫌いな場所でもあった。
突然住み家に見知らぬ人間が現れ、自分達に襲い掛かってきた。
母猫が撃退しようとしたが、一瞬で殺されてしまった。
流れる血に、物言わぬ母猫の姿に怒りよりも怯えが優り、皆必死に逃げ出した。
後ろの方から弟妹達の悲鳴と血の匂いが濃くなるのを知りながも恐怖に勝てずただ逃げて、逃げて・・・そしていつの間にか一人ぼっちになった始まりの場所。
子猫は小さな鳴き声を何度も上げ、臭いを何度も嗅ぎながら、住み家だった場所をグルグルと回る。
そして、皆が死んでいなくなるまで愛用していたボロボロの布を見つけると、その布に鼻を擦り付け、ゆっくりとそのボロ布の上で丸くなった。
ボロ布に包まれ眠ってしまった子猫。
日が傾いても起きることはなく、起きだしてきたのは、すっかり日が沈んだ時間になってからだった。
子猫は不安そうに辺りを探りながら、ゆっくりと住み家から顔を出す。
「・・・・・・・・」
顔を出してすぐに修二の姿を見つけ、修二と視線が合うとビシリと固まった後、へにゃりと耳と尾を垂らす。
そんな子猫の姿を見ても、修二は慰めるようなことはせず、ただ
「・・帰るぞ」
短い一言を発し立ち上がるだけであった。
「?・・・みぃっ!」
ただそれでも子猫にとってはとても嬉しかったようだ。
「帰るぞ」という短くも共にいることを了承した修二の声に子猫は一瞬戸惑ったが、すぐに嬉しそうに声を上げ修二の服にしがみ付くと、そのまま肩まで登っていった。
そんな子猫の行動を修二は咎めることはなく、ただ子猫が己の肩に登りきるまで歩き出すことはなかった。




